日産自動車の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)は5日、株価に連動して役員報酬が決まる制度に関し、社内規定に違反し不当に報酬を上乗せして受け取ったことを認めた。

 自身の指示は否定した上で、不当に受け取った額は返還する意向を示した。他の複数の役員にも同様の行為があったとも明らかにした。日産は来週に取締役会を開き、西川氏を含めた関係者の社内処分の必要性を検討する。

 不当報酬は日産の内部調査で判明した。西川氏は数千万円を上乗せして受け取った疑いがある。会社法違反(特別背任)などの罪で起訴された前会長カルロス・ゴーン被告の事件からの信頼回復を進める中、西川氏にも規定違反の報酬があったことで、求心力に影響が出そうだ。

 西川氏は5日午前に東京都内で記者団の取材に応じ「本来の形とは違う(制度の)運用があった。差額がある」と述べた。一方で「手続きはきちんとやってもらっていると思っていた。ゴーン体制時代の仕組みの1つだ」とも強調した。不当報酬の責任を、ゴーン被告やその側近に押しつけたと捉えられかねず、西川氏の姿勢には批判も出そうだ。

 ゴーン被告の弁護人の弘中惇一郎弁護士は5日午後、報道陣に「日産はゴーン氏に対する社内調査の時点で、西川氏の不正も分かっていたはずだ。西川氏を見逃してゴーン氏だけを狙い撃ちにした」と批判した。

 問題となっているのは、株価連動報酬の権利「ストック・アプリシエーション権(SAR)」と呼ばれるもので、株価があらかじめ決められた水準を超えた時に権利行使すると、差額を受け取ることができる。

 金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴された元取締役のグレゴリー・ケリー被告が月刊文芸春秋のインタビューで、西川氏が2013年5月にSARを行使する際、権利の行使日をずらし約4700万円多く利益を得たと主張。東京都の男性は今年7月、法令違反に当たるとして東京地検特捜部に告発状を郵送していた。(共同)