路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説②】:直木賞候補独占 文芸が映す女性の活躍

2019-06-30 06:10:15 | 【学術・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

【社説②】:直木賞候補独占 文芸が映す女性の活躍

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:直木賞候補独占 文芸が映す女性の活躍 

 女性作家の活躍、などと書けば何を今さらと笑われるだろうか。だが、七月に選考会のある直木賞の候補作がすべて女性の作品だったことは、この国の文芸史に残る一つの節目として記憶したい。

 百六十一回を数える今回の直木賞。作品が候補となったのは、朝倉かすみ、大島真寿美、窪美澄、澤田瞳子、原田マハ、柚木麻子の六氏だ。全員が女性なのは、一九三五(昭和十)年に文豪・菊池寛が創設した芥川賞と直木賞の双方の歴史を通じて、初めて。

 特筆されるのは、純文学系の芥川賞が新人賞であるのに対して、大衆小説系の直木賞は中堅以上が主な対象となる点。文壇の重鎮の選考委員たちによる選考では、候補作の評価に加え、作家としての地力や蓄積も重視されるのだ。

 その直木賞の候補を女性が占めたことは、女性作家の個々の創作力の高さとともに、層の厚さも映し出す。遠く平安の時代に「源氏物語」を書いた紫式部が聞けば、後輩たちの活躍を喜ぶだろう。

 平安の王朝期にはまた「枕草子」の清少納言をはじめ「和泉式部日記」「蜻蛉(かげろう)日記」など日記文学の書き手として女性が活躍した。

 だが鎌倉以降は、男性上位の武家社会が発達。文芸では戦記物や戯作文学などが興隆し、男性が中心となった。明治に入ると西洋の影響で新たな文芸創作の模索が始まるが、その主体も男性だった。

 そうした中、男女の平等や、封建的な家制度からの脱却などを求める女性たちは、本来であれば男性と同等に力を発揮しうる文芸に、その主張の場を求めた。文芸誌「青鞜」の平塚らいてう、「女人芸術」の長谷川時雨たちだ。

 林芙美子の「放浪記」など、女性を描く名作の数々も誕生。文芸を創作し、享受する道が女性に大きく開かれた。

 また三六(昭和十一)年には女流文学者会が発足し、ともに手を携えて創作に励み、後進を育てた。努力は実り、戦後は優れた女性作家が次々に登場する。

 八七年、大庭みな子さんや田辺聖子さんらが、女性で初めて芥川賞や直木賞の選考委員に就任したのは、その勢いの象徴となった。やがて「女流作家」という言葉はほぼ死語となり、女流文学者会も二〇〇六年に休会した。

 この国では、女性の活躍を阻む「ガラスの天井」が多くの分野に存在する。だが今回の直木賞は「もはや文芸の世界にはない」と改めて示したといえよう。この流れを他の分野にも広げたい。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2019年06月28日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【筆洗】:ワコールの創業者... | トップ | 【社説①】:最高裁の判断 な... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

【学術・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】」カテゴリの最新記事