【社説①・04.23】:地方銀行の再編 攻めの戦略で地域を支えたい
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・04.23】:地方銀行の再編 攻めの戦略で地域を支えたい
「金利のある世界」が到来し、地方銀行に新たな再編の機運が高まっている。経営基盤を強化して、地域経済を支える役割をしっかりと果たしていくことが大切だ。
日本銀行が1月、政策金利を0・5%程度まで引き上げたことで、金融機関は、本業の融資で利ざやを取りやすくなった。
このため、金融機関の間では、融資の元手となる預金の獲得競争が激しくなり、預金金利を引き上げる動きが広がっている。
そうした中で、経営のコスト面で有利なネット専業銀行が高い金利を提示して攻勢をかけ、地銀は防戦に追われている。これに伴い、地銀同士の業務提携や経営統合などを通じ、競争力の強化を目指す動きが活発になっている。
千葉銀行は3月、千葉興業銀行の株式を取得し、筆頭株主となった。新潟県の第四北越フィナンシャルグループと群馬銀行は、経営統合を含めて検討していると発表した。3県にまたがる地銀が包括的な業務提携を結ぶ例もある。
地銀は地方経済を支える要である。経営効率化と同時に融資力を磨いていくことが問われている。これまでの発想にとらわれず、手を組む相手先を選んでほしい。
統合で経営の効率化を図るのは当然だとしても、それだけでは十分でない。地域のニーズを的確にとらえ、新たな発想によって事業を支援していくことが大事だ。
山口銀行などを傘下に持つ金融グループは、山口県長門市の温泉街で、閉館した老舗旅館の再生事業を手がけた。3月にレストランやサウナなどを併設する複合施設としてオープンした。
地銀が地元企業と連携して「地域商社」を設立し、農水産物の販路拡大や新商品の開発を目指す取り組みも広がっている。企業再生や事業承継などを担う専門人材の育成も重要な課題になろう。
金融庁は2021年、コロナ禍で疲弊した地域経済を、地銀が支えられるように再編の支援制度を創設した。金融機関が経営統合する際に、国がシステムの統合費用などを一部補助する仕組みだ。
青森銀行とみちのく銀行など、これまで多くの金融機関が、この制度を活用してきた。26年3月末が申請期限になっていたが、金融庁は新たな再編の機運を受けて、制度の延長を検討するという。
トランプ米政権の高関税策が、日本経済に与える悪影響は長引く可能性がある。地銀は新たな攻めの戦略を描き、地域経済の活性化を図ってもらいたい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年04月23日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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