【社説①・03.05】:新年度予算案衆院通過 「責任ある熟議」程遠い
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①・03.05】:新年度予算案衆院通過 「責任ある熟議」程遠い
2025年度政府予算案が衆院を通過した。当初予算案が国会で修正されるのは、1996年の橋本龍太郎内閣以来29年ぶりのことである。さらに減額修正となると55年の鳩山一郎内閣以来70年ぶり。昨秋の衆院選で大敗し、少数与党に転落した石破茂政権にとって野党の協力なくして予算は成立させられない。修正は織り込み済みともいえる。
前半国会の最大の関門ともいわれた予算案が何とか衆院通過に至ったのは、政権与党の自民、公明両党が、予算に賛成してもらうことと引き換えに、高校授業料無償化など日本維新の会の要求をのんだためである。予算審議は国の運営に関わる重要な議論の場である。にもかかわらず、一部野党と取引をするようなやり方では、熟議を果たしたとはいえない。
修正された予算案には、3党が合意した高校授業料無償化の先行措置として、25年度から国公私立の全世帯に年11万8800円を支給する費用などが盛り込まれた。所得税が生じる「年収103万円の壁」の引き上げについても、与党は国民民主との協議を通じて課税水準を160万円まで引き上げる方針を決め、非課税枠を当初の政府案よりも広げた。制度はより複雑になったものの、与党が過半数を占めていたときには、日の目を見ることがなかった野党の声が反映されるようになった側面はあろう。
自民1強時代に強引に推し進められてきた政策を見直すには良い機会であるともいえる。政府と与野党がそれぞれの主張を闘わせ、一致点を見いだすのが、国会の本来あるべき姿である。
だが、これまでに浮き彫りになったのは、予算案を通すために数合わせを求め、維新や国民民主にすり寄る与党のなりふり構わぬ姿勢である。
政権は国会での論戦よりも、個別の政党間協議を優先し、維新、国民民主それぞれに迫るような戦術を取った。いずれかと合意すれば衆院の過半数を確保できるからである。「数の論理」を優先するあまり、肝心の中身が生煮えのままである。
野党の方も責任重大だ。今夏の参院選をにらんで自らの「手柄」を得ることに注力していないか。個々の政策を掘り下げるよりも、予算案への賛否を切り札に駆け引きばかりしているように見える。
少数与党に乗じて、野党がてんでに予算成立と引き換えに自らの政策の実現を要求するようになれば、予算も膨張の一途をたどる。将来の国民の負担にも関わる財源確保のための議論も欠かせない。
裏金問題に加え、高額療養費の負担引き上げを巡って反発を強めている立憲民主党は、もっと存在感を発揮すべきだ。野党第1党として、後半国会では、論戦をリードしてほしい。
予算案は衆院を通過したものの、参院での審議が控えている。年度末が迫るが、問題を積み残したまま採決を急ぐようなことがあってはならない。「良識の府」こそ石破首相がいうところの「責任ある熟議」の見せどころである。
元稿:中國新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月05日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。