《社説①》:GDP世界4位に転落 暮らしの立て直し急ぐ時
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:GDP世界4位に転落 暮らしの立て直し急ぐ時
物価高に苦しむ国民の暮らしを立て直さなければ、経済再生もおぼつかない。
日本の昨年1年間の名目国内総生産(GDP)がドイツに抜かれて、世界4位に転落した。
円安でドル換算のGDPが目減りしただけではなく、日本経済が抱える大きな問題を反映した。5割以上を占める個人消費の停滞が続いていることだ。
新型コロナウイルス禍から経済活動が正常化した効果も息切れし、昨年7~9月期以降は2期連続のマイナス成長に陥った。

背景には、賃上げが物価上昇に追いつかないことがある。昨年の実質賃金は前年比で2・5%減った。消費増税が影響した2014年以来の下げ幅となった。
所得が低いほど物価高の負担は重くなる。非正規労働者は全体の4割近くを占め、厳しい節約生活を強いられている人は多い。
懸念されるのは格差の拡大だ。
日経平均株価はバブル期につけた史上最高値に迫っている。円安で自動車など輸出企業の好決算が相次ぎ、高所得者を潤している。
東京23区で昨年発売された新築マンションの平均価格は初めて1億円の大台を超えた。「パワーカップル」と呼ばれる高年収の共働き世帯が「億ション」の買い手となっている。
アベノミクスでも円安のメリットは大企業や富裕層に限られた。大幅に増えた非正規労働者などは蚊帳の外に置かれ、消費は低調なままだった。いびつな経済構造は今も変わっていない。
にもかかわらず、岸田文雄首相は1月の施政方針演説で最近の賃上げや株高に触れ、「日本経済が新たなステージに移行する明るい兆しが随所に出てきている」と強調した。多くの国民の実感とは、かけ離れているのではないか。
カギを握るのは今年の春闘だ。大企業では積極的な賃上げに応じる動きが出ている。課題は、雇用の約7割を占める中小企業に波及するかだ。取引先である大企業の協力や政府の支援が欠かせない。
首相肝煎りの所得減税が6月にも実施される。だが小手先の景気刺激策を繰り返しても、将来不安は解消しない。格差の是正に本格的に取り組み、国民生活の底上げを図ることが急務だ。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月19日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます