【社説②】:規正法再修正案 金権腐敗の根は断てぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:規正法再修正案 金権腐敗の根は断てぬ
自民党派閥の裏金事件を受けた政治資金規正法改正案を巡り、自民党が示した再修正案に公明党と日本維新の会が合意し、今国会で成立する見通しとなった。
だが、企業・団体献金や政策活動費を温存する内容にとどまる。金権腐敗の根を断ち、政治の信頼を回復できるのか甚だ疑問だ。
再修正案は政治資金パーティー券の購入者名の公開基準を現行の20万円超から5万円超に引き下げ政策活動費は10年後に領収書や明細書を公開する内容。自民党が2回にわたり提示した案はいずれも賛同を得られず、公明、維新両党の主張を取り入れ再修正した。
パーティー券購入者の公開基準を5万円超に引き下げても、5万円以下なら政治資金収支報告書に明記する必要がなく、裏金に回る余地はある。抜け道を封じるにはパーティー券収入の全面公開か、パーティーの禁止が不可欠だ。
政党が党幹部らに支出する政策活動費の使途を10年後に公開することは全く使途不明な現状からは半歩前進だが、なぜ10年なのか。
政党の多くは収入の50%以上を税金を原資とする政党交付金に頼る。そもそも税金の使い方を10年間も国民に隠す道理はなく、通常の政治資金同様、翌年に公開すべきである。10年後に不適切使用が明らかになっても、党幹部が代われば責任はあいまいにされる。
党活動の秘密や外交機密を10年間秘匿の理由に挙げるが、どんな場合か具体的な説明を聞きたい。
再修正案の最大の問題点は、企業・団体献金の取り扱いに言及していないことだ。企業などによるパーティー券の購入も規制せず、政治家個人や政治団体に献金する抜け道は残る。
政権与党に多額の献金をした企業や業界団体に有利な政策が決まり、与党は「カネの力」を駆使しまた選挙に勝利する…。
まるで賄賂のような企業・団体献金こそが政策をゆがめ、日本経済の長期停滞の遠因ではないか。与野党はこうした国民の疑問と向き合い、企業・団体献金の禁止に踏み込まねばなるまい。
抜本改革を避けてきた岸田文雄首相が、内容が不十分な再修正案の成立を強行するなら、衆院解散・総選挙で国民に信を問うよう求める。裏金事件を反省しない自民党や裏金議員が立法府にとどまり続けることの是非を判断するのは、主権者たる国民である。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年06月01日 07:34:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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