たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

映画『それから』

2023年09月09日 16時58分08秒 | ミュージカル・舞台・映画

漱石先生、すてきな原作をありがとう。

=あの青春が違った終り方をしていたら・・・。

 高等遊民を自認する長井代助は、若き年、密かに恋していた三千代を青年期特有の義侠心から親友、平岡に嫁がせてしまう。しかし、めぐる歳月は、秘めてきた愛の真実を残酷にも暴くことになる。あの青春の決着はまだついていなかったのだ。三千代への告白は、友情、そして、彼をとりまく家族や社会との断絶をもたらし、あらゆる意味での破局を予感させた。それでもなお、社会にそむく愛に向って、代助も三千代も走り出していたー「それから」は、日本の近代文学を代表する文豪・夏目漱石の恋愛三部作「三四郎」「それから」「門」の一つ、最高傑作と評される同名小説の初の映画化である。

 自然の風物が人々とともに匂いたつように生きていた明治後期の東京を舞台に、劇的な三角関係を軸に恋愛の神秘を探り、一方で人間のエゴイズムに鋭く迫る-漱石の文学世界が最も色濃く出ている作品である。

 

=若きグランプリ・コンビ 監督森田芳光&主演松田優作。

 この永遠の国民文学に挑んだのが、「家族ゲーム」で昭和58年度のあらゆる映画賞を席捲し、世界の映画界からも注目された若いグランプリ・コンビ、監督森田芳光と主演松田優作である。

 「家族ゲーム」以後、59年「ときめきに死す」「メイン・テーマ」と一作ごとに先鋭な感性に磨きをかけてきた森田監督が、一転して日本のクラシック世界にチャレンジした。そして「家族ゲーム」に次いですぐ、「探偵物語」でも大ヒットを飛ばしながらも、以後じっくりと好企にめぐり逢うまで待ち続けたというスーパースター・松田優作が貯めこんだエネルギーをこの一作に噴出させている。なんとなく物騒な予感をはらむ、映画ファン必見の力作が仕上った。

 

=現代の感性を集約 匂いたつ、明治のロマン。

 共演は、三千代役にNHKの朝の連続ドラマ「心はいつもラムネ色」で広範な人気を集めた藤谷美和子。平岡常次郎には映画「嵐の歌を聴け」「湾岸道路こせい」、TV「ふぞろいの林檎たち」で人気の小林薫が扮し、新境地を拓いている。

 さらに、笠智衆、中村嘉葎雄、草笛光子のベテラン陣に、風間杜夫、羽賀健二、美保純、森尾由美、イッセー尾形らの若い感性が加わり、豪華な中にも個性豊かな顔ぶれとなっている。

 脚本は新進気鋭の女性ライダー・筒井ともみ、撮影・前田米造、美術・今村力、音楽・梅林茂、さらにCF界で大活躍のスタイリスト・北村道子も加わり、新鮮で、ユニークで、ファッショナブルな明治が映像化されている。「それから」ー日本映画の新しい流れをつくる、話題の文芸大作である。

 

 

 

 

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