【余禄】:青魚の代表格であるサバ…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【余禄】:青魚の代表格であるサバ…
青魚の代表格であるサバ。語源は諸説あるが、「多い」の意味の古語「さは」が転じたという説も有力だ。「さばを読む」も数が多くて正確に数えられないことから生まれたという。昔から大量に取れたことは確かだろう
▲傷みやすいが、塩漬けすれば保存がきく。福井の若狭湾と京都を結ぶ「鯖(さば)街道」は人気の観光スポットだが、古い歴史の背景がある。今昔物語には奈良の大仏の開眼供養の際、聖武天皇が夢のお告げに従ってサバ売りの老人を式典に参加させ、サバが仏典に変わったという説話が載っている
▲1970年代までは漁獲高の2割前後を占めていた。一方で下(げ)魚(ざかな)扱いされることも多かった。戦前には缶詰にもカツオのラベルをつける業者が後を絶たなかったそうだ
▲サバ缶がツナ缶に並ぶ人気商品になったのはこの10年だ。体によい不飽和脂肪酸を多く含み、健康志向にマッチした。ところが昨年来の歴史的不漁で原料が不足し、販売休止や4月1日からの値上げが相次いで発表された
▲漁獲量が激減したサンマをめぐる国際会議で漁獲枠の削減などが合意されたばかり。それでも資源回復の見通しはたたない。「次はサバ」では日本人の食生活もさみしくなる
▲サバは夏の季語だが、通年で取れる。随筆「若狭春鯖のなれずし」で福井県小浜市のサバを称賛したのは美食家の北大路魯山人(きたおおじ・ろさんじん)だ。「とても下魚とは思えないまでに上品な小味をもち、一度口にしたら忘れがたい風味をもつ美肴(びこう)」。何としても守りたい日本の味である。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2023年03月29日 02:06:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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