医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

森と野草という美材8

2007年05月21日 12時04分36秒 | Weblog
 現代日本の大部分を占める雑木林による「ニセモノの森」は、ニセモノがゆえにどうしても人の手を必要とし、20年に一回の伐採と3年に一回の下草刈りが前提となるそうです。

 またそれをやらないと維持できないのが「ニセモノの森」であり、「潜在自然植生」の「ホンモノの森」は人の手を要さず、それに加えて自然災害に強いのだ、ということでした。

 どうしても薪が必要でしたから、「ホンモノ」の伐採が進んでしまったようです。

 ところがそうして置き換わってしまった「ニセモノの森」は脆弱で、地滑りを起こしやすく、マツクイムシによる松枯れが問題化し、さらには土砂崩れ、火事や地震など災害に弱いなど、さまざまな問題を引き起こしているそうです。

 「潜在自然植生」の「ホンモノの森」がかろうじて残っている、それが『鎮守の森』だそうです。

 鎮守の森は神社の森ですから、ここは神域のため、伐採や人の手から守られたそうです。

 そうか・・・出雲大社や伊勢神宮の杜は、何か霊的な存在感を感じましたが、僕のDNAにも日本古来の森の何かが訴えかけてきたのかもしれない・・・あのどんぐりを踏みしめながら歩く鎮守の森が。

 それはそうと、杉の植林を進め、なんとか還元水に献金したり天下りの丸投げが話題の林野庁は、これらを当然自覚して、対処は進んでいるんですよね・・・?

 今、ロンドン、パリ、ニューヨーク、ワシントン、フィラデルフィア、モスクワ、ベルリンなど世界の文明の中心地は皆、冬は寒くて葉を落とすブナ、ミズナラ、カエデのような落葉広葉樹林帯です。

 中尾佐助、佐々木高明といった文化人類学者や、京都大学の上山春平(うえやましゅんぺい)氏たちは、この日本の文化だけを「照葉樹林文化」と呼びました。

 しかし現在では多方面からの検討が加えられ、照葉樹林文化が存在しないとは言わないまでも、それは日本列島に影響を及ぼした様々な文化圏のうちの一つに過ぎないという評価が定まっている、とのことです。