亡くなった人がスマートフォンなどの機器やネット上に残したデータは「デジタル遺品」と呼ばれる。どのように扱うのが望ましいか、議論を深める必要がある。
個人での情報発信や買い物、金融口座の管理などがスマホで簡単にできる時代になった。それに伴い、デジタル遺品の扱いについての相談が消費生活窓口などに多数寄せられている。
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ネット上で金融口座の管理をする人が増え、故人の資産を調べるのにスマホのデータは重要になっている=2024年12月28日、浅川大樹撮影
スマホの中身を確かめるにはロック画面の解除が必要だが、パスワードなどが分からなければメーカーや販売店でも開けない。ネット上の契約も、IDやパスワードが不明だと内容確認が難しい。
目に付くのが、有料サービスを定期利用する「サブスクリプション」を巡るトラブルだ。故人の引き落とし口座を解約しても、利用料の請求が続く恐れがある。
サブスクは利用条件などの契約内容を申込時に明示することが、特定商取引法で事業者に義務付けられている。だが、利用者の死亡時の対応については規定がない。遺族が解約の手続きをしやすくなる法整備を急ぐべきだ。
ネットバンキングなどが普及し、端末でしか確認できない金融資産も増えている。仮想通貨(暗号資産)は認証キーがないと残高の把握すらできない場合がある。
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スマホのパスワードを残しておく方法として国民生活センターなどが推奨する「スペアキー」。パスワードを修正テープで隠し、削ると見られるようにしておく=2025年3月25日、清水健二撮影
万が一に備え、パスワードを家族だけに伝わるメモなどの形で残しておくことが大切だ。国民生活センターは、高齢者らに終活の一環として対応を呼び掛けている。
思い出の写真や動画、著作物などが残されている場合もある。
交流サイト(SNS)のアカウントは、原則として遺族に継承が認められていない。このため本人が亡くなった後は多くが放置されている。削除や保存を求めても、応じるかどうかは事業者次第だ。
ネットビジネスは歴史が浅く、業界に没後対応の統一ルールがない。故人や遺族の意向を反映できる仕組み作りが欠かせない。
海外では、故人のネット上のデータや資産の扱いに関する法制化の動きが進む。デジタル先進国のエストニアには、遺族がデータを処理する権限を持つなどと定めた法律がある。
日本ではデジタル遺品の定義や所有権も曖昧だ。国がルール化の検討を始めることが求められる。
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