たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『ミス・サイゴン』_10月23日

2016年12月17日 23時41分26秒 | ミュージカル・舞台・映画
 連休一日目。ようやく2016年『ミス・サイゴン』の帝劇初日と帝劇千穐楽のカーテンコールの動画をみました。本田美奈子さんのことを思いながらみていると涙がとまらなくなりました。やっとまた観劇日記を少し、思い出すままに書いてみようと思います。

 市村正親さんのラストエンジニアをみるべく、10月23日(日)、昼の部を観劇。2016年『ミス・サイゴン』、二度目の観劇でした。土曜出勤の翌日だったのでかなりエネルギーを消耗してしまい、正直きつかったです。ずっしりとおもい作品。地を這うように生きる人々の物語。目を背けてはいけない現実がそこにはあります。帝劇で『ミス・サイゴン』を観劇するとき、劇場のどこかで美奈子さんの魂がいつも見守ってくれているような心持ちがします。

 まずはアンサンブルのみなさんのダンス・歌・芝居のクオリティの高さに感服。どの舞台を拝見してもアンサンブル、ハードだなあと思いますが、『ミス・サイゴン』はとりわけハードなんだろうなと思います。いくつもの役をそれぞれに全身全霊で体現。この作品に出演するということはものすごく高いハードルなんでしょうね。ヘリコプターやキャデラックなどの大がかりな舞台装置をとっぱらっても十分に見応えのある仕上がり。すごい作品なんだなあとあらためて思いました。昨年、『レ・ミゼラブル』を途中降板された鎌田さんの元気な姿をみることができて安心しました。地方公演も怪我なく駆け抜けられることを祈っています。

 エンジニア役の市村さん。この方が立っている舞台の上には風が吹いていると1992年の初演を拝見した時に思いました。その感覚は今も変わりません。うまく言葉で言い表せませんが、市村さんがエンジニアとして立っているだけで舞台の空気が『ミス・サイゴン』の世界観になります。「生きのびたけりゃ、おれ見習え、あたま使えよ♪」。アメリカに渡ることを夢見てしぶとくいやらしく生き延びて行くエンジニアを、いやらしくなく、どこか哀しみを背負いながら生きている憎めないキャラクターとして魅せてくれます。時には客席の笑いをとっていく間の取り方は市村さんにしかできないこと。ほんとに上手いのですが、上手いとか下手とかいった技巧を超えていますね。二幕で最初に登場されたとき、客席にむかって「お久しぶり、まだアメリカに行けてないの」。アメリカン・ドリームのダンスのステップが軽やかでお若い。つかの間のアメリカン・ドリーム。「おれのアメリカン・ドリーム」。一昨年も同じことを書いていますが、初演の時から世界情勢が変わって、この歌のもつ意味も大きく変わってきていると思います。歌詞の中にあるフランスの通貨「フラン」はユーロになったので今はありません。それでもフランと歌い続けているところにこの作品の意味があるんでしょうね。市村さん、次の目標はまた『ミス・サイゴン』を上演される時にはエンジニアして出演することだと千穐楽に話されています。まだまだいけるのではないでしょうか。観劇するわたしたちも歳をとってきたのでお互い健康で過ごし、またこの作品の舞台でお会いしたいです。

 キム役のキム・スハさん。笹本さんとも昆さんとも知念さんとも違う、まっすぐで純粋なキム。前回までキムを演じていた知念さんのエレンがやさしすぎました。バンコクのホテルでクリスのいない間に、クリスをさがして訪ねてきたキムと会ったエレンは、クリスを思い続けるまっすぐなキムの心に触れて自分は身をひくことを覚悟します。キムの心がいたいほどわかるエレン。クリスはエレンを生きていくことを選ぶの、辛い場面でした。キムはタムを守るためには自分は身を引くしかありませんでした。ジョンとクリスとエレンがタムは引き取ろうって話し合っているとき、キムが舞台袖で死を選ぶ決意を固める場面。タムに「ママは一緒にはいけない」と別れを告げる場面。涙、涙。他に道はなかったのか。正解はありませんが答えをさがしたくなります。毎回、観客に問いかけ続けている作品。大きな余韻を残す作品。

 戦争はなくなりません。今日も世界のどこかでキムとタムが生まれています。いつも犠牲になるのは一番弱い立場の人々。わたしはこの日本にいて自分のことに精一杯で何ができるわけでもありません。弱い立場の人々が大きな国の利権争いに巻き込まれていくようなことが終わってほしいと日々のニュースをみながら心から願うばかりです。

 まだまだ書き足りないですが時間切れとなってきました。









市村正親さん演じるエンジニア。
「何でも買えるぜ おお アメリカン・ドリーム。」




キム・スハさん演じるキム。
「お前のためなら 命をあげるよ」。



キム・スハさん演じるキムと上野哲也さん演じるクリスがサイゴンのクラブで出会った場面。「君はこんなところにいてはいけない。」




ジョン役パク・ソンファンさん。
「名はブイドイ。父親をあの子に与える義務がある。
 何故なら彼らはすべて我らの子。」



舞台写真は、ミス・サイゴンJAPAN、公式ツイッターより転用しています。

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