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【平成の経済事件簿】:東京佐川急便疑獄<下> バラまかれた“佐川マネー”は数百億円

2018-11-29 07:15:50 | 【経済・産業・企業・IT・ベンチャー・起業・インバウンド(訪日外国人客)事業】

【平成の経済事件簿】:東京佐川急便疑獄<下> バラまかれた“佐川マネー”は数百億円

  『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【平成の経済事件簿】:東京佐川急便疑獄<下> バラまかれた“佐川マネー”は数百億円

 ■平成の経済事件簿

 “ホメ殺し”には黒幕がいた。佐川急便社主の佐川清である。岩瀬達哉は「われ万死に値す―ドキュメント竹下登 」(新潮文庫)で「佐川黒幕説」を論証している。

  新潟から裸一貫で出てきた佐川清は、ことあるごとに同郷の田中角栄に助けられてきた。佐川急便は田中の庇護のもとに育った会社だった。佐川はいつも「田中先生に足を向けて寝られない」と言っていたという。

 田中心酔者の佐川は、田中から派閥を奪い、創政会(後の経世会)を旗揚げした竹下を許せなかった。そのショックで田中が脳梗塞で倒れたのだから、なおさらである。

 これに渡辺広康との確執が重なった。渡辺は歌手やスポーツ選手のパトロンとして銀座で豪遊。佐川急便では、創業者の佐川清に次ぐ実力者となり、「政界担当」として、与野党議員を問わず人脈を広げた。田中角栄一筋の佐川清とは対照的だ。

田中角栄(右)と佐川清創業者/(C)日刊ゲンダイ

        田中角栄(右)と佐川清創業者/(C)日刊ゲンダイ

 佐川清が田中角栄をバックにしたように、渡辺は金丸信に食い込んだ。そして、稲川会の石井進に接近した。

 佐川は渡辺に「佐川急便を乗っ取られるのではないか」と恐れるようになる。2つの思いが重なり、佐川の竹下憎しは倍加していく。かくして竹下への“ホメ殺し”が断行された。

 竹下政権誕生の功労者は、稲川会の石井進と東京佐川急便の渡辺広康である。87年12月23日、金丸は政権誕生の礼を言うため、東京・一番町の料亭「藍亭」に石井と渡辺を招待した。

 茨城県のゴルフ場、岩間カントリークラブが石井側に譲渡されたのは、この謝礼である。岩間カントリーは平和相互銀行系列の太平洋クラブが開発中のゴルフ場で、運営するためにつくられた会社が岩間開発。86年10月、平和相互は住友銀行に吸収合併され、その2カ月後、岩間開発は東京佐川急便に売却された。 

 岩間開発の経営権を手に入れた東京佐川急便は、土地買収を進めゴルフ場を完成させた。このとき、土地の買収資金を融資したのが、渡辺がつくった不動産会社・北東開発である。

 89年、岩間開発は第三者割当増資を実施。石井進が設立した不動産会社の天祥が筆頭株主となり、石井は岩間カントリークラブの実質的なオーナーとなった。

 これを機に、石井は表社会に進出していく。同年4月、石井は手に入れたばかりの岩間カントリークラブの「会員保証金預かり証」を利用して、384億円をかき集めた。岩間カントリークラブは会員制のゴルフ場ではないから、預かり証は何の価値もない。

 ただの紙切れ同然のしろものを購入したのは、東京佐川急便が80億円で最も多く、野村証券や日興証券の関係会社がそれぞれ20億円供出した。稲川会が守護神となって外敵から守ってくれている企業と、仕手グループが購入リストに顔を揃えた。石井は仕手集団・光進代表の小谷光浩のアドバイスに従い東京急行電鉄株式の買い占めに乗り出した。

 だが、バブル経済が崩壊。巨額の債務を抱えた東京佐川急便の経営が悪化した。親会社の佐川急便は91年7月、社長の渡辺広康ら東京佐川急便の幹部を全員解雇。同月、渡辺を特別背任(商法違反)の疑いで東京地検に告訴した。91年9月、石井進が病死し、東急電鉄株の仕手戦は終わった。

 東京佐川急便は、岩間カントリークラブをはじめ、石井の関連企業に対して次々と融資や巨額の債務保証を行った。その総額は、驚くなかれ、4395億円、40企業と一個人(石井本人)に及んだ。

 東京佐川急便からの資金流出は桁外れだった。東京地検は、カネの流れと人脈を仕分けした。東京佐川急便経営陣による暴力団がらみの背任、政界への資金提供、それ以外の背任事件の3ルートに交通整理した。

 暴力団がらみでは、石井系企業に組み込まれた北東開発と、石井がオーナーの「稲川会経済部」と評された北祥産業の2社に対する157億円の債務保証を特別背任罪で立件した。

 渡辺がタニマチとして政界にバラ撒いた“佐川マネー”はウン百億円と取り沙汰された。佐川急便の創業者、佐川清(02年3月死去)は生前、「佐川のカネが誰にいくら配られたか明らかになれば自民党はつぶれる」と豪語していたという。しかし、渡辺が口を割らなかったため、政界ルートの解明はできなかった。

 政治家では、東京佐川急便から5億円の献金を受けていた金丸信が、政治資金規正法違反で略式起訴された。世論の猛反発を招き議員辞職に追い込まれた。渡辺広康は03年3月に最高裁で懲役7年の刑が確定。その1年後に69歳で病没した。

 東京佐川急便疑獄は、政権中枢と暴力団が深くつながった政界の暗部を、鮮明に浮かび上がらせた。 =敬称略

 ◆有森 隆 ジャーナリス

 30年余、全国紙で経済記者。豊富な人脈を生かし、取材・執筆活動中。「カルロス・ゴーン『経営神話』の自壊」(「月刊現代」2004年9月号)、「C・ゴーン『植民地・日産』の次の獲物(ターゲット)」(同09年1月号=最終号)などを執筆。ゴーン会長の欺瞞性を鋭い筆致でえぐり出した。この仕事ぶりが、今、再び脚光を浴びている。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース ビジネス 【企業・産業ニュース】  2018年11月29日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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