医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

野獣の美意識 8

2008年10月16日 09時53分41秒 | Weblog
 佐伯氏の作品は、早筆で、荒々しく、単純だがゴミゴミしていて、とてつもなく暗い・・・。

 血のようにくすんだ赤と、黒・・・・そして悲しい「鉄さび色」が彼の独特の色だ・・・と思う。

 けばだった心がそのまんま表されておりますが、そのトゲや毒が素敵だ。

 この際、細君の加筆疑惑などどうでもよい。

http://www.rogho.com/saeki/gagyou.html




 僕は個人的に、政治家やキャスターなど、僕たち公衆に説かねばならない立場のヒトには、品格と正義とやさしさと聡明さを強く求めます。

 しかし、こと芸術家や表現者、ミュージシャンなどには、狂人なみの有りようを求めます。

 僕たち一般人にはない、物事のとらえ方や、繊細さや病的なこだわり、あるいは暴力性やすさんださま、頽廃性に反社会性や無残な堕落性があるからこそ、お金を払ってでも見たくなるのです。

 糸一本に命をゆだねるかのごとくの、たとえ現代社会、フェイクであっても緊張感を伝えて欲しいのです。

 変人で変態で、アウトローで、破滅的で、人格破綻者でも許されるばかりか、むしろそうあって欲しい・・・芸術家にとってむしろ、「変わり者」がほめ言葉だし名誉だと思います。

 で、こちら側に残りたい凡人の僕は向こう側を安全な場所から鑑賞し、自らのまとも性というか、たとえこちら側で異形・変わり者であるにせよ、向こう側やキワよりましだ感や安心を感じたいのだろう・・・

 けれど、まぁそれは・・・人さまに当てはまることではなく、僕個人の一種の自己防衛反応なのでしょう。

 僕の代わりに十字架を背負って、贖ってくれる天才たちに称賛の拍手を送りたいのであって・・・だから日本の表現者も枠に収まる必要はぬゎいのであります。

 それが感動でありうるわしさであって・・・

 絵画は写真ではないから写実じゃなくていいし、誰かの真似や単にうまいだけならアマチュアでもたくさんいます。

 プロとして大切なのは個性や感性、革新性、とらえ方や唯一無二性だったり、あるいは断然高度すぎてとても素人では真似のできない技術(スタンリー・ジョーダンとか)だと思います。

 佐伯氏の絵には、プロとしての荒々しさや省略性があり、あらぶる心、裏腹にどうしようもないネガティブさが漂い、猥雑さといい、突き放したカッコよさといい、不良性といい僕は好みです。

http://www.nishinippon.co.jp/jigyou/98jigyou/saeki/saeki2sub.html