たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

赤毛のアンを原書で読むセミナー(第37章死という命の刈りとり)

2015年03月08日 22時21分51秒 | 『赤毛のアン』
去年の12月20日に第37章「死という命の刈りとり」を読みました。
マシューとの突然の別れが訪れる場面で、父親とのお別れの時を思い出してしまいました。

さらなる緊張を強いられる場面にいかなればならないのか、その前に苦渋の選択を強いられて終わることができるのかのどちらか、緊張の日々が続いています。
思わず肩に力が入ってしまいますが、昨日体にアプローチして心の緊張をといていく方法を
教えてもらえる機会があったので、呼吸を整えながらようやく書いてみようと思います。



The news spread quickly through Avonlea,and all day friends and neughbors

thronged Green Gables and came and went on errands of kindness for the dead

and living. For the first time shy,quiet Matthew Cuthbert was a person of

central importance;the white majesty of death had fallen on him and set him apart

as one crowned.

「訃報は、またたくまにアヴォンリーに広まり、終日、グリーン・ゲイブルズは、お悔やみに訪れた友人や近所の人々が耐えなかった。弔問客は、亡き人と残された二人のために、何くれとなく世話をやいてくれた。人見知り屋で無口だったマシューが、初めて、人々の関心をひき、その的となった。死という青ざめた王者の威厳がマシューにそなわり、彼に王冠を載せ、生ける人々と引き離したのだ。」

When the calm night came softly down over Green Gables the old house was

hushed and tranquil.In theparlor lay Matthew Cuthbert in his coffin,

his long gray hair framing his placid face on which there was a little kindly smile

as if he but slept;dreaming pleasant dreams.

「やがて夜の静寂が、グリーン・ゲイブルズにそっと訪れた。古い家に人声はとだえ、ひっそりと静まりかえった。マシューの棺は、客間に安置された。安らかな顔は長い白髪にふちどられていた。まるで楽しい夢を見て眠っているように、微かに優しく微笑んでいた。」

In the night she awakened,with the stillness and the darkness about her,

and the recollection of the day came over her like a wave of sorrow.

She could see Matthew,s face smiling her as he had smiled when they parted

at the gate that last evening--she could hear his voice saying,

"My girl--my girl that I,m proud of."

Then the tears came and Anne wept her heart out.

Marilla heard her and crept in to comfort her.

「夜ふけ、アンはふと、目が覚めた。あたりは静まりかえり、真っ暗だった。すると、今日一日の出来事が、悲しみの波となって一挙に押しよせてきた。昨晩、木戸のところで別れぎわに、アンに微笑んでくれたマシューの笑顔が、目にありありと浮かんできた。「わしの娘だ、わしの自慢の娘だよ」と言ってくれた声も、耳によみがえってきた。そのとたんに、涙があふれ、アンは胸が張り裂けんばかりに泣いた。マリラはその泣き声を聞きつけると、アンを慰めようと、そっと部屋に入ってきた。」

”There--there--don,t cry so dearie.

It can,t bring him back.

It--it--isn,t right to cry so.

I knew that today,but I couldn,t help it then.He,d always been such a good,kind

brother to me--but God knows best."

「「さあ、さあ、そんなに泣くのはおよし、いい子だから。泣いても、マシューは帰ってこないんだよ。そうだよ、そんなに泣いちゃいけないよ。それを私もわかっていたけれど、今日は堪えきれなくて泣いてしまったよ。私にとってマシューは、いつも心根の優しい、いい兄さんだった。でも、これは神様のおとりはからいだからね」」

”Oh,just let me cry,Marilla,"sobbed Anne."The tears don,t hurt me like that ache

did.Stay here for a little while with me and keep your arm round me--so.

I couldn,t have Diana stay,she,s good and kind and sweet--but it,s not her sorrow

--she,s outside of it and she couldn,t come close enough to my heartto help me.

It,s our sorrow--yours and mine.Oh,Marilla,what will do without him?"



「「ああ、マリラ、でも今は泣かせて」アンは泣きじゃくりながら言った。「涙は私を楽にしてくれるの。悲しい時のあの胸の傷みは、私を苦しめるけれど。もう少しここにいて、私を抱いていて、そう、ありがとう。ダイアナには、いてもらうわけにはいかなかったの。親切でおもいやりのある友だちだけれど、でも、これは彼女の悲しみじゃないもの。ダイアナは、悲しみの外にいるに、だから、私の心に近づいて慰めることはできないのよ。これは私たちの悲しみよ、マリラと私の悲しみよ。ああ、マシューがいなくなって、これから私たちどうすればいいの」」

"We,ve got each other Anne.I don,t know what I,d do if you weren,t here--

if you,d never come.Oh,Anne,I know I,ve been kind of strict and harsh

with you maybe--but you mustn,t think I didn,t love you as well as

Matthew did,for all that.I want to tell you now when I can.

It,s never been easy for me to say things out of my heart,

but at times like this it,s easier.I love you as dear as if you were my own flesh

and blood and you,ve been my joy and comfort ever since you came to Green Gables."


「「私がついているよ、それに私には、アンがいるんだね。ああ、もしあんたがいなかったら、もしもこの家に来ていなかったら、私は途方に暮れていたよ。私は頑固者で、あんたに厳しかったと我ながら思うよ。だからといって、マシューほどあんたを愛していないだなんて、想わないでおくれ。今なら言えそうだから、言うよ。自分の気持ちを口にするのはどうも苦手だけれど、こういう時なら、言えそうだからね。私はあんたのことを、血と肉を分けた実の娘のように愛しているんだよ。グリーン・ゲイブルズに来たときからずっと、あんたは私の歓びであり、心の慰めだったんだよ」」

『Anne of Green Gables』L.M.Montgomery
(松本侑子訳『赤毛のアン』2000年、集英社文庫427-430頁より)



the calm night came softly down over Green Gables-
夜が静かにおりてきてグリーン・ゲイブルズを包み込む-

原文だからこそ味わうことのできるモンゴメリさんの美しい表現。
翻訳するのはむずかしいという松本先生のお話でした。


Oh,Marilla,what will do without him?"-
私たちこれからどうすればいいの?

農場の担い手だったマシューがいなくなって私たちこれからどうやってごはんを
食べていくの?とアンはマリラにたずねている、という松本先生のお話でした。


映画『赤毛のアン』でコリン・デュハート演じる、気むずかしいけれど本当は豊かな愛情と優しさを内側に秘めている、ごつごつっとした感じのマリラがアンを抱きしめながら、初めて素直に愛情を伝える場面は印象的です。
自分の思いを言葉にして相手に伝えることがなかなかできないマリラの不器用さに
共感できるものがあります。そんなマリラが、アンとの出会いによっていつしか変わっていき、素直に気持ちを言葉で表現する姿に心が動かされます。
アンとマシュー、マリラは血のつながりがないからこそ、より深い愛情で結ばれて本当の家族になることができたのかもしれません。


「それまでのマリラはアンを大事に思っていても、素直に愛情を伝えられませんでした。しかしマシューが急逝した日、マリラは初めてI love youとアンに語ります。アンを育てることで愛情表現のできる成熟した女性へと変わったのです。
第36章では、マシューが「わしの自慢の娘だよ」とアンに語りました。第37章では、マリラも「血肉を分けた子どものように大事に思って愛している」とアンに言います。こうしてグリーン・ゲイブルズの3人は本当の親子でなくとも、情愛で結ばれた父と娘、母と娘になったことを、物語の終盤で、作者は感動的に伝えています。」

(松本侑子著『英語で楽しむ赤毛のアン』㈱ジャパン・タイムズ、2014年7月、184頁より)

写真は、グリーン・ゲイブルズの居間。
亡くなった人の髪の毛をリースに編み込む習慣があったそうです。
金髪だと違和感がないですね。

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