【社説②・01.18】:訪日客数最高 受け入れ態勢の充実が必要だ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・01.18】:訪日客数最高 受け入れ態勢の充実が必要だ
観光資源に恵まれた日本に魅せられて、訪日する外国人客が飛躍的に増えている。
観光産業を持続的に発展させるには、受け入れ態勢を充実させ、日本への理解も深めてもらうことが大切だ。
2024年の訪日客数は前年比47・1%増の約3687万人と、過去最高を更新した。これまではコロナ禍前の19年に記録した約3188万人が最高だったが、約500万人も上回った。消費額も初めて8兆円を超えた。
韓国からの訪日客が881万人と最も多く、次いで中国が698万人だった。近隣国だけでなく、宿泊日数が長い米欧からの観光客も伸びているのが特徴だ。
日本は、北海道から九州、沖縄まで、海や山、川など豊富な自然に囲まれ、「食文化」が地域の歴史や文化と深く結びついている。こうした自然や食などの魅力が訪日客を引きつけているのだろう。円安による割安感も大きい。
訪日客の消費は、鉄鋼や半導体製造装置の輸出額を上回る規模にまで伸びている。宿泊や小売り、飲食など幅広い業種が恩恵を受けており、成長を支える上で重みが増していると言えよう。
日本政府は成長戦略の一環として、観光立国を推進し、30年に訪日客6000万人、消費額15兆円とする目標を掲げている。
新潟県魚沼市の「玉川酒造」では酒造りの工程を見学できる施設を開設し、訪日外国人が増えている。日本酒などの「伝統的酒造り」が国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されたことも追い風だ。
また、群馬県は、温泉文化をPRするため、県内7温泉地を楽しむ体験イベントや周遊券を企画した。島根県と鳥取県は、古代出雲の精神性などを生かした体験学習などをアピールしている。
こうした取り組みを重ね、幅広い地域で訪日客のリピーターを増やしていくことが重要になる。
課題は「オーバーツーリズム(観光公害)」への対策だ。
過度な混雑や地域住民の生活への影響、旅行者の満足度の低下が懸念されるためである。
多様な自然や伝統文化など地方の潜在力は高いが、受け入れる側の工夫も欠かせないだろう。
観光需要を取り逃がさないためには、受け入れ態勢の充実や人手不足への対策も急務だ。チェックインの自動化や無人化、清掃や配膳のロボットの導入などのニーズは高い。政府は導入支援の拡充策などを検討してもらいたい。
元稿:読売新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年01月18日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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