路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説】:こども家庭庁/社会全体で支える政策を

2022-03-28 06:00:05 | 【中央省庁・内閣府・1府11省2庁・主任の大臣・事務次官・官房・審議官・国...

【社説】:こども家庭庁/社会全体で支える政策を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:こども家庭庁/社会全体で支える政策を 

 政府は、「こども家庭庁」を2023年4月に創設する法案を国会に提出した。

 この新しい組織は、子どもがもっと生きやすく、子育てがしやすい社会の実現に向け、関連政策を一元的に担う司令塔になるという。首相直属機関で内閣府の外局とし、民間の人材を登用して300人超体制でのスタートを目指す。

 掲げられた目的は理解できるが、実効性ある取り組みとするには問題が多い。設置ありきとせず、徹底的に法案の内容を審議すべきだ。

 岸田文雄首相は菅前政権からこども庁構想を引き継ぎ、「子ども目線に立って縦割り行政をなくす」と述べてきた。ところが法案で示された組織は、縦割り解消にはほど遠く、政権の本気度が疑われる。

 保育所や虐待防止を担当する厚生労働省の部署と、子どもの貧困や少子化対策を受け持つ内閣府の部署は、こども家庭庁に移る。

 一方、幼稚園や義務教育、いじめ対策は引き続き文部科学省が担う。権限の移管に文科省が反対したためだ。共働き世帯が増える中、保育所と幼稚園の垣根を取り払う「幼保一元化」の必要性が叫ばれてきた。にもかかわらず、この機会に実現しなかったのは残念と言うしかない。今後も検討を続けてもらいたい。

 こども家庭庁の担当大臣は他省庁に政策の是正を求める「勧告権」を持つが、強制力はない。責任の所在があいまいなままで、司令塔の役割を果たせるのか疑問が残る。

 肝心の財源確保策もはっきりしない。日本の子育て関連予算は欧米と比べて低水準にあり、政府の子ども政策の有識者会議は思い切った財源投入を求めている。次世代に負担を先送りしないよう、社会保障や税制を踏まえた議論が不可欠だ。 

 こども家庭庁の設置と併せ、急がれるのは、子ども政策の基盤となる基本法の制定だ。子どもの権利を保障し、政策に子どもや若者の声を取り入れる仕組みが求められる。

 基本法案では、虐待やいじめなどについて調査、勧告する第三者機関「子どもコミッショナー」の新設が検討されている。英国やノルウェーに先例がある。子どもの多くは権利侵害を自ら訴えるのが難しい。自民党の一部議員は反発するが、行政から独立し、権限を持つ組織の重要性は高いといえる。

 「今こそ、子ども政策を強力に推進し、少子化を食い止める」。こども家庭庁創設の基本方針は、こう記す。子育てを家族だけの責任にするのではなく、社会全体で支えるという共通認識を広げて政策に反映させることで、次世代の健やかな成長を後押しする必要がある。

 元稿:神戸新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年03月23日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:復興庁10年 防災も含めた新組織に

2022-03-01 06:53:35 | 【中央省庁・内閣府・1府11省2庁・主任の大臣・事務次官・官房・審議官・国...

【社説】:復興庁10年 防災も含めた新組織に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:復興庁10年 防災も含めた新組織に 

 来月11日で東日本大震災から11年。被災地のインフラ復旧や生活支援のために設置された復興庁は今月、10年を迎えた。

 巨額の事業費を投じたこともあり、インフラ整備はほぼ一段落したといえそうだ。一方、生活を立て直せないでいる被災者は今も少なくない。東京電力の福島第1原発事故によって、避難生活を強いられたままの住民もいる。きめ細かな支援が今後も求められる。

 東日本大震災の後も毎年のように、国内のどこかで大規模な自然災害が発生している。南海トラフ巨大地震や首都直下地震は近い将来、発生が確実視されており、被災する地域や規模なども予想、算出されている。

 どんな防災対策を取り、発生時にはどう対応し、被災地をいかに支えるのか。備えに役立てるためにも、復興庁の10年にわたる成果とともに課題を検証しなければならない。

 三陸沿岸道路の開通や常磐線の全線復旧をはじめ、防潮堤の築造、災害公営住宅の建設…。岩手、宮城、福島の被災地3県では大規模なインフラ整備工事が進み、完了してきた。

 その中で、復興庁は地元自治体の要望などをワンストップで受け付ける「政府の窓口」となってきた。東京の霞が関まで出向かなくても、3県に置かれた復興局に行けば、復興庁が関係省庁と調整して対応した。被災自治体の負担軽減にもつながっており、評価できる。

 一方で、課題もある。かさ上げして高台に造成した大規模な宅地の中には、住民が戻らず、空き地の目立つ地区も少なくない。事業に着手してからも住民の意向を十分に把握、調整していれば、過剰な事業とならなかったのではないか。

 また、コミュニティーの再生や被災住民の医療、心のケアなどは、ワンストップで十分に対応し得たといえまい。避難生活の長期化などによる震災関連死は既に3700人を超す。

 原発事故の処理も見通せないままである。産業への影響は福島県だけに限らない。放射性物質を含んだ処理水の海洋放出も来年予定され、引き続き風評被害への対応が求められよう。廃炉と地域再生へ、福島で果たすべき役割は、今後数十年にわたるに違いない。

 復興庁は法律上、東日本大震災にしか対応することができない。しかし、予想される南海トラフ巨大地震が起きてから、新たに「復興庁」を設けるといった対応でいいはずがない。

 この10年間にも、震度7を記録した熊本地震や西日本豪雨など、大規模な災害に見舞われてきた。いずれの場合も、復興庁が蓄積してきたノウハウを十分に生かせてこなかった。被災した自治体からは、ワンストップでの対応を求める声が強かった。全国知事会も、防災と復興の両方を推進する「防災省」の創設を提言している。

 私たちは、いつ自然災害に見舞われるか、知れない。国民の防災意識を高めながら、避難計画や復興プランを用意しておく。そして発災後には素早く動き、住民ニーズに沿って復興を進めていく―。そのような組織が求められる。

 10年間に得られた復興庁の教訓を生かし、機能を拡充した新たな組織の創設を一刻も早く、検討すべきときである。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年02月27日  06:59:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政府】:こども家庭庁、23年4月創設 首相直属、法案決定

2022-02-25 20:23:30 | 【中央省庁・内閣府・1府11省2庁・主任の大臣・事務次官・官房・審議官・国...

【政府】:こども家庭庁、23年4月創設 首相直属、法案決定

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政府】:こども家庭庁、23年4月創設 首相直属、法案決定 

 政府は25日、子ども政策の司令塔「こども家庭庁」を2023年4月に創設する法案を閣議決定した。新型コロナウイルス禍で虐待や貧困、少子化といった問題が深刻化しており、省庁の縦割りを解消し一元的に対応する狙いがある。今国会での成立を目指す。

 こども家庭庁のイメージ

 こども家庭庁のイメージ

 首相直属機関で、内閣府の外局として設置。他省庁に政策の是正を求めることができる「勧告権」を持つ担当閣僚を置く。担当閣僚は、省庁の対応が不十分との意見を首相に述べられる。

 厚生労働省や内閣府から、子どもや子育てに関わる主な部署を移す。幼稚園、小中学校の教育分野は文部科学省が引き続き担う。

 元稿:中國新聞社 主要ニュース 政治 【政策・子ども政策の司令塔「こども家庭庁」】  2022年02月25日  20:23:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:公立校の教員不足 人材確保し、学びを守れ

2022-02-14 06:10:15 | 【中央省庁・内閣府・1府11省2庁・主任の大臣・事務次官・官房・審議官・国...

【社説】:公立校の教員不足 人材確保し、学びを守れ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:公立校の教員不足 人材確保し、学びを守れ 

 公立の小中高校や特別支援学校で欠員が生じても、すぐには埋められない―。そんな実態が文部科学省による初めての教員不足調査で明らかになった。

 教員の不足が学校運営に支障を来せば、しわ寄せを受けるのは子どもたちである。文科省や教育委員会は、早急に人材を確保して、子どもの学びを保障しなくてはいけない。

 調査は68の都道府県・政令市教委などに実施した。それによると、昨年4月の始業日時点で全体の5・8%に当たる1897校で、2558人が足りなかった。中国5県では56校で119人が不足していた。

 調査では、教員不足の理由をアンケート形式で尋ねている。それによれば「産育休の取得者が見込みより増加」「病休者数が増加」「特別支援学級数が増加」を選んだ教委が目立った。

 クラス担任がしばしば入れ替わる影響だろうか、子どもの落ち着きのなさが目立つといった事例もあるようだ。担任が足りず、校長や教頭らがカバーする例もあるという。学習面や精神面への影響が心配される。

 教員不足の一因として、学校が過酷な職場だとの認識が広まり、志望者が減ったことを挙げる意見は少なくない。実際、教員採用試験の受験者は減少傾向にある。とりわけ小学校では2021年度採用の競争率が全国平均で2・6倍と、過去最低となった。

 志望者が減っている大きな要因と指摘されるのが、学校現場の長時間労働である。小学校での英語の教科化やパソコン授業、中学での部活指導などが、教員の負担の代表格として挙げられている。

 一昨年からは新型コロナウイルス対策として、消毒作業やオンライン対応といった業務も加わり、現場の負担はさらに増えている。22年度からは小学校高学年で教科担任制も導入される。このままでは教員不足に拍車が掛かる。業務の見直しをはじめ働き方改革が急務である。

 従来、欠員が出た場合などには、教員採用試験を目指す教員免許保有者たちを講師として、臨時採用して補ってきた。しかし近年は、多忙な教育現場が敬遠されているせいか、講師の確保も難しくなっているという。

 そもそも、教員不足を臨時採用の講師で埋めようとすること自体、目先の応急策でしかなかろう。学校現場では、元教員の活用など、さまざまな工夫がなされているものの、現場の努力だけでは限界があろう。

 放置できない状況であることは、文科省も認識しているようだ。公立学校教員の残業時間を規制する指針を設け、多忙化の要因ともされた教員免許更新制を廃止する方針も決めている。部活動の指導で外部人材を活用することや、タイムカード導入による労働時間管理などを模索する。しかし、それで十分ではあるまい。

 質を保ちつつ定員を増やす工夫など採用制度の見直しや、給与面など待遇も含めた労働環境の改善が欠かせない。

 教育現場の魅力を高め、良質な人材を集めることは、未来を担う子どもたちの学びを充実させるためにも重要である。文科省は今回の調査で浮き彫りになった事態を重く受け止め、実効性のある人材確保策に本腰を入れて取り組むべきだ。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年02月08日  06:58:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②》:不正防止策放置 統計軽視の体質変えねば

2022-02-07 09:31:08 | 【中央省庁・内閣府・1府11省2庁・主任の大臣・事務次官・官房・審議官・国...

《社説②》:不正防止策放置 統計軽視の体質変えねば

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:不正防止策放置 統計軽視の体質変えねば 

 統計に対する政府の意識変革がなければ、再発防止策も机上の空論である。

 2018年に発覚した厚生労働省の統計不正問題を受け、政府が20年6月に閣議決定した再発防止策だ。総務省が21年度から各府省に専門家を「統計監理官」として派遣し、統計の作成過程を監督することになっていた。

 それなのに、いまだに実施されていないことが分かった。

 厚労省の不正問題では、事業所の賃金や労働時間を把握する「毎月勤労統計」で、調査方法を不正に変更していた。国の基幹統計の一つで、政府の経済分析で労働経済の情勢を示す重要な指標だ。

 雇用保険や労災保険もこの統計を基に算出されており、延べ約2千万人の給付額が過少支給となった。国際的な信用にも関わり、極めて大きな影響を与えた。

 再発防止を徹底するべき問題だったはずである。総務省は実施が遅れている理由を「さまざまな要因」とし、新型コロナウイルス対応に伴う人員不足も理由に挙げている。統計業務に対する意識の低さの表れといえる。

 国土交通省の建設受注統計書き換え問題では、国交省の第三者委員会が、統計の軽視による担当部門の人員不足や、情報共有の不十分さが原因と認定している。

 政府は再発防止策を検討中で、国交省の作業部会も始まった。総務省の統計委員会と連携して結果をまとめる方針で、業務過多を解消するため、人員を増やすなどの態勢強化を検討する。

 岸田文雄首相は国会の代表質問などで、統計のデジタル化を急ぐことを表明している。

 さまざまな対策を打ち出したとしても、統計に対する政府の意識が変わらなければ、今回も絵に描いた餅に終わりかねない。

 毎月勤労者統計の不正を受けた対策では、「統計分析審査官」の新設も柱の一つだった。内閣官房が各省庁に派遣し、独立した立場で公表済みの統計の調査などを行う予定だった。

 国交省の第三者委員会の調査では、専門的な知識もない人員が係長相当で送り込まれ、全く機能していなかったことが分かっている。形だけの「対策」を繰り返してはならない。

 建設受注統計の問題では、書き換えの中止を上司に掛け合った職員もいたが黙殺され、うやむやになったことが分かっている。不正を隠す組織の体質も変えていくことが欠かせない。もう過ちを繰り返してはならない。

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 ニュースセレクト 社説・解説・コラム 【社説】  2022年02月03日  09:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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《社説②》:こども家庭庁 期待に応える実効性を

2022-02-04 09:30:08 | 【中央省庁・内閣府・1府11省2庁・主任の大臣・事務次官・官房・審議官・国...

《社説②》:こども家庭庁 期待に応える実効性を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:こども家庭庁 期待に応える実効性を 

 政府が今国会に「こども家庭庁」の設置法案を提出する。

 組織の概要は既に固まっている。政策の理念を定める「子ども基本法案」とともに、会期中の成立を目指す。新庁は2023年度に創設する方針だ。

 こども庁構想は、菅義偉前政権時に浮上した。いじめや虐待、貧困など、子どもを取り巻く深刻な問題は多岐にわたる。複数の省庁にまたがる政策を一元化し、対策を強力に進めるとした。

 当初は22年度の設置を見込んだため、検討作業は足早だった。なぜ新たな組織が要るのか。現行の省庁体制や政策の検証がおろそかになった面は否めない。

 省益を巡る駆け引きもあり、幼児教育や義務教育の権限は文部科学省に残し、新庁への移管を見送る「骨抜き」も見られた。

 新庁は首相直属の内閣府の外局とする。専任閣僚を置き、他省庁への勧告権を持つ。厚生労働省や内閣府の関係部署を移し、民間団体や自治体から登用する職員を含め300人規模で発足する。

 名称に「家庭」が付いたのは、自民党内で「子どもたちの育ちは家庭を基盤とする」との異論が出たためだ。夫婦別姓を認めないのと同様、旧来の家族観が背景にあるのか。社会全体で成長を支える主眼を忘れてはならない。

 日本は1994年に「子どもの権利条約」に批准しながら、対応する国内法を持たずにきた。ようやく具体化した基本法案には、権利保障の考え方、国や自治体の責務が盛られる見通しだ。

 独立機関として行政の政策を調査し、提言や勧告ができる「子どもコミッショナー」の設置が論点に挙がっている。ここでも、自民の議員から「権限が強すぎる」との意見が聞かれる。

 大人の視点だけで問題の解決を図るのではなく、子どもの思いを尊重し、代弁する仕組みだ。「子どもの権利」に対する理解を広める契機にもなるはずだ。

 岸田文雄首相は、子ども関連の予算を「倍増する」と言う。その時期も財源もはっきりしない。政府と国会が本腰を入れて取り組む姿勢を示し、負担のあり方を探る議論へとつなげたい。

 コロナ禍が追い打ちをかけ、食べ物にも事欠く窮状を訴える家庭が続出している。子どもたちの心身の不調や学習の遅れも目立つ。自殺や虐待が増えている。

 これまでの政策を丁寧に検証しつつ、大枠では同意する野党の提案も取り入れ、実効性の高い手厚い対策を実践してほしい。

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 ニュースセレクト 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月31日  09:30:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:統計不正で処分 幕引きは到底許されぬ

2022-02-01 07:46:40 | 【中央省庁・内閣府・1府11省2庁・主任の大臣・事務次官・官房・審議官・国...

【社説①】:統計不正で処分 幕引きは到底許されぬ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:統計不正で処分 幕引きは到底許されぬ 

 国土交通省の統計不正で同省次官のほか当時の担当幹部らの処分が決まった。基幹統計の書き換えであり処分は当然だ。ただ不正の動機など未解明な部分も多く問題の幕引きは到底許されない。
 
 処分は十四日に公表された第三者検証委員会による報告書の内容を受けた措置である。処分とは別に斉藤鉄夫国交相も給与などを自主返納する。
 
 不正があったのは国交省が毎月公表する「建設工事受注動態統計調査」だ。全国の建設業者の受注実態を詳細に把握するための調査で、政府は五十三ある基幹統計に指定して国内総生産(GDP)の算出にも活用している。
 
 報告書は不正が始まった時期について「二〇〇〇年以前から継続していた」などとし、一部職員がデータをめぐる不正に気づいて報告した後も上司が対応しなかったことを指摘した。これらが事実なら同省がデータに向き合う姿勢は長期間にわたり根元から腐敗していたことになり、同省が所管するすべての統計について徹底的に調査し直す必要がある。
 
 さらに不正は会計検査院が指摘した後の二一年三月まで継続していた。一八年には厚生労働省の毎月勤労統計をめぐる不正が発覚し、政府は国の統計全体を再調査したはずだ。
 
 報告書は国交省が内外の指摘を無視した上、国の調査をくぐり抜け不正を続けた理由や、誰がどのような動機で始めたのかについて明確な結論を出していない。
 
 GDPに関しても「統計的に大きな数字を公表する作為的な意図はなかった」としたが、これも納得できない。報告書は三週間の資料分析と聴取でまとめられたが、短い調査で複雑な計算式によりはじき出されるGDPへの影響を正確に把握するには無理がある。
 
 GDPへの疑義は金融市場を中心とした国際社会における日本の信用を失墜させかねない。今回の調査は明らかに不十分だ。第三者委は調査を継続し、より詳細な報告書をつくるべきだ。
 
 今回の問題は統計法などに抵触する可能性があり関係者の刑事告発を視野に入れるレベルの不正。基幹統計に虚偽があれば多くの政策が立案根拠を失う恐れもある。
 
 調査継続と並行して、通常国会でも予算委員会などで集中してこの問題を取り上げ、真相究明を図るべきである。 

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月22日  07:52:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:統計不正で処分 幕引きは到底許されぬ

2022-01-22 07:52:55 | 【中央省庁・内閣府・1府11省2庁・主任の大臣・事務次官・官房・審議官・国...

【社説①】:統計不正で処分 幕引きは到底許されぬ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:統計不正で処分 幕引きは到底許されぬ 

 国土交通省の統計不正で同省次官のほか当時の担当幹部らの処分が決まった。基幹統計の書き換えであり処分は当然だ。ただ不正の動機など未解明な部分も多く問題の幕引きは到底許されない。
 
 処分は十四日に公表された第三者検証委員会による報告書の内容を受けた措置である。処分とは別に斉藤鉄夫国交相も給与などを自主返納する。
 
 不正があったのは国交省が毎月公表する「建設工事受注動態統計調査」だ。全国の建設業者の受注実態を詳細に把握するための調査で、政府は五十三ある基幹統計に指定して国内総生産(GDP)の算出にも活用している。
 
 報告書は不正が始まった時期について「二〇〇〇年以前から継続していた」などとし、一部職員がデータをめぐる不正に気づいて報告した後も上司が対応しなかったことを指摘した。これらが事実なら同省がデータに向き合う姿勢は長期間にわたり根元から腐敗していたことになり、同省が所管するすべての統計について徹底的に調査し直す必要がある。
 
 さらに不正は会計検査院が指摘した後の二一年三月まで継続していた。一八年には厚生労働省の毎月勤労統計をめぐる不正が発覚し、政府は国の統計全体を再調査したはずだ。
 
 報告書は国交省が内外の指摘を無視した上、国の調査をくぐり抜け不正を続けた理由や、誰がどのような動機で始めたのかについて明確な結論を出していない。
 
 GDPに関しても「統計的に大きな数字を公表する作為的な意図はなかった」としたが、これも納得できない。報告書は三週間の資料分析と聴取でまとめられたが、短い調査で複雑な計算式によりはじき出されるGDPへの影響を正確に把握するには無理がある。
 
 GDPへの疑義は金融市場を中心とした国際社会における日本の信用を失墜させかねない。今回の調査は明らかに不十分だ。第三者委は調査を継続し、より詳細な報告書をつくるべきだ。
 
 今回の問題は統計法などに抵触する可能性があり関係者の刑事告発を視野に入れるレベルの不正。基幹統計に虚偽があれば多くの政策が立案根拠を失う恐れもある。
 
 調査継続と並行して、通常国会でも予算委員会などで集中してこの問題を取り上げ、真相究明を図るべきである。 

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月22日  07:52:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【総務省統計委】:再発防止を検討 建設受注書き換え問題

2022-01-19 10:52:30 | 【中央省庁・内閣府・1府11省2庁・主任の大臣・事務次官・官房・審議官・国...

【総務省統計委】:再発防止を検討 建設受注書き換え問題

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【総務省統計委】:再発防止を検討 建設受注書き換え問題 

 国土交通省による建設受注統計の書き換え問題に関する総務省統計委員会の会合が19日開かれ、オンラインで参加した金子恭之総務相は「信頼性向上の取り組みを早急に進めることが重要」として、再発防止策の検討を要請した。統計委は国交省の業務体制や、政府の他の基幹統計の集計などについても実態を精査、政府全体で取り組むべき対応をまとめる。
 会合では、国交省担当者が第三者委員会の検証報告書や今後の対応を説明。国交省は21年4月にも建設受注統計の推計方法を変更、従来より受注高が膨らむ結果になっており、統計委はこの方式の妥当性も検証する。(共同通信)

 元稿:東京新聞社 主要ニュース 政治 【政策・国土交通省による建設受注統計の書き換え問題に関する総務省統計委員会】  2022年01月19日  10:52:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:国交省統計不正報告書 事なかれ主義改めねば

2022-01-18 06:44:45 | 【中央省庁・内閣府・1府11省2庁・主任の大臣・事務次官・官房・審議官・国...

【社説】:国交省統計不正報告書 事なかれ主義改めねば

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:国交省統計不正報告書 事なかれ主義改めねば 

 国土交通省所管の「建設工事受注動態統計」の不正を巡り、外部の第三者委員会が検証結果を報告書にまとめ、斉藤鉄夫国交相に提出した。

 昨年末に明るみに出た、数字の書き換えや二重計上に加え、不正を公表してこなかった組織の事後対応の不誠実ぶりも、報告書は問題点として挙げた。職員間の証言の食い違いや、発覚逃れとしか思えない対応があったことも指摘している。

 第三者委が短期間で結果をまとめた点は成果と言えよう。ただ国内総生産(GDP)算出に及ぼす影響などは明らかにされず、積み残された。報告書だけでは到底、幕引きはできない。

 省庁自らの政策根拠や、国民の公共財となる公的統計の不正である。行政の信頼を失うばかりか、民間の経済活動を誤らせることにもなりかねない。政府はさらに全容解明を進めなければならない。

 この統計は、国交省が全国の建設業者約1万2千社から調査票を都道府県経由で受け取り、業界の受注実績の基礎資料としている。数カ月分の実績をまとめて出す業者も多く、この場合は、数カ月分を最新の1カ月分として数字を書き換えていた。

 当月分以外の数字を消しゴムで消し、合算するように国交省が都道府県職員に指示していたという。あきれるばかりだ。

 さらに業者の回答のない月は勝手に推計した金額を書き込んでいた。その結果、推計値も合算されてしまう二重計上が起きて、数字が過大になっていた。

 報告書は、国交省による書き換えが長期間にわたり、二重計上も2013年から続いていたとした。しかし不正は公表も改められもせず、会計検査院が書き換えに気づいた19年11月以降も一部は不正を続けていた。

 公表した上で修正をする機会はいくらでもあった。にもかかわらず、意図的に沈黙を続けていたことは隠蔽(いんぺい)と批判されても仕方なかろう。役人の使命感や責任感はどこに行ったのか。厳正な処分が必要だ。

 現場は課長、室長、企画専門官、課長補佐、係長、係員からなる6人前後の組織だ。室長など管理職は1~2年で、中には2カ月で異動したケースもあった。「腰掛け」に近い幹部職員について「責任追及を回避したい意識があった」と報告書は指摘している。まさに「事なかれ主義」の極みと言える。そうした悪弊は改めねばならない。

 現場は小さい組織なのに業務内容の把握は課長補佐までで、それより上には実務が報告されていなかった。にわかに信じがたい。わずか数人の部下の業務内容を把握しない上司など、民間企業ではあり得ない。

 18年には厚生労働省の「毎月勤労統計」でも集計の不正が明るみに出ている。「建設工事受注動態統計」や「毎月勤労統計」は民間も幅広く活用する国の基幹統計である。統計の信頼性が損なわれては、企業活動や研究者の調査にも影響を及ぼす。その重みを政府はどれだけ認識していたのだろうか。

 統計や決裁文書を役人が自らの都合で書き換えることは国民への背信だ。こうした不正の根絶を目指さねばならない。

 きょうから通常国会が始まる。統計不正の事実関係究明と、厳しい責任追及が、議員には求められている。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月17日  06:44:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

 

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【社説①】:統計不正報告書 国会で真相究明必要だ

2022-01-15 05:05:55 | 【中央省庁・内閣府・1府11省2庁・主任の大臣・事務次官・官房・審議官・国...

【社説①】:統計不正報告書 国会で真相究明必要だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:統計不正報告書 国会で真相究明必要だ 

 国土交通省所管の建設工事受注動態統計の不正を巡り、外部弁護士らでつくる同省の第三者委員会がきのう、検証報告書を斉藤鉄夫国交相に提出した。

 不正の原因について、担当者の業務過多や幹部職員の現場任せなどにあると指摘した。

 職員間で証言が一部食い違っているほか、数値を是正する際などに隠蔽(いんぺい)工作とも受けとれる対応も判明した。しかし、より詳しい調査を行っていない。

 報告書は約3週間でまとめられた。17日の通常国会召集を前に、事態の早期収拾を図ろうとする岸田文雄政権の思惑も透ける。

 政策は統計の正確な数値に基づいて決めるものだ。だが国交省は会計検査院から指摘を受けても不正を一部続け、公表しなかった。

 統計を操作しても良いとする倫理観と責任感の著しい欠如と言える。行政全体の信頼を損いかねない深刻な事態であり、国会で真相を徹底的に究明すべきだ。

 報告書は数値の書き換えと合算処理について、この統計が始まった2000年より前の前身の統計から行われていたとした。

 13年4月に始まった受注実績の二重計上は、担当者が疑問を持たずに作業していたことが直接的な原因と記した。19年4月に着任した課長補佐が問題視するまで、誰も気づかなかったという。

 不正を当時知らなかったという幹部も多い。原因は現場との情報の分断などと結論づけた。

 だが管理職が打ち合わせで合算処理の話題が出た際にけげんな表情を見せたり、書き換えを説明する会議に出席したりしていたことが報告書で明らかになった。

 上司に相談したという係長の証言もある。管理職が不正を認識していながら、知らぬふりをしていたとの疑念は拭えない。

 政権の経済政策の成果を示すために二重計上を行ったのではないかという野党などの指摘について、報告書はその意図は確認できないとした。

 不正が法令違反に当たるかどうかについては言及しなかった。

 国内総生産(GDP)などに与えた影響も調査事項ではないとして触れず、明らかになっていない点は多い。

 現場が人手不足の上、担当者に専門知識が不足していることも不正の背景と報告書は指摘しており、現場の疲弊も深刻だ。

 国会は不正の全貌を解明し、統計を担う体制の抜本改革を議論していく責任がある。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月15日  05:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:[こども家庭庁]財源確保し支援拡充を

2022-01-10 07:03:20 | 【中央省庁・内閣府・1府11省2庁・主任の大臣・事務次官・官房・審議官・国...

【社説】:[こども家庭庁]財源確保し支援拡充を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:[こども家庭庁]財源確保し支援拡充を 

 「子どもファースト」の行政へ向けて、さらに議論を深める必要がある。

 政府が閣議決定した「こども家庭庁」の基本方針は、子ども関連政策の司令塔となる新たな行政組織の具体像を定めたものだ。

 首相直属機関と位置付け、内閣府の外局とする。他省庁への「勧告権」を持つ閣僚を置くことなどが柱となる。2023年度のできる限り早期の創設を目指し、通常国会に関連法案を提出する。

 いじめや不登校、虐待、自殺、貧困、待機児童、障がい児教育など子どもに関わる課題は多岐にわたる。

 問題は複雑・深刻化しており、より迅速で細やかな対応が求められている。

 子ども政策を一元的に担う組織の新設は、政治の重要課題に位置付けられた表れであり歓迎したい。ただ、抜本的な組織改革とは言い難い。

 新たな組織には、厚生労働省の児童虐待防止や保育所を担う部署、内閣府の少子化や子どもの貧困などの対策を担当する部署が移される。

 一方で教育行政は引き続き文部科学省が担う。議論の当初は幼稚園や小中学校の権限ごと移す大規模再編案もあったが、文科省や自民党内の慎重論もあり後退した。結果として保育所と幼稚園の所管は異なったままだ。

 担当閣僚に勧告権を与えるのは「縦割り行政」の弊害を払拭(ふっしょく)する狙いがあるのだろう。

 他省庁に政策の是正を勧告し、報告を求める権限を持たせる。対応が不十分な場合は首相に意見具申ができるという。だが勧告に強制力はなく実効性は見通せない。

■    ■

 新たな組織が政策遂行力を高められるか、鍵を握るのは十分な予算と人員の確保だ。

 政府は、厚労省と内閣府から移管される人員を大幅に超える300人規模での発足を目指している。NPO法人などの民間人材らを積極的に登用する考えだ。

 困難を抱える子どもたちの支援は民間が先行している面もある。制度からこぼれ落ちる子が出ないように政策を充実させてほしい。

 不安を感じるのは予算面だ。基本方針は安定財源の確保に努めるとしているが具体性に欠ける。

 コロナ禍で子どもたちを取り巻く環境は厳しくなり支援の強化は待ったなしだ。

 日本は子育てなどを公費で支援する家族関係社会支出の対国内総生産比が、英国などに比べて低い。政府の子ども関連政策の有識者会議も積極的な財源投入を求めている。

 岸田文雄首相は具体的な財源の目標を示すべきだ。

■    ■

 組織名は当初「こども庁」だった。こども家庭庁になったのは自民党などからの「子どもの育ちは家庭が基盤」との意見を踏まえたものだ。

 家庭の役割が強調されることで、社会全体で子どもを支えるとの認識が薄らぎはしないか気に掛かる。

 有識者会議の報告書は全ての子ども政策の基盤となる「こども基本法(仮称)」制定の検討を訴えている。子どもの権利保障を前に進めるため踏み込んだ議論を求めたい。

 元稿:沖縄タイムス社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年01月08日  08:39:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:年のはじめに考える 官僚たちの劣化を問う

2022-01-06 07:47:30 | 【中央省庁・内閣府・1府11省2庁・主任の大臣・事務次官・官房・審議官・国...

【社説①】:年のはじめに考える 官僚たちの劣化を問う

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:年のはじめに考える 官僚たちの劣化を問う 

 「官僚は劣化しています」。昨年、最も衝撃的だったひと言です。オンラインによる弊紙主催「ニュース深掘り講座」に聞き手として出演した際、講師の前川喜平氏が発した言葉です。元文部科学事務次官の発言であり、あまりの説得力にたじろぎました。
 
 
 一九九〇年代、財務省(旧大蔵省)を担当しました。「大物事務次官」と言われた大蔵省OBと話をした時のことです。彼は現職次官を「嫌いだった。部屋にくるのも嫌だった」と酷評しました。
 
 ところがその次官を出世させたのもこのOBでした。「国に必要な人物だから」が理由でした。優秀な人物は公正に評価する。当たり前の人事が行われていた時代だったのかもしれません。
 
 当時を思い返すと今、官僚の劣化が進んでいるのなら原因は人事にあるのではとの疑問が浮かびます。優秀な人物が相応のポストに就けなくなったのではないか。

 ◆原因は内閣人事局に?

 内閣人事局。二〇一四年、安倍政権が設置した組織です。霞が関=写真=の各省庁をめぐっては、省益優先の姿勢や縦割り行政の弊害が指摘されてきました。官僚の人事を官邸が一元管理することで、政治主導を実現するのが内閣人事局の最大の目的です。
 
 だがこの組織の出現が人事を振りかざした過度な官邸主導を生み、忖度(そんたく)の温床となって官僚の劣化につながった。そんな批判が相次ぐようになりました。
 
 この批判には共感せざるを得ない。だが内閣人事局だけがすべての元凶なのかとも思います。
 
 各省庁の省益優先の姿勢は予算編成をみても依然顕著です。具体的な金額を明示しない概算段階での事項要求や国会でのチェックの緩い補正を使い分け、より多くの予算獲得を目指します。コロナ禍対策の名の下に実際は関係の薄い予算も織り交ぜて要求します。
 
 昨年十一月、政府が海外からの入国禁止を打ち出した際、国土交通省が独断で帰国便の予約のない日本人の入国禁止を航空会社に要請しました。これでは多くの日本人の出張者や海外在住者が母国に戻れなくなります。
 
 救援機を出すならともかく帰国禁止はあり得ない。措置は撤回されましたが、この事態は政府内で意思統一が欠けていたことが原因と考えられています。背景にあるのは依然残る縦割りの弊害です。
 
 この間、一部の航空会社では予約がない日本人を何とか帰国させる算段を練っていたといいます。実にまともな感覚です。この一連の経緯を踏まえ、前川氏のいう「劣化」は「やはり本当か」と暗い気分になりました。
 
 感染が広がる中での厚生労働省職員の宴会、持続化給付金を悪用した経済産業省職員の詐欺事件、国交省の統計書き換え、忘れてはならない森友問題の公文書改ざんをめぐる財務省職員の非業の死。

 ◆国民の役に立ちたい

 「劣化」という言葉でさえ不十分な、官僚組織の「病根」を感じる問題は次々と起きています。
 
 政権と官僚機構の間には、指揮者とオーケストラの関係に似た構造があると思います。大指揮者、カラヤンがベルリン・フィルを追われた最大の原因はクラリネット奏者の採用をめぐる団員との確執でした。採用に固執したカラヤンと団員の関係は悪化します。偉大な指揮者でさえ意思の疎通を欠けば躓(つまず)いてしまうのです。
 
 ただ、その後カラヤンはウィーン・フィルとの関係を深め、至高の名演を繰り広げます。芸術とは無関係な争いから解放されたカラヤンが真に求めていた音楽がそこにあったと感じています。
 
 官僚たちは何を求めてその職を選んだのか。一人一人表現は違っていても「国民の役に立ちたい」という初心は持っていたはずです。その思いは内閣人事局というフィルターを通しただけで霞(かす)んでしまうのでしょうか。
 
 コロナ禍対策にしても官僚組織抜きには成り立ちません。代わりはいないのです。官僚は大きな仕事ができます。国のグランドデザインを作成できるのです。もちろん官僚を使いこなすのは国民の負託を受けた政権であり政治家です。官僚を統治する政治家、それを受け止める官僚たち。その間に生じたいびつな関係や率直な議論ができない空気感が、さまざまな問題の元凶だと考えます。
 
 民主主義を動かす「基本ソフト(OS)」ともいうべき政治家と官僚のあり方を深掘りする一年にしたいと強く思っています。 

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2022年01月04日  07:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【国交省】:ご当地ナンバー要件緩和へ 軽自動車の台数算入

2022-01-04 07:32:30 | 【中央省庁・内閣府・1府11省2庁・主任の大臣・事務次官・官房・審議官・国...

【国交省】:ご当地ナンバー要件緩和へ 軽自動車の台数算入

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【国交省】:ご当地ナンバー要件緩和へ 軽自動車の台数算入 

 国土交通省は、自動車用ナンバープレートに独自の地名を表示する「ご当地ナンバー」の導入要件を緩和する方針だ。地域が希望しても普通車などの台数が基準に達しないと、認められないためだ。地方部に所有者の多い軽自動車の台数を新たに算入する基準を検討しており、有識者委員会で決めた上で2022年度に募集を始める。

 ご当地ナンバーは地域・観光振興が目的。06年以降「知床」「仙台」「倉敷」など46地域に広がっている。導入は普通車、トラックなど登録自動車の台数が「対象地域に10万台超」か「複数市区町村にまたがる著名な観光地などで5万台超」を要件としている。発行枚数が少ないと交付コストが増えることが理由だ。

 ただ、国交省の自治体アンケートでは「人口の多い地域を優遇する基準で、観光振興が本当に必要な地域で利用できない」といった声があった。地方部は軽自動車の保有率が高く、軽自動車もご当地ナンバーの対象で、国交省は軽の台数を含む基準に改める方向だ。

 ご当地ナンバーを導入する場合、希望者には景勝地、特産品などの図柄入りナンバープレートを交付する。複数市町村にまたがる地域は図柄選定に時間がかかることもあり、都道府県が協議を主導する仕組みをつくる。

 図柄入りプレートは地名を変えなくても採用できるが、導入地域によって普及率に差があり、事前に需要を調べるよう希望自治体に義務付けることなども検討する。

 ◆ご当地ナンバー

 自動車のナンバープレートは管轄する運輸支局の名称などを表示するのが原則だが、2006年から新たな地域名表示を可能にした。対象地域の全自動車に適用し、新車登録や引っ越しの際などに交付、旧地名は選べない。18年には、地域をPRするデザインの図柄入りナンバープレートも開始。ご当地ナンバーを新たに導入する場合は図柄入りと組み合わせることになった。図柄入りは希望者のみで、7000~9000円程度の手数料を払えばモノトーン版、さらに1000円以上を寄付するとカラー版が交付される。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・国交省】  2022年01月04日  07:32:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:こども家庭庁 「器」の中身まだ見えぬ/12.23

2021-12-23 06:42:30 | 【中央省庁・内閣府・1府11省2庁・主任の大臣・事務次官・官房・審議官・国...

【社説】:こども家庭庁 「器」の中身まだ見えぬ/12.23

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:こども家庭庁 「器」の中身まだ見えぬ/12.23 

 政府は、子ども関連施策の司令塔となる「こども家庭庁」の基本方針を閣議決定した。創設は2023年度のできるだけ早い時期を目指し、来年の通常国会に設置法案を提出する。

 未来を担う子どものための政策に力を入れる必要性は、誰もが認めるところだろう。ただ、政府は「縦割り行政」の解消を掲げていたのに教育分野は引き続き文部科学省が担う。

 新しい「器」で何がどう変わり、子どもの利益となるのか、まだまだ見えないことが多い。中身についての踏み込んだ議論を急ぐべきだ。

 司令塔役に欠かせないのが、権限だろう。基本方針によれば、首相直属の内閣府の外局とし、各省庁への勧告権を持つ専任閣僚を置く。厚生労働省や内閣府などの子どもに関係する部署を新組織に移す一方、幼稚園や学校など、教育に関する権限は文科省に残し、中途半端な組織改編になる印象だ。

 子ども関連施策は多岐にわたり、担う官庁も幅広い。例えば現状では就学前の子どもが通う保育園は厚労省、幼稚園は文科省、認定こども園は内閣府の所管となる。非行や虐待など、法務省や警察庁などに及ぶ問題もある。そのため施策の決定に時間がかかる「縦割り」の弊害は、かねて指摘されてきた。

 家族を介助する18歳未満の子ども「ヤングケアラー」など、「縦割り」のはざまで置き去りになっていた問題もある。教育分野を切り離したままでは、抜本的解消にはつながるまい。

 政府は、こども家庭庁が他官庁への勧告権を握っているとして理解を求める。しかし他官庁への勧告権を握るだけなら、新たな「器」をつくらずとも、現行組織のまま連携をすれば十分なはずだ。新組織なら何がどう解決できるか示すべきだろう。

 施策を最前線で担うのは自治体になる。現場の混乱を招かぬよう努めてほしい。

 コロナ禍で子どもの問題は噴出している。一斉休校による心身の不調や学習の遅れ、親の減収による経済的困窮、自殺や虐待も増えている。小中高校と特別支援学校が昨年度に認知したいじめは51万件を超え、不登校や自殺も過去最多になった。

 一方、出産や育児への不安による「妊娠控え」で、赤ちゃんの出生数は過去最少となっている。子どもが安心して育つ環境づくりが急がれよう。

 そうしたさまざまな問題を一元的に担い、解決しようという政府の姿勢は評価できる。勧告するだけで終わらせないためにも、子どもに関わる人材を充実させるなど、恒常的な財源確保は欠かせない。

 当初政府が「こども庁」としていた名称は、ここにきて「こども家庭庁」になった。家庭で虐待などを体験し、名称に「家庭」が入ることに抵抗感がある人もいるという。「子育ては家庭の責任」と親が抱え込んで孤立し、虐待につながるケースも懸念される。新しい組織には、そうした問題意識や目配りも求められるのではないか。

 基本方針は、「こどもの権利を保障し、こどもを誰一人取り残さず、健やかな成長を社会全体で後押しする」とする。子どもにとって最善の利益が図られるよう、子どもが抱える問題を可視化させ、解決できる組織にしなくてはならない。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年12月23日  06:42:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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