【社説②】:パワハラ防止 企業トップの責任重い
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:パワハラ防止 企業トップの責任重い
職場でのいじめや嫌がらせなど、パワーハラスメント(パワハラ)の防止対策が今月から中小企業にも義務づけられた。
2020年6月の改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の施行で先行していた大企業を含む全ての企業が対象となった。
企業は防止への方針を就業規則などに明記することや、社員への周知、相談窓口の設置など実態把握に努めることが求められる。
罰則はないが、各地の労働局が対応の確認を求めた際に応じなかったり、虚偽報告をしたりすると企業名を公表することもある。
パワハラを受けた人は、心身の不調を招き、自殺に追い込まれることもある。個人としての尊厳や人格を傷つける言動は、教育や指導の名に値しない。
防止に向けては早期発見と早期対応が必要だが、体制を整えても経営者の理解不足で機能しない例もある。トップが絶対に許さないという姿勢を示し、社内の意識を変えて実効性を高めたい。
厚生労働省はパワハラについて《1》優越的な関係を背景とした言動《2》業務上、必要かつ相当な範囲を超えたもの《3》労働者の就業環境が害されるもの―の三つ全てを満たすものとしている。
その事例として「精神的な攻撃」や「過大な要求」など6類型を示しているが、実際にはパワハラは複合して起こることが多い。
パワハラは後を絶たず、日本を代表する企業でも従業員の自殺が相次ぐ。中には社員の労災認定が報道されて初めて社長が事案について知ったケースもあった。
中小企業はより経営者の個性が組織体質に反映されやすく、トップの意識改革が重要だ。社員が少なくて対応が困難なら弁護士など第三者への委託も一つの方法だ。
残業が多く、休みが取りづらいなど職場の雰囲気も社員のゆとりを失わせ、パワハラを生みやすい。働き方改革も合わせて取り組んでいくことが必要である。
パワハラの対象には、パートやアルバイト、契約社員なども含まれており、非正規で働く人たちへの目配りも大事だ。
各企業では新入社員が希望を胸に会社の門をくぐったことだろう。この気持ちが失われぬよう一人一人を大切に育ててほしい。
これからはパワハラ、セクハラなどに甘い対応の企業は社会的な評価を下げ、若者にも選ばれないかもしれない。社員が職場で主体的に働き、成長につながるような指導こそ行き渡らせたい。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月05日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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