【注目の人 直撃インタビュー】:大阪万博を追いかけるジャーナリストが一刀両断「アホな連中が仕切るからおかしなことになっている」
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【注目の人 直撃インタビュー】:大阪万博を追いかけるジャーナリストが一刀両断「アホな連中が仕切るからおかしなことになっている」
◆今井一(ジャーナリスト)
13日の開幕まで10日となった大阪・関西万博。期待感は相変わらず低いままだが、肝心の海外パビリオンも多くは建設が終わっていない。開幕後も昼夜3交代制の突貫工事を強いられる作業員たち。赤字になったら誰が責任を取んねん? 万博問題を追い続けるジャーナリストを直撃した。
◇ ◇ ◇
──4日から3日間、開幕前のリハーサルとして「テストラン」が行われますが、取材の制限が出ています。
参加国が自前で建設する「タイプA」(47カ国42館)のパビリオンで「取材してもいいですよ」と表明しているのは約半分の29カ国24館。内装工事も完了してお客さんを入れてもいい段階のパビリオンは2館しかない。万博協会(日本国際博覧会協会)は「外国さんが嫌がっているんで」と言ってますが、本音は建設が間に合ってないところを報道して欲しくないんだと思いますね。
──テレビなどは「素晴らしい」「今から楽しみ」とお気楽に報道するのでしょうね。
テストランはリハーサルなんやから、むしろオペレーションの不備や建物の不具合などが出てきた方がいい。それでこそ改善や対策ができるんですから。その不都合な部分も含めて取材させないのはおかしい。記者クラブも抗議しないといけません。私だったら「取材の自由をどないすんねん!」と言いますよ。テストランに参加する一般の人はカメラも自由に撮っていいようなので、後でその人たちからの情報を報告させてもらいます。
◆「ケガをしても救急車を呼ぶな」と
──現場では今も突貫工事が続いている?
3交代24時間体制で工事が続いています。建築エコノミストの森山高至さんの取材では、サブコン(中抜き業者)が下請け業者へ工事代金を支払っていない問題も出てきました。オリンピックの時もそうでしたけど、大手が中抜きし、弱いもんが虐げられる状態をいつまで続けるんやと思いますね。
──まさに搾取ですね。
私が話を聞かせてもらった作業員は「ケガをしても救急車を呼ぶな」とクギを刺されているみたいです。
──なぜですか?
そりゃ、隠したいからでしょう。昨年、会場建設現場でメタンガスによる爆発火災が発生しましたが、万博協会が最初に出してきたのは1枚の写真のみ。朝日新聞が情報開示請求して写真が5枚に増え、被害が大きかったことや消防への通報が4時間半も遅れたことが分かりましたが、このどこが「いのち輝く未来社会」なんだという話です。
◆取材する自由をどないすんねん!
──報道機関が機能していない。万博協会はフリーや雑誌記者を会見から締め出しています。
兵庫の斎藤(元彦知事)だってフリーの記者を会見に入れています。私はこの3年間、1回も万博の会見に呼ばれていません。理由を聞いたら「なんちゃってジャーナリストもいるから」と。もちろん、自説を長々と話すようなジャーナリストは論外ですが、申し込みをした段階で私の取材実績などは調べられるはず。メタンガスの爆発の際だって、私なら「(危険の及ばない範囲内で)事故現場を取材させてくれ」と申し入れていました。
──記者クラブ制度の壁もある。
だから記者クラブ主催ではなく、「フリーの記者も入れる会見を開かせてください」という趣旨で、3万1000筆の署名を持って万博協会を訪ねました。そしたら対応された職員が「どちらさまですか?」と聞いてきた。こちらは「そちらこそ誰ですか? 名刺ください」と言ってみたが、「渡せません」と来た。3万人余の納税者の願いを無視するのか、ということです。
◆テナント料1000万円で炒飯2500円
──それでも赤字はほぼ確定の状況です。
チケットが売れないから、その他のところで稼ごうとする。会場に出店するレストランは、施設使用料として1平方メートル当たり5万円の施設使用料を取られます。一般的な200平方メートルのカフェなら、1000万円という大金です。さらにこれに1平方メートル当たり2万円の保証金も取られる。だから大阪王将が2500円の炒飯(黒毛和牛)を出すのもうなずける。商品単価を上げなくてはペイできないからです。別のテナントに入る人に聞いたら、「赤字は覚悟の上。箔付けのために出します」と諦め顔でした。こんな高いテナント料は、反社(反社会的勢力)の仕切りみたいです。
──炒飯は街中なら800円で食べられます。
くら寿司が世界各国の料理を全品300円均一で提供すると聞き、なんだか良心的に思えてきたほどです。
──13日の開幕日に催される「第九」の合唱もセコい。
午前9時の開場と同時に1万人の有志が大屋根リングに上ってベートーベンの第九を歌うのですが、参加者から1人2万500円(大人)の料金を“取る”のです。言っておきますが、出演料をお支払いするのではなく、取るのです。この中には4000円の入場料も含まれていて、せめて入場料ぐらいはタダにしてやってよという気になります。ちなみに、この合唱の1万人もちゃっかり入場数にカウントされるそうです。
◆役員やダウンタウンの報酬ぐらいは開示しろ
──徳島の阿波踊りや青森のねぶた祭など、万博とは直接関係のないようなイベントが多いのも入場数のかさ増しのため?
アホな連中が最初に2820万人を入れます、前売りチケットは1400万枚売ります、なんてことを言うからおかしなことになる。石毛(博行事務総長)は1、2年前は「大丈夫。チケットは売れます」と胸を張っていたのに、最近は「いや、万博は満足度です」と言い始めた。そりゃ、来場した小学生に感想文を書かせれば、「楽しかったです」と書くはず。それをもってこのアホな連中は「万博は成功だった」と言うのでしょう。
──オリンピックと一緒で誰も責任を取らない?
いいんですよ、これがすべて財界がカネを出してやるイベントなら。誰も文句は言いません。怖いのは、万博を契機に「今度はサッカーのW杯を誘致しよう」「またオリンピックを呼ぼう」という人たちが出てきそうなこと。せめて税金を使うのなら、住民投票で誘致を問うプロセスをつくらないといけません。例えば、最近のオリンピック・パラリンピックに関しては、IOC(国際オリンピック委員会)が誘致したい都市に名乗りを上げる前に住民投票で承認を得ておくことを求めています。立候補してから住民の反対運動の高まりで、断念する都市が次々に出てきたからです。古くはアメリカのデンバー、最近ではドイツのハンブルクなどが住民投票の反対多数で誘致を断念しています。
──開催経費も含めてうさんくささがプンプンする。
情報公開は重要です。法曹関係者に相談すると、万博協会のような公益社団法人は、役員報酬などの情報開示義務はないとのこと。しかし、法的拘束力はなくとも政治的拘束力はあるはず。アンバサダーを退任したダウンタウンへの報酬はしっかり明らかにすべきですし、石毛についても基本報酬はいいとして、せめて赤字になったらボーナスぐらいは返上させるべきです。
(聞き手=加藤広栄/日刊ゲンダイ)
▽今井一(いまい・はじめ)
1954年、大阪市生まれ。関西大学文学部哲学科卒業後、国内外問わず精力的に取材。1989年に「チェシチ うねるポーランドへ」でノンフィクション朝日ジャーナル大賞を受賞。市民グループ「国民投票/住民投票」情報室代表。日本の記者クラブ制度にも疑問を投げかける。
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元稿:日刊ゲンダイDIGITAL 主要ニュース マネー 【トピックスニュース・連載「注目の人 直撃インタビュー」・大阪・関西万博】 2025年04月04日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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