【社説①】:能登地震5カ月 教訓生かし関連死防げ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:能登地震5カ月 教訓生かし関連死防げ
能登半島地震から5カ月。これまでに石川県の輪島、珠洲、能登の3市町で30人が災害関連死と認定され、建物倒壊などによる直接死と合わせた死者は260人となった。ただ、申請は県内で100人を超えており、審査が進めば関連死の人数はさらに増えよう。「助かった人」を死なせないため何ができるのか。災害大国に突き付けられた重い課題の一つだ。
避難生活や環境の変化によるストレスで持病が悪化するなどし、災害が原因と認められるのが災害関連死で、自殺も含まれる。遺族が申請、医師や弁護士らによる審査会の判断を経て自治体が決定すれば、災害弔慰金が支給される。2016年の熊本地震では、実に死者全体の8割超の221人が関連死だった。
能登半島地震の関連死30人のうち、年齢が公表された22人はすべて60代以上。車中泊や避難所生活で持病が悪化したり、エコノミークラス症候群になったケースのほか、新型コロナやインフルエンザに感染した人もいた。
一方、5月中旬に石川県輪島市の仮設住宅=写真=で、1人暮らしの女性が亡くなっていたことが分かった。今回の地震で初めての孤独死だとみられる。関連死に当たるかどうかは不明だが、遺族の話では持病があったという。
熊本地震では、発災3カ月以降に関連死した人が30人を超えている。仮設住宅に入居できても、生活環境の変化でストレスを抱えて孤立したり、アルコール依存症になるケースも。高齢者の見守りなどのほか、仮設商店街の設置やイベントの開催などで交流をつくりだし、被災者の孤立を防ぎたい。
石川県は関連死が多かった熊本地震を教訓に、避難先の環境を意識して発災当初から高齢者を金沢市以南の施設に広域避難させ、DMAT(災害派遣医療チーム)を派遣するなどしてきた。ただ、広域避難は逆に高齢者に負担をかけるとの指摘もあり、効果などの検証が必要だ。神奈川県は本年度末改定の大規模地震の被害想定で、初めて関連死者数を試算に加えるという。教訓を無にせず、対応法の効果アップに努めたい。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年06月01日 07:34:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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