《社説②》:アフガンの女子教育 タリバン軟化見極めたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:アフガンの女子教育 タリバン軟化見極めたい
戦火が続くアフガニスタンで、旧支配勢力のタリバンと国連児童基金(ユニセフ)が、国内各地に最大4000カ所の学校を設立することで合意した。
対象となる子どもたちは最大14万人という。注目されるのは、女子も含まれる点だ。
タリバンは、イスラム原理主義の厳しい規律を住民に押しつけ、その一環で女子教育も禁じてきた。しかし、ここにきて、女子教育を認めるという。
タリバンが従来の方針を転換した可能性があり、ユニセフは「画期的だ」と評価した。
戦争状態が40年以上続き、女性や子どもたちが一番の犠牲になってきた国だ。ユニセフによると、アフガンで教育を受けていない子どもたちは推定370万人に上り、うち6割は女子だという。
首都カブールでは、日本から届けられたランドセルを背負って通学する女子児童も目につく。だが、8割の女子が学校に通えていない地方もあるという。
新たな教育事業は、新学期に合わせて3月から始まる。民家などを利用し、1カ所当たり最大35人の生徒を通わせる計画だ。
政府は直接関与しておらず、非公式の学校となる。それでも、教育と無縁だった子どもたちを支援する大きな一歩となりそうだ。
今後の課題は、教育課程の充実と教員の確保だ。
新たな教員は、アフガン政府の採用基準を適用してユニセフが採用するという。教育内容もしっかりとしたものにする必要がある。原理主義者が、偏狭な宗教教育をするようでは意味がない。
今回の合意に至る交渉のきっかけは、タリバン側からの働きかけだったという。背景には、昨秋始まったアフガン政府とタリバンとの和平協議がありそうだ。
1990年代に台頭し、一時はほぼ全土を支配したタリバンだが、米国主導のアフガン戦争で敗退した。その後、勢力を盛り返し、将来の政権復帰を狙っている。
タリバンが態度を軟化させているのは、国際社会の支持を得る思惑からの可能性があり、真意を見極める必要がある。
各国はアフガニスタンの将来のため、子どもたちの学びを支援すべきだ。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2021年01月18日 02:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。