【社説②】:JR支援拡充 経営自立へ戦略再考を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:JR支援拡充 経営自立へ戦略再考を
経営難に陥ったJR北海道への財政支援について、国土交通省は2021年度以降も継続する意向を示した。
19、20年度で年約200億円だった支援規模は拡充する考えだ。新型コロナ禍で直面した鉄道需要激減の影響も考慮するという。
資金繰り確保にメドがたち、当面の危機は回避できたといえよう。だが、これでJRの経営問題が解決したわけではない。
収益の柱に見込んでいたインバウンド(訪日外国人客)需要や新千歳空港アクセスなどが、コロナ禍の影響をまともに受けている。新たな経営改善の柱を早急に示さねばならない。
JRが掲げた「経営自立」の目標年度まで残り10年しかない。国、道、自治体と協力し、地に足のついた戦略練り直しを求めたい。
現行支援の根拠となる関連法規定は来年3月に期限切れとなる。
このため、先週末の協議で国交省は「もう一歩進めた形で支援策の充実強化を図りたい」と表明した。来月開会予定の通常国会に改正案を提出する見通しだ。
JRは鉄道運輸収入が前期から半減し、連結営業赤字は半期分だけで過去最悪の385億円に膨らんだ。本業をカバーしてきたホテルや物販なども軒並み低調だ。
赤字を補うだけでも支援は数百億円規模の上積みを要する。インバウンド依存から道民本位へと経営の軸足も移さねばならない。
気がかりなのは、赤字が年約120億円に及び、JRが地元負担前提で存続方針を示す宗谷線名寄―稚内間など8区間の行方だ。
道と沿線自治体は利用促進費年2億円のみ支出する。鈴木直道知事は「コロナ禍で道財政も厳しく多額の支援は困難」と強調した。
このままでは、赤字額を圧縮しようと減便が進み、利用がさらに減少する負の循環に陥る。道は存続協議を前に進める責任がある。
コロナ禍で経営が苦しいのは鉄道各社や航空業界も同じだ。JR北海道への国の支援が突出すれば全国的な批判を招きかねない。
とはいえJRの苦境は一過性ではなく、国鉄分割民営化に伴う構造的な問題であるのは明らかだ。
経営安定基金は、運用益収入が長引く金利低迷で落ち込み、取り崩しも法律上制限されている。国は民営化の失敗を認め、あらゆる財源確保策を検討すべきだろう。
そのうえで、鉄道の将来像を地域全体でどう描き、どう支えるのか。個別の経営問題のみにとらわれぬ戦略を立てる必要がある。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2020年12月15日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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