【主張】:四半期開示 経営改革へ見直し続けよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張】:四半期開示 経営改革へ見直し続けよ
金融庁の審議会が、法令で上場企業などに開示を義務付けている「四半期報告書」を廃止し、証券取引所が上場規則で定める「決算短信」に一本化する案を了承した。
作業部会でさらに検討を進め、5月に最終報告を策定する。そのうえで政府は、来年の通常国会での法改正を目指す。
四半期報告書と決算短信には重複する項目が多く、産業界からは事務負担を軽減するための見直しを求める声が上がっていた。
最近は気候変動などの企業対応を評価するESG(環境・社会・企業統治)投資も拡大し、企業側はこうした非財務情報の公開も求められる。事務負担は重くなるばかりであり、一本化はその軽減に向けた大きな前進といえよう。
ただ、これは改革の第一歩である。企業の開示を巡っては経営者が株主の圧力で四半期ごとの業績向上に追われ、短期志向の経営に陥りがちだと指摘されてきた。
岸田文雄首相が「新しい資本主義」の重要政策の一つとして四半期開示の見直しを掲げるのもこのためだが、この懸念は十分に払拭されていない。政府は経営改革を促す開示制度の実現に向けて不断の見直しをすべきである。
現行制度では、上場企業は3カ月ごとに証券取引所へ決算短信を提出した後、金融商品取引法で開示を義務付けられている四半期報告書を国に提出しなければならない。この2つは業績や財務情報などで共通点が多く、一本化することによって効率化を図る。
四半期報告書は虚偽記載に刑事罰が科される仕組みである。このため短信に一本化した後も虚偽記載を罰することができるよう、金融庁は短信と同じ内容を「臨時報告書」として開示する案を審議会に提案した。これらを詰めて実効性の高い制度とすべきである。
問題は、長期的な視点での経営をいかに促していくかである。
最近では企業に対して株主還元を求める圧力が強まっており、人材開発や設備投資などで長期経営の視点を持ちにくくなっているとも指摘されている。関西経済連合会も「四半期開示は経営者や投資家の短期的利益志向を助長している」と批判している。
岸田首相は「企業は長期的な視点で経営することが重要だ」と繰り返し訴えてきた。その問題意識があるのなら、さらに踏み込んだ制度改革を検討すべきである。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2022年04月19日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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