【安倍氏急逝】:保守王国・山口で自民の力関係に変化「方程式が崩れ去った」
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【安倍氏急逝】:保守王国・山口で自民の力関係に変化「方程式が崩れ去った」
安倍晋三・元首相の死去から8日で1年となる。安倍氏の後継問題と岸家の代替わり、異例のダブル補欠選挙、衆院山口新1~3区の公認候補予定者の決定……。衆参とも県内選挙区を自民党が独占する保守王国にあって、重鎮だった安倍氏の急逝は、山口県内の党勢力のパワーバランスに大きな変化をもたらすこととなった。(相良悠奨)
■水泡に帰した方針
「新1区は林氏、新3区は安倍氏というのが既定路線だった」。ある自民党県連幹部は銃撃事件前の方針について、こう語った。
選挙区数が1減となる次期衆院選に向け、幹部らは、新1区に林芳正・外相、新2区に岸信夫・防衛相(当時)、新3区に安倍氏を擁立し、高村正大氏を比例選に回す方向で調整を進めていた。
将来的には岸信千世氏が父・信夫氏の後を継ぎ、高村氏と新2区と比例選に交互に立候補する「コスタリカ方式」を導入する案も検討されていたという。
だが、方針は事件で水泡に帰した。別の党県連幹部は「方程式が崩れ去った」と嘆いた。
新たな顔ぶれ
安倍氏の死去に伴い、衆院山口4区補選が行われることになったが、後継者の選定は難航した。
関係者によると、安倍昭恵夫人は自身の出馬を早々に固辞し、安倍氏のおいにあたる信千世氏らに「晋三さんの後を継がないか」と声をかけたが、信千世氏は「父の選挙区(2区)への思いが強い」と言って断った。ほかのおいっ子たちも首を縦に振らなかった。
親族擁立の芽が消えた後、昭恵夫人の強い意向で白羽の矢が立ったのが下関市議の吉田真次氏だった。
一方、安倍氏の実弟の信夫氏の体調は芳しくなかった。昨年9月の安倍氏の国葬には車いすで参列。その頃から信夫氏の任期途中の議員辞職と2、4区のダブル補選が「現実味を帯び始めた」(自民党関係者)。
実際、信夫氏は昨年12月に引退の意向を周囲に伝え、今年2月に信千世氏が2区補選への立候補を表明した。信夫氏の支援者は「兄弟そろって政界から姿を消し、補選が同時に行われる。何の因果か」と悔しそうに語った。
吉田氏と信千世氏は4月の補選でともに当選。保守王国は一気に若返った。
■「郷里から見守って」
次期衆院選で新1~3区の自民党公認候補予定者となる支部長は、6月16日に発表された。
安倍氏が地盤としてきた下関市を含む新3区を巡っては、吉田氏と下関市が地元の林氏による派閥を巻き込んだ争いに発展。吉田氏を支部長にするよう安倍派や昭恵夫人が求めたが、党本部は「当選確実な方」として林氏を選んだ。
比例中国ブロックへの転出が決まった吉田氏側の不満は根強く、今後の火種となる可能性を懸念する声もある。ただ、県内の党関係者の間では「これからは経験も実力も群を抜く林さんが中心の時代が続くだろう」との見方が大勢だ。
6月下旬、新3区内の党所属県議約10人が山口市内で会食し、親睦を深める姿があった。「林派」「安倍派」として対立してきた面々もいたが、ある出席者は「これまでの殺伐とした雰囲気が消えていた」という。
安倍氏の遺骨は今月23日、長門市油谷地区の安倍家の墓に納められる予定だ。党県連関係者は「安倍さんの思いや志は我々が受け継いでいく。心安らかに郷里から見守ってほしい」と語った。
元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 政治 【政局・安倍晋三・元首相の死去から8日で1年となる。安倍氏の後継問題と岸家の代替わり、異例のダブル補欠選挙、衆院山口新1~3区の公認候補予定者の決定】 2023年07月08日 18:27:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。