【社説①】:新興国の脱炭素 アジアで日本の技術を生かせ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:新興国の脱炭素 アジアで日本の技術を生かせ
経済成長が続く東南アジアで温室効果ガスの排出を削減することは、世界全体の脱炭素のために欠かせない。関係の深い日本が、効果的な支援策を講じねばならない。
気候変動の国際的な枠組みである「パリ協定」は「産業革命前からの気温上昇を1・5度以内に抑える」との目標を掲げている。
その達成のために、日本を含む多くの国は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指している。
ただ、新興国には、これまで大量の二酸化炭素(CO2)を排出して成長してきた先進国への不満が根強い。先進国側が、資金や技術面で新興国の脱炭素を後押ししていくことが不可欠だ。
その点で、日本としては、地理的に近く、経済的にも結びつきが強い東南アジア諸国連合(ASEAN)への支援が重要になる。
ASEANでも、50年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げる国が多い。だが、経済成長に伴いASEANの電力需要は伸びる一方で、50年に今の3倍近くに増えるとの推計がある。
ASEANも再生可能エネルギーの利用を図っているが、太陽光発電に適した平地の少ない国が多い。コストの安い石炭火力発電に頼らざるを得ないのが現状だ。
欧米は石炭火力の早期廃止を主張しているが、東南アジアでは現実的とは言えない。
期待されるのが日本の技術の活用だ。日本は石炭や天然ガスによる火力発電で、CO2を出さない水素やアンモニアを混ぜて燃やす技術の開発を進めている。CO2を回収して、地中に貯留する技術の実用化にも注力している。
官民での協力が始まっており、三菱重工業はインドネシアの現地企業と、水素やアンモニアを混ぜる火力発電の導入を計画する。
政府のエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、ベトナムの国営石油会社と、火力発電などで出たCO2を回収・貯留する事業の実現を目指すという。
そうした動きを、欧米が「石炭火力の延命策だ」と批判しているのは残念だ。広島で19日に開幕する先進7か国首脳会議(G7サミット)でも温暖化対策が重要テーマとなる予定で、そうした場で論議を深めてもらいたい。
日本は、ASEANの支援も含め自国の技術が脱炭素に有効だと丁寧に説明し、理解を求める必要がある。その上で、技術開発を加速して確実にCO2の排出を減らし、結果を出すしかない。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年05月12日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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