【ブータン】:薬物が汚染する「幸せの国」将来不安な若者増加
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【ブータン】:薬物が汚染する「幸せの国」将来不安な若者増加
「幸せの国」として知られるヒマラヤ山脈の小国ブータンで若者の薬物汚染が深刻だ。都市部への急速な人口流入による失業率の上昇や家族関係の希薄化などが背景にあるとみられる。政府は国を挙げて対策に取り組むが、効果は上がっていない。

薬物などの乱用防止を呼びかける看板。政府が国内のあちこちに掲げている(首都ティンプーで)=田尾茂樹撮影
「将来への漠然とした不安で薬に逃げていた」。パロ近郊にある2階建ての建物。薬物やアルコール依存症の克服を目指す地元NGO運営のリハビリ施設で、ソナム・タシさん(20)がつぶやいた。

ブータン西部パロ近郊のリハビリ施設で入所者のカウンセリングにあたるウォンディさん=田尾茂樹撮影
13歳で大麻を覚えた。友人に誘われるまま、好奇心で始めたが、「吸えば何もかも忘れて気持ちよくなり、やめられなくなった」。
ブータンでは大麻があちこちに自生しているのに加え、鎮痛剤として隣国インドから薬物が大量に密輸され、1錠50ヌルタム(約80円)程度で簡単に手に入るという。
6年以上、大麻などを使い続けたタシさんは今年6月、学校での使用が見つかり、校長に入所を勧められた。16~62歳の男性約20人が共同生活を送る施設でカウンセリングを受け、入所者同士で体験を話し合ったり、瞑想めいそうで自己を振り返ったりしながら、社会復帰を目指している。
1999年にテレビ放送とインターネットが解禁されたブータンでは、情報や流行を追い求め、首都ティンプーに移り住む若者が急増した。教育は無料で大学への進学者も増えた。
だが、高等教育を受けた若者が望む公務員などの安定した職は限られている。都市部での20歳代前半の失業率は男性が14%、女性が20%と、全国平均の2・4%をはるかに上回っており、若者の不安は大きい。
都市部では離婚率も高く、親が十分に子供を顧みないことも薬物汚染が広がる一因とみられている。
元稿:讀賣新聞社 主要ニュース 国際 【アジア・ブータン】 2018年12月18日 07:45:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。