【社説・12.26】:PFAS法規制化 地位協定改め根本解決を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.26】:PFAS法規制化 地位協定改め根本解決を
政府は、発がん性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)について、これまで法的義務のない水質の暫定目標値を法で規制する方針を決めた。水道事業者に水質検査や水質基準値を超えた場合の改善を義務づける。
沖縄の米軍基地周辺で泡消火剤に含まれるPFASの一種が確認されて以降、全国各地でも米軍基地周辺などで検出が相次ぎ問題になっている。これまで規制がなかったPFASが法規制される動きについては一定評価したい。
ただ、施行が2026年4月の見込みで、対応は遅い。さらに基準値は現在の目標値をそのままスライドさせただけで、米国の基準と比較しても緩い規制にとどまる。これでは住民の不安を払拭するに足るものとは言いがたい。
PFASは水や油をはじき、フライパンの塗装や泡消化剤などに広く使われてきた。有害性や環境に蓄積されやすいことから国際的にも製造や使用が禁止されている。
日本政府は20年に、水道水の水質の暫定目標値として、代表物質のPFOSとPFOAの合算で1リットル当たり50ナノグラム(ナノは10億分の1)と設定した。一方で米国は24年に、2物質それぞれで、検出できる下限値の4ナノグラムと、日本より厳しい基準を定めている。
政府初の大規模な上水道や簡易水道の調査でも全国でPFASが検出され沖縄でも確認された。専用水道の調査では県外で目標値を超えた自治体もあった。
今回のPFASの法規制化で自治体には水質改善の義務が課せられる。しかし改善のためには発生源の確定と対策を施さなければ、根本的な解決にはつながらない。
12月には防衛省や外務省、環境省などが、米軍横田基地(東京都)からPFASが流出した可能性があるとして基地に立ち入りした。日米共同でサンプリング調査もする。沖縄でも20年の米軍普天間飛行場外への泡消火剤流出と、21年のうるま市の米陸軍貯油施設での流出では県の基地内立ち入りが認められた。
だが他の米軍嘉手納基地などへの立ち入り申請は、日米地位協定により基地の管理権を持つ米軍が拒否する状況が続いている。地位協定本体とは別の環境補足協定は、立ち入り調査の条件として「現に発生した場合」と限定している。補足協定や「運用改善」では事態解決につなげることはできない。地位協定本体の抜本的改定も急務だ。
有害物質などに関する国連特別報告者が沖縄を視察し、PFAS汚染と米軍基地の関連性は明らかだと指摘した。法規制で義務づけられる改善に自治体の予算が費やされ、住民に転嫁されるようなことがあってはならない。発生源責任が追及されるべきだ。
適正な法運用ができるためにも、一日も早く基地内の立ち入りを実現し、地下水の環境調査などを実施していくことが必要だ。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月26日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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