【社説①・03.27】:同性婚訴訟また「違憲」 政府・国会は法制化急げ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.27】:同性婚訴訟また「違憲」 政府・国会は法制化急げ
司法判断の流れが定着したのは明らかだ。同性婚を認めない民法や戸籍法の現行規定が憲法に適合するかどうか。それが問われた民事訴訟の控訴審で、大阪高裁はおととい「違憲」とする判決を下した。国への損害賠償請求は退けたが、2022年の大阪地裁判決の合憲判断を覆した。
今月7日にも名古屋高裁が違憲と判断した。19年に全国5カ所で同性カップルが起こした一連の訴訟は、5高裁でそろって違憲判決が出たことになる。東京地裁に追加提訴された第2次訴訟は高裁段階でなお審理が続くが、法制度を漫然と放置する段階はとうに過ぎたのではないか。
それだけ5高裁の判断は重い。違憲と断じた部分にばらつきはあるが、共通するのは法の下の平等を定める憲法14条1項と、婚姻に関する個人の尊厳などを掲げた24条2項に反する、という見解だ。
大阪高裁判決はこう論じている。同性カップルが法的保護を受けながら相互に協力して共同生活を営むことは人格的生存にとって重要である。この法的利益を享受できない不利益は著しく、やむを得ないと正当化できない―。また「同性愛は病理ではない」とした上で、わが国でも同性婚の法制化を受け入れる社会環境が整い、国民意識も醸成されていることを指摘した。
自治体の判断で同性カップルの権利保障を一定に図るパートナーシップ制度が、各地で導入されている。この点について今回の判決が「不合理な差別を根本的に解消し得ない」と踏み込んだのも目を引く。解決策としての同性婚法制化を強く促していよう。
石破茂首相の発言との落差が際立つ。今国会で同性婚について問われると「国民の意見や国会の議論、訴訟の状況を注視する必要がある」などと自らの賛否を示さず、煮え切らない。法制化に消極的な自民党の保守派に気を使っているのは想像に難くない。
つまるところ政府の言い分は最高裁判決が出てから、というものだ。高裁の違憲判決がいくら積み重なっても、統一判断が出るまでは難しい問題は先送りしたいのが石破政権の本音かもしれない。
それは怠慢ではないのか。国民の人権に関わる問題なのに、司法が違憲と繰り返し断じた法制度に何も手を付けないままでいいのだろうか。
残った訴訟の東京高裁判決を経て、最高裁の判断が出るまでにかなり時間がかかるだろう。仮にその段階で違憲が確定したとして、ゼロから法制化の準備をスタートさせるならあまりに遅過ぎる。
最高裁の審理を待つまでもない。同性婚の法制化に向けた具体的なプロセスを、早急に詰めるべきではないか。法務省には、相続の規定や子どもの嫡出推定などの課題を指摘する声もあると聞く。ならば一つ一つ、あるべき規定を考え、明文化する作業に入りたい。政府任せにせず、議員立法を想定する国会主導の議論も当然あっていい。
最初に違憲判断が出た札幌地裁判決からもう4年。少数者の権利保障に政府も国会も真剣になってもらいたい。
元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月27日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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