《余録・12.20》:東京の開成中時代…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・12.20》:東京の開成中時代…
東京の開成中時代、むやみに暴力をふるう教練の配属将校に橋の上から罵声を浴びせた。戦争末期、東大入学後に2等兵として召集され、古参兵に殴られた。理不尽な暴力に「反軍精神」が燃え盛った

▲98歳で亡くなった読売新聞主筆の渡辺恒雄(わたなべ・つねお)さん。政治記者時代に大野伴睦(おおの・ばんぼく)元衆院議長や中曽根康弘(なかそね・やすひろ)元首相ら大物政治家に食い込んだ。回顧録には戦後政治の裏面史が満載だ

▲「野心と無邪気――仕掛けて書きまくり“毀誉褒貶(きよほうへん)”はなはだしくなる大記者」。「オーラルヒストリー」そのものの回顧録を聞き取った政治学者の御厨貴(みくりや・たかし)さんの「ナベツネ」評だ
▲1960年の安保闘争で東大生の樺美智子(かんば・みちこ)さんが亡くなった際、頼まれて政府声明を書き、86年には中曽根氏に「死んだふり解散」を進言した。2007年には自民党と民主党の大連立構想を仕掛けたといわれた
▲メディアの一線を越えてはいないか。疑問が残るが、大記者も時代の産物だろう。政治課題が複雑化し、大物政治家も姿を消した。渡辺さんも「いまや総理大臣であっても、自分の思い通りにならない」と語っている
▲憲法改正を提言する一方、戦争責任を追及した。「反軍精神」は晩年になっても健在。靖国参拝に固執した小泉純一郎(こいずみ・じゅんいちろう)首相に「15日に行っちゃいかん」と伝えた。「僕らがいなくなると、あの残虐な戦争の実態を知らない人たちばかりになって、観念論争になっちゃうんじゃないかと心配だ」。来年は戦後80年。戦争を自ら体験した先達の言葉を心に留めたい。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2024年12月20日 02:04:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。