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●本田靖春と本田宗一郎: 「自動車をつくっている者が大げさな葬式を出して、交通渋滞を起こすような愚は避けたい。…何もやるな」

2023年04月29日 00時00分01秒 | Weblog

(2023年04月12日[水])
本田宗一郎は社員に向かって…「ホンダの社長は代々くだらんやつばっかりだったから、あんた方がしっかりしなきゃどうしようもない」》。本田宗一郎さん「―――仮に息子さんがホンダに入りたいといったら。「入れないね、わたしは。」…」。どこまでその〝社風〟が維持されているのかどうかは知らないが。

   『●『本田宗一郎との100時間 燃えるだけ燃えよ』読了
    「城山三郎著。講談社文庫。1988年2月刊
     (1993年12月第12刷)。」
    「本田宗一郎藤沢武夫トヨタとは明らかに違うその思想と文化。
     《…何よりもその私心私欲の無さである。…二人は公私混同も
     きびしく戒め、ついぞ、その会社を私物化することなく、
     同族化することもなかった。…二人とも金には潔癖だった…》
     《金もうけとは別のものを―――。それを思想というのか、
     文化というのか。…「トヨタが新しいものを生み出してるって、
     あんまり聞かねえな。お金持ってるとか、利益生みだしてるとか、
     たいへんなものらしいが、金融業ならいいけど、生産企業が…」》
    《「―――仮に息子さんがホンダに入りたいといったら。
     「入れないね、わたしは。」…」》

   『●『ニセ札はなぜ通用しないのか?』読了
    「企業が社員に押しつける「水行(みそぎ」」のあほらしさ。
     息子を入社させなかった本田宗一郎、松下幸之助との違い。」

   『●犬がワンと鳴き、飼い主が喝采する、というお話
   『●「特集「3・20」 地下鉄サリン事件から20年」
       『週刊金曜日』(2015年3月20日、1032号)
    「【井上久男の経済私考/F1復帰するも経営は落ち込むホンダ 
     失われた独自性と「ワイガヤ」の社風は戻るか】、
     《…ワイワイガヤガヤと議論しながらもの造りに励む明るい
     風通しの良い会社という意味だが、現状はその真逆状態にある。
     …斬新な商品を出せなくなった。…「トヨタがやっている
     TQM活動をホンダは真似しすぎたから」…トータル・
     クオリティ・マネジメント…社員自らが独自の斬新なアイデアを
     出せなくなった…ソニーと同様にホンダも「らしさを失って
     しまった》。復活してほしい
     (『本田宗一郎との100時間 燃えるだけ燃えよ』…》

   『●《本田宗一郎は社員に向かって…「ホンダの社長は代々くだらんやつ
     ばっかりだったから、あんた方がしっかりしなきゃどうしようもない」》

 日刊ゲンダイの追悼譜【佐高信「追悼譜」/本田宗一郎の声は豊田章一郎には届かなかったのだろう】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/319784)によると、《いま、私の評伝選を出してくれている旬報社から、およそ20年前に『本田靖春集』全5巻が出た。私よりひとまわり上の本田は、私が敬愛するジャーナリストである。この全集の推薦者が五木寛之、澤地久枝、そして筑紫哲也。その本田の『複眼で見よ』(河出書房新社)にこんな一節がある。「本田宗一郎のこと」と題して、靖春は損失補てん問題で日本の資本主義は腐臭を放っているとし、トヨ夕や松下電器産業(現パナソニック)と対照的に財テクに見向きもしなかった宗一郎を偲んで、「経済評論家の佐高信氏」の次の指摘を引く》。

   『●『続トヨタの正体』読了(1/2)
   『●『続トヨタの正体』読了(2/2)
    《「ハイブリッド」であれば、何でも環境に優しいという誤解…
     小池百合子…は環境大臣時代に「ハイブリッド戦闘機」と発言して
     顰蹙…単純でお粗末な発想が根底に…》

   『●『本田靖春/「戦後」を追い続けたジャーナリスト』読了
    「随所に黒田清さん…。筑紫哲也さん…。「黒田さんは2000年、
     本田さんは2004年に、そして筑紫哲也さんは2008年に、
     まるで五輪開催の年に合わせたように他界されてしまった」…。
     鎌田慧さん…。本多勝一さん…」
    「わけ知りふうにいうと、社会に各種のウソはつきものである。
     しかし、現実の泥沼にまでつかっても、が水面に出ているかぎり、
     たまにはホントもいえる。だが、までつかると、物をいえない。
     までつかると、何もきこえなくなる。までつかると、
     すべて真っ暗闇である」
    「斎藤貴男さんの、少し悲壮感漂うエッセイ「囚われだらけの時代に」…
     「…文春にはっきりと距離を置かれ始めた。靖国問題や中国脅威論で
     勢いづいていた時期の『諸君!』には、ネット右翼もかくやの罵言雑言を
     浴びせかけられた。組織も時代も恐ろしいものだと、つくづく思い知った」。
     「二〇一〇年五月下旬現在、日本のジャーナリズムはほとんど荒野と化した
     辛うじて生き長らえている雑誌も新聞も、反骨精神とは対極の世界を
     志向している」」

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https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/319784

佐高信 評論家
1945年山形県酒田市生まれ。「官房長官 菅義偉の陰謀」、「池田大作と宮本顕治 『創共協定』誕生の舞台裏」など著書多数。有料メルマガ「佐高信の筆刀両断」を配信中。

佐高信「追悼譜」
本田宗一郎の声は豊田章一郎には届かなかったのだろう
公開日:2023/03/13 06:00 更新日:2023/03/13 06:00


■豊田章一郎(2023年2月14日没 享年97)

     (豊田章一郎氏(2023年2月14日没 享年97歳)
      /(C)日刊ゲンダイ)

 いま、私の評伝選を出してくれている旬報社から、およそ20年前に『本田靖春集』全5巻が出た。私よりひとまわり上の本田は、私が敬愛するジャーナリストである。この全集の推薦者が五木寛之、澤地久枝、そして筑紫哲也。その本田の『複眼で見よ』(河出書房新社)にこんな一節がある。「本田宗一郎のこと」と題して、靖春は損失補てん問題で日本の資本主義は腐臭を放っているとし、トヨ夕や松下電器産業(現パナソニック)と対照的に財テクに見向きもしなかった宗一郎を偲んで、「経済評論家の佐高信氏」の次の指摘を引く。

「大体、トヨタにしても松下にしても、いまだに豊田家、松下家の人間が会長、社長等主要ポストにすわっている。企業を”家業”と考えているわけだが(略)、損失補てんも、日本企業のこうした封建的土壌の上に咲いた徒花なのである」

 宗一郎は実弟も早く本田技研を辞めさせ、子息は最初から入社させなかった。引退したのも67歳と早い。

 こうした説明を入れながら、「ふたたび佐高信氏の文からの引用になって恐縮だが、どうかお許しをいただきたい」として拙文を引いている。

「また、豊田家の企業のトヨタが、その本拠の挙母市の名を豊田市に変えたのに、本田は鈴鹿サーキットで知られる鈴鹿市が本田市に変えてはどうかと言ってきたのに、それを断っている。(略)問題の補てんリストに本田技研の名がないのは偶然ではない」

 『週刊現代』の1991年8月17日号の私のコラムからの引用だが、私はとても嬉しかった。しかし、その恐縮ぶりにはこちらが恐縮するしかない。

 豊田章一郎が経団連の会長をやったのは、日本の企業の負の側面の代表として、皮肉な意味で妥当なのだろう。豊田家の分家の英二から本家の章一郎への社長交代は”大政奉還”などと言われたが、豊田家の人間でなければ社長になりえたかどうか、私は疑問がある。

 その息子の章男に至っては論外である。私は章一郎の死を悼む人に梶山三郎の小説『トヨトミの野望』『トヨトミの逆襲』(いずれも小学館)を読むことをすすめたい。

 本田靖春によれば、死期の迫った本田宗一郎はこのように言い遺したという。

自動車をつくっている者が大げさな葬式を出して、交通渋滞を起こすような愚は避けたい。もうすぐお迎えがくるが、何もやるな

 かなり前から、宗一郎は自宅への年始のあいさつを断っていた。その理由を彼は靖春にこう語った。

自動車屋が駐車の列でご近所に迷惑をかけてはいけない

 道路を倉庫がわりに使う方式といわれたトヨタかんばん方式をやめることなど考えもしなかっただろう章一郎にこの発言は届くことはなかった。(文中敬称略)
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●《本田宗一郎は社員に向かって…「ホンダの社長は代々くだらんやつばっかりだったから、あんた方がしっかりしなきゃどうしようもない」》

2022年11月03日 00時00分37秒 | Weblog

 (2022年10月20日[木])
本田宗一郎さん「―――仮に息子さんがホンダに入りたいといったら。「入れないね、わたしは。」…」。どこまでその〝社風〟が維持されているのかどうかは知らないが。

   『●『本田宗一郎との100時間 燃えるだけ燃えよ』読了
    「城山三郎著。講談社文庫。1988年2月刊
     (1993年12月第12刷)。」
    「本田宗一郎藤沢武夫トヨタとは明らかに違うその思想と文化。
     《…何よりもその私心私欲の無さである。…二人は公私混同も
     きびしく戒め、ついぞ、その会社を私物化することなく、
     同族化することもなかった。…二人とも金には潔癖だった…》
     《金もうけとは別のものを―――。それを思想というのか、
     文化というのか。…「トヨタが新しいものを生み出してるって、
     あんまり聞かねえな。お金持ってるとか、利益生みだしてるとか、
     たいへんなものらしいが、金融業ならいいけど、生産企業が…」》
    《「―――仮に息子さんがホンダに入りたいといったら。
     「入れないね、わたしは。」…」》

   『●『ニセ札はなぜ通用しないのか?』読了
    「企業が社員に押しつける「水行(みそぎ」」のあほらしさ。
     息子を入社させなかった本田宗一郎、松下幸之助との違い。」

   『●犬がワンと鳴き、飼い主が喝采する、というお話
   『●「特集「3・20」 地下鉄サリン事件から20年」
       『週刊金曜日』(2015年3月20日、1032号)
    「【井上久男の経済私考/F1復帰するも経営は落ち込むホンダ 
     失われた独自性と「ワイガヤ」の社風は戻るか】、
     《…ワイワイガヤガヤと議論しながらもの造りに励む明るい
     風通しの良い会社という意味だが、現状はその真逆状態にある。
     …斬新な商品を出せなくなった。…「トヨタがやっている
     TQM活動をホンダは真似しすぎたから」…トータル・
     クオリティ・マネジメント…社員自らが独自の斬新なアイデアを
     出せなくなった…ソニーと同様にホンダも「らしさを失って
     しまった》。復活してほしい
     (『本田宗一郎との100時間 燃えるだけ燃えよ』…》

 日刊ゲンダイのコラム【佐高信「追悼譜」/創業者・本田宗一郎と久米是志元社長の大論争はホンダそのものだった】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/312782)によると、《本田技研で河島喜好から久米へ社長がバトンタッチされる時、創業者の本田宗一郎は社員に向かって、こう演説した。「ホンダの社長は代々くだらんやつばっかりだったから、あんた方がしっかりしなきゃどうしようもない。オレもくだらなければ、オレが後継者に選んだ河島もくだらなかった。くだらない河島だから、くだらない久米しか社長に選べなかった。したがって、みんなにしっかりやってもらわなきゃ困る。ホンダは社長が偉くて引っ張るんじゃなくて、みんなが引っ張っていくのだから、よろしく頼む」》。

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https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/312782

佐高信 評論家
1945年山形県酒田市生まれ。「官房長官 菅義偉の陰謀」、「池田大作と宮本顕治 『創共協定』誕生の舞台裏」など著書多数。有料メルマガ「佐高信の筆刀両断」を配信中。


佐高信「追悼譜」
創業者・本田宗一郎と久米是志元社長の大論争はホンダそのものだった
公開日:2022/10/17 06:00 更新日:2022/10/17 06:00

■久米是志(2022年9月11日没)

     (久米是志氏(C)日刊ゲンダイ)

 本田技研で河島喜好から久米へ社長がバトンタッチされる時、創業者の本田宗一郎は社員に向かって、こう演説した。

「ホンダの社長は代々くだらんやつばっかりだったから、あんた方がしっかりしなきゃどうしようもない。オレもくだらなければ、オレが後継者に選んだ河島もくだらなかった。くだらない河島だから、くだらない久米しか社長に選べなかった。したがって、みんなにしっかりやってもらわなきゃ困る。ホンダは社長が偉くて引っ張るんじゃなくて、みんなが引っ張っていくのだから、よろしく頼む

 これには「いいぞーッ」と野次がとび、退任する河島は「おニイちゃん、ご苦労さん。こっちに来いよ」と言われて壇上から降ろされ、社員の手でワッショイワッショイと胴上げされたという。本田はオヤジ、本田のパートナーで副社長だった藤沢武夫はオジキ、河島はおニイさんと呼ばれていたが、そんな開放的雰囲気は「会社を1つの考え方でまとめてはいけない」という本田の持論から生まれた。それは自らをも否定するような激しいものだった

 本田が社長の時、エンジンを水冷にするか空冷にするかの大論争があった。本田は「砂漠の真ん中でエンストした時、水なんかあるか」と言って空冷を主張した。

 しかし、「それでは公害のないエンジンは開発できない」と、公害規制をクリアする面からも水冷でなければならないと考えたのが、当時の若手技術者の久米や川本信彦だった。

 血の気が多い本田は、手が早くて、よく久米や川本をスパナで殴ったといわれたが、それほどのワンマンだから、もちろん本田も自説を曲げない。

 わからず屋のオヤジ(本田)に頭にきた久米は辞表を出して四国巡礼に出かけたという話もある。

 この大論争は、藤沢が間に立ってまとめ、結局、エンジンは水冷にすることになった。この時、空冷にしていたら、いまの本田技研はなかっただろうとも言われる。

 それほどの大きな分岐点だったのだが、その後、本田とぶつかった久米、川本が社長になるのである。

 本田はこの一件で「自分には技術がわからなくなったのかもしれない」と思い、退任する会長にもならずにスパッと退いて、以後、出社しなかった。本当は会社に出たくてしょうがないけれども、行けば口を出してしまう。それで、東京の八重洲ブックセンターの近くに小さな事務所を構えて、ひたすら絵を描いていた。

 久米には一度インタビューしたことがある。当時、私は清瀬に住んでいて、定期券と一緒になった名刺入れから名刺を出したのだろう。

 何気なく久米はそれを見ていたのに違いない。「私も清瀬に住んでいたことがありますよ」と言われて、小さなことにもよく気がつく人だなと思った。(敬称略)
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●最悪な税制・消費税制30年…《弱い者いじめができなければ生き残れない社会は、消費税によっても形成された》

2020年01月21日 00時00分56秒 | Weblog

[※ 斎藤貴男著『決定版 消費税のカラクリ』(ちくま文庫) 筑摩書房(http://www.chikumashobo.co.jp/photo/book/large/9784480436023.jpg)↑]



webronzaの記事【斎藤貴男/消費税の悪魔性 仕入れ税額控除の許されない実態/あまりにも複雑で一般に理解されていない消費税。リテラシーを高めない単なる金ヅルに】(https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019102100001.html)。

 《今のうちに消費税に対するリテラシーをよほど高めておかないと、言い方を換えると、意図的に刷り込まれてきた誤った認識をそのままにしておいたら、私たちは未来永劫、幾度も幾度も、税率の引き上げを強いられていく。彼らの単なる金ヅル、息をする財布としての生き方しかできなくされる運命を余儀なくされる》。

   『●《消費税が抱える根源的な問題》はなにか? 《常に弱い
       立場の側がより重い負担を強いられる》最悪な消費税制…
    「斎藤貴男さん…【政府やメディアが刷り込んだ“消費税の目的”
     の嘘/“社会保障の充実と安定化”のための増税という
     謳い文句とは正反対の現実】」

   『●消費税…《自分よりも弱い立場の取引先に負担を回し、
     そうされた者はさらに弱い取引先に……最も弱い者が破滅する》…
    《泣かされたままでは潰れるしかない仕入れ業者は、自分よりも弱い
     立場の取引先に負担を回し、そうされた者はさらに弱い取引先に……
     そして結局、もう誰にも負担を押し付ける先がない、最も弱い者が
     破滅する。この繰り返しで30年が過ぎた。
     弱い者いじめができなければ生き残れない社会は
     消費税によっても形成されたのである》

 弱者・弱い立場に消費税分を「泣かせ」てゼロ税率で儲け、加えて、「輸出戻し税」分を還付されて丸儲け。《不労所得》である。デタラメ。

   『●『消費税のカラクリ』読了
     「こう云った悲劇とは裏腹に、輸出戻し税という仕掛けも。「零細事業者が
      直面させられている悲惨とは裏腹に、消費税は大企業、とりわけ輸出比率の
      高い大企業にとっては実に有利に働く。かれらは消費税という税制によって、
      莫大な不労所得さえ得ていると断定して差し支えない」。
      かたや「貰っていない税金をお前が払え」といわれ、かたや大企業は
      「不労所得」を得ているわけ! 馬鹿らしい」。

   『●消費税増税: かたや大企業は「不労所得」を得ているわけ!
   『●消費税増税: 大企業は「不労所得」を得て、
           メディアは「火事場泥棒」の助っ人

 消費税制についてあまり語られないこと…斎藤貴男さん《「仕入れ税額控除」の悪用により脱税。「正社員らに支払う「給与」」が仕入れ税額控除の対象。「いわゆる格差社会、ワーキング・プア問題の重要なテーマである非正規雇用は、他ならぬ消費税が拡大させたという現実をご存じだろうか」》? 非正規雇用は、《他ならぬ消費税が拡大させた》のだ。《派遣に切り替えると合法的に節税できる消費税》。詳しくは ⇒ 『●《むしろ「自民、単独過半数割れ 安倍一強に赤信号」でしょーよ。》と報じられない…ズルズル消費増税か?』。

 最悪な税制・消費税制30年…《弱い者いじめができなければ生き残れない社会は、消費税によっても形成された》。在ってはならない税制、《存在してはならない税制》。あらゆる取引に課税され、利益が上がっていなくても担税し、消費税を絞り出さねばならない。未納の税金は消費税がトップで、なんと6割。払いたくても、払えない現実。《私たちは未来永劫、幾度も幾度も、税率の引き上げを強いられていく。彼らの単なる金ヅル、息をする財布としての生き方しかできなくされる運命を余儀なくされる》…そんなのご免だ。消費税制は廃止されなければならない。

   『●『消費税のカラクリ』読了
   『●あとの《増税》祭り…《家計に痛みを強いる施策が続々と動きだす》
                   …自民党議員全員が第Ⅳ象限なのでは?
   『●薔薇マークキャンペーン《消費税増税凍結
     (むしろ…5%に減税することを掲げる…)》…むしろ消費税制廃止を
   『●《むしろ「自民、単独過半数割れ 安倍一強に赤信号」
        でしょーよ。》と報じられない…ズルズル消費増税か?
   『●あとの《増税》祭り…《家計に痛みを強いる施策が続々と動きだす》
               …自民党議員全員が第Ⅳ象限なのでは?
   『●《巻き上げられた消費税は…土建屋政治や大企業の減税や、
      近年では軍事費などなど、権力の金儲けや戦争ごっこに乱費》
   『●《常に弱い立場の側がより重い負担を強いられる》最悪な
     消費税制…《これほど不公平かつ不公正なイカサマ税制もない》
   『●悍ましき《大増税か安楽死の推進か…「尊厳死」の議論の
     本質が、社会保障費の削減に他ならない》(斎藤貴男さん)
   『●斎藤貴男著『決定版 消費税のカラクリ』…消費税制は
     《いかに不公正で…「魔法の杖」》かを指弾した《警世の書》

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https://webronza.asahi.com/politics/articles/2019102100001.html

消費税の悪魔性 仕入れ税額控除の許されない実態
あまりにも複雑で一般に理解されていない消費税。リテラシーを高めない単なる金ヅルに
斎藤貴男
 ジャーナリスト
2019年10月21日
仕入れ税額控除|付加価値税|増税|消費税

10月1日、消費税が8%から10%に上がりました。長年、消費税のあり方を追及してきたジャーナリストの斎藤貴男さんが、消費税の根源的な問題について考えるシリーズ。今回は、簡素で明快であるべき税のあり方とは逆行する消費税の複雑で不公平な構造について、仕入れ税額控除を例に引いて論じます。(論座編集部)


 消費税率が10月1日、予定通りに引き上げられた。当然のことながら、その妥当性を疑う声はなお根強い。直後の10月5、6日の両日に共同通信社が実施した全国電話世論調査によると、増税後の日本経済について、回答者の70.9%が先行き「不安」か「ある程度の不安」を感じていると答えたという。

 増税反対、というより消費税そのものを“存在してはならない税制”だと考えている私には、「わが意を得たり」の結果だと言いたいが、そう単純なはなしでもない。回答者たちが(コンピューターに発生させた無作為の番号に電話をかけるRDD=ランダム・デジット・ダイヤリング法=で調査。有権者のいる世帯から514人、携帯電話で512人が答えている)消費税の仕組みをきちんと承知したうえでそう答えたのかどうかが、まったくわからないからである。


■十分に理解されていない消費税という税制

 もちろん、世論調査とはそういうものだ。限りなく世の中総体の“ミニチュア”を目指す。

 とはいえ、消費税ほど一般に理解されていない税制も珍しい。そんなものについて問うのに、事前の説明もしないで答えさせた結果を、そもそも「世論」と呼んでよいものなのだろうか。圧倒的多数の人々が政府やマスコミの誘導を鵜呑(うの)みにし、消費者がすべて負担するのが消費税だと思い込まされているが、そもそもその根本からして間違っているのだから(どこがどう違うのかは前回の拙稿「結局、弱い者が負担を強いられる弱肉強食の消費税」を参照)。

 先の参院選における「れいわ新選組」旋風を通して、消費税の本質がある程度は知られるようになりはした。この税制そのものを争点化し、その問題点をわかりやすく伝えた山本太郎代表の功績は大きい。だが、まだまだだ。

 今のうちに消費税に対するリテラシーをよほど高めておかないと、言い方を換えると、意図的に刷り込まれてきた誤った認識をそのままにしておいたら、私たちは未来永劫、幾度も幾度も、税率の引き上げを強いられていく彼らの単なる金ヅル、息をする財布としての生き方しかできなくされる運命を余儀なくされる

 だから私は書く。今回は税の専門家や実務担当者以外にはほとんど知られていない「仕入れ税額控除」を取り上げよう。


■税の累積を避けるためにつくられた仕入れ控除制度

 消費税は、納税義務者である年商1千万円超の事業者が、顧客に商品やサービスを販売する際、本体価格に税金分を上乗せ(転嫁)した金額を預かり、必要な計算を施して納める、という体裁とされている税制だ。だが、現実には顧客との力関係次第で転嫁できたり、できなかったり。できなければ実質的に自腹を切ってでも納税しなければ差し押さえを食う弱い者いじめの化身のようなものであることは前回に指摘したので、本稿では割愛。

 どのみち納税義務者が納税義務を免れる可能性はあり得ないのだが、首尾よく消費税を顧客に転嫁できても、できずに利益を削って帳簿の上でだけ転嫁できた形になった場合でも、その分の全額がイコール納税額ではない。顧客から預かった(か、預かった形になっている)消費税から仕入れ先に支払った(か、支払った形になっている)消費税をマイナスするという計算をして、その差額を税務署にくれてやる(治める)のだ。

 この計算式を「仕入れ税額控除」という。仕入れ代だけでなく、事業用資産や事務用品の購入、賃加工や運送等の役務提供を受けることなど、いわゆる必要経費のかなりの項目も、「仕入れ税額控除」の対象にすることができる。

 なにしろ消費税は、原則としてすべての商品・サービスのあらゆる流通段階に課せられる税である。そこで、「仕入れ税額控除」の仕組みを取り入れることで、税の上に税が何重にも累積してしまうことがないように設計されているわけだ。

 ヨーロッパでは同様の税制を「付加価値税」(value added tax)と呼んでいるのは、この「控除」の部分に着目してのことだ。噛み砕いて説明するのが難しい形容ではあるのだが、あたかも消費者だけが負担させられているかのような印象ばかりを残す「消費税」とは、比べものにならないほど誠実なネーミングではあるだろう。


■輸出企業に認められた「輸出免税」の制度

 問題はここから先である。

 消費税はあくまで日本の税制だ。外国の顧客には――同じような税制があろうとなかろうと――関係がない。つまり、納税義務者が自社の製品やサービスを輸出しようとした時、消費税分の金額を転嫁することはできないし、したがって相手から預かることもできないのである。

 考えてみれば、たいがいの中小・零細企業が国内で直面している現実と似たようなものだ。ただし、輸出の場合は、輸出先との力関係で優位にある企業であっても、何が何でも転嫁は不可能という点が、決定的に異なる。

 そのため、政府は輸出については消費税を免除する「輸出免税」の制度を設けた。そうしないと、すなわち自腹を切って納税させられる、もうからないビジネス(くどいようだが、中小零細の国内商売とほぼ変わらない)ということになり、大企業が輸出を手控えるようになってしまえば、外貨が入ってこなくなることを恐れたわけだ。


■実態は免税というより輸出戻し税

 「輸出免税」では、 国内であれば顧客に転嫁されるべき消費税率に「ゼロ税率」を設定する。一方で、輸出企業は国内での仕入れや必要経費には消費税を支払っている(か、支払ったことになっている)。ゆえに「仕入れ税額控除」を活用する権利を維持しており、免税措置を受けるに当たって、「0」ー「仕入れないし必要経費に支払った(か、支払ったことになっている)消費税」という計算を行うことになる。

 すると、どうなるか?

 マイナスの消費税がかかるということは、支払った(か、支払ったことになっている消費税が戻ってくる、還付されるということに他ならない。元静岡大学教授で税理士の湖東京至氏による有価証券報告書などを基とした試算によれば、2017年度決算(主として17年4月~18年3月)のトヨタ自動車をはじめとする輸出大企業(製造業13社)の消費税の還付金額は、合計で約1兆428億円に達していた。

 上位から社名を並べると、トヨタ約3506億円、日産自動車約1509億円、本田技研工業約1216億円、マツダ約767億円、キヤノン約638億円……と続く。新日鐵住金約284億円、パニソニック約220億円、といった数字もあった。

 こうなると、単に「免税」というだけではおさまらない。立て替えた金が戻ってくるのだから「輸出戻し税」だ、と湖東氏は表現している。彼は例年、11月頃に前年度の還付金額推算をまとめるのが常だから、2018年度のデータも間もなく公表されるはずである。10%への増税がなされて以降の還付金はどう推移していくのだろう。


■輸出戻し税は丸儲けの不労所得?

 この輸出戻し税の現実をどう見るか。論じる者の立場によって、見方はまるで違ってくる。

 法律的には正当でも、消費税を転嫁できない中小零細事業と比べて優遇され過ぎている。そういう議論は当然あるだろう。

 ヨーロッパの付加価値税にも同様の仕組みがある。一種の輸出補助金として位置づけられているとされ、であれば日本も追随しないと競争に負けてしまう、という政府のスタンスに同調する意見もある。それは、それで、いい。

 ただし、その場合、建前がきちんと守られている限りにおいて、という大前提が必要だ。要するに、それらの輸出大企業が、仕入れ先や必要経費となる商品やサービスの購入先に、消費税を実質的に支払っているのか、否かということだ。 ………
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●消費税増税: かたや大企業は「不労所得」を得ているわけ!

2014年02月26日 00時00分11秒 | Weblog


gendai.netの二つの記事【消費税で“濡れ手で粟” 大企業が儲かる「輸出戻し税」の実態】(http://gendai.net/articles/view/news/148026)、
【安倍政権の「雇用改革」実現なら賃金42兆円減の衝撃試算】(http://gendai.net/articles/view/news/148066)。

 「政府税調が法人税引き下げの論議を始めている。海外移転を防ぐため税金を安くして優遇しようとの考えだが、冗談ではない大企業は消費増税で巨額のウマミを享受するのだ」・・・・・・。そう、「大企業は肥え、市民は消費税増税でいじめられる。自公議員や翼賛野党議員は「弱き者から税を獲れ!」と思っている、に違いない」。

  『●弱き者から税を獲れ!?
     「法人税を納めている企業が3割未満という現状」と消費税増税
  『●『消費税のカラクリ』読了
  
     「こう云った悲劇とは裏腹に、輸出戻し税という仕掛けも。「零細事業者が
      直面させられている悲惨とは裏腹に、消費税は大企業、とりわけ輸出比率の
      高い大企業にとっては実に有利に働く。かれらは消費税という税制によって、
      莫大な不労所得さえ得ていると断定して差し支えない」(p.100)。
      かたや「貰っていない税金をお前が払え」といわれ、かたや大企業は
      「不労所得」を得ているわけ! 馬鹿らしい」。

 そして、労働者は報われないわけです。「完全に化けの皮がはがれてきたアベノミクス。アベノミクスが成功するかどうかは、労働者の“賃金”が上がるかどうかにかかっている。ところが、安倍政権の「雇用改革」が実現したら、なんと労働者の賃金は約42兆円も減ることが分かった」。

  『●働くとは何か? 生業とは?
  『●「報われない国」の労働環境の「質」の劣化
  『●「資本主義の狂気」
     『週刊金曜日』(12月13日、972号)についてのつぶやき
  『●「報われない国」のこんな労働環境質の悪い中での希望の光


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http://gendai.net/articles/view/news/148026

消費税で“濡れ手で粟” 大企業が儲かる「輸出戻し税」の実態
2014年2月17日 掲載

 政府税調が法人税引き下げの論議を始めている。海外移転を防ぐため税金を安くして優遇しようとの考えだが、冗談ではない大企業は消費増税で巨額のウマミを享受するのだ。

 元静岡大教授で税理士の湖東京至氏がこう言う。

   「消費税には、企業が商品を輸出した時点で、国内の部品仕入れや原材料の
    価格に含まれている税額分を企業に還付するシステムがあります。
    いわゆる『輸出戻し税』『還付金』と呼ばれるものですが、納めなければならない
    消費税額より、輸出販売分で戻ってくる税額の方が多いのが実態です。
    2012年度の予算で試算したところ、還付金の総額は約2兆5000億円あり、
    1兆円以上が輸出企業や商社など上位20社に流れていることが分かりました」

■10%になれば年間5兆円

 この制度によって、一部の企業は客が支払った消費税を一円も国に納めないどころか、税率が上がるほど「還付金」が増え、どんどん懐が潤うというのだ。「5%」から「8%」になると、輸出上位10社の還付金がいくら増えるか、湖東氏が推算したのが別表だ。来年10月に10%に引き上げられると、現在の2倍の約5兆円が輸出企業に渡ることになるという。

   「輸出戻し税の最大の問題は“横領”を公認するような制度だということです。
    本来、税金の還付とは、サラリーマンの年末調整のように、自分で納めた
    税金を戻してもらうことを意味する。ところが、輸出戻し税は、他人が納めた
    税金を懐に入れてしまうことができる、巧妙なスキームなのです。例えば、
    自動車メーカーや商社が国内から部品を調達して商品を輸出すれば、
    実際には下請け企業が払った消費税が、自動車メーカーが納めたものと
    見なされ、還付されます。払ってもいない税金が戻ってくるなんて、濡れ手で
    粟みたいな話があってはいけません」(湖東京至氏)

 消費税が上がるほど輸出企業は儲かる財界が消費税に大賛成なのはこうしたカラクリがあった。
 その上、法人税もまけてもらおうとはムシがよすぎるのだ

  【湖東氏が推算した輸出上位10社の還付金増加額】
    ◆企業/税率5%/税率8%
    ◇トヨタ自動車/1801億円/2882億円
    ◇日産自動車/906億円/1450億円
    ◇ソニー/635億円/1016億円
    ◇本田技研工業/563億円/901億円
    ◇マツダ/504億円/806億円
    ◇キヤノン/465億円/744億円
    ◇三菱自動車/411億円/657億円
    ◇新日鉄住金/392億円/627億円
    ◇東芝/355億円/568億円
    ◇パナソニック/336億円/537億円
    ◇合計/6368億円/1兆188億円
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http://gendai.net/articles/view/news/148066

安倍政権の「雇用改革」実現なら賃金42兆円減の衝撃試算
2014年2月18日 掲載

 完全に化けの皮がはがれてきたアベノミクス。アベノミクスが成功するかどうかは、労働者の“賃金”が上がるかどうかにかかっている。ところが、安倍政権の「雇用改革」が実現したら、なんと労働者の賃金は約42兆円も減ることが分かった。

 「成長戦略」の目玉に雇用改革を掲げているアベノミクス。規制改革会議の大田弘子議長代理も「規制改革は労働市場とセット」と宣言している。

 雇用改革の柱となるのが、「限定正社員制度」や「残業代をゼロにするホワイトカラーエグゼンプション」などだ。要するに、安くて使い勝手のよい労働力を大企業に提供するのが狙いである。

 安倍政権の雇用改革がすべて実現した場合、給料はどうなるのか。「労働総研」が試算した結果には仰天だ。42兆円も減るという

   「90年代後半から日本で進められた〈雇用改革〉は、労働規制を
    緩和することで、非正規の労働者を急増させた。大企業は低賃金の
    非正規社員を使い、売り上げが伸びなくても利益を出せるようになった。
    なにしろ、財務省の〈法人企業統計〉によると人件費は98年度からの
    累計で131兆円も減少しています。それでも、これまでは正社員には
    手をつけなかった。ところが、安倍政権は〈限定正社員〉や
    〈ホワイトカラーエグゼンプション〉など、正社員の雇用に手をつけようと
    している。安倍政権の〈正社員改革〉によって人件費がどうなるかを中心に
    試算すると、42兆円の減少という驚く額でした」
    (労働総研・藤田宏事務局次長)

■「限定社員」「残業代ゼロ」

 「ホワイトカラーエグゼンプション」の導入により、1人当たりの残業代は平均166万円、総額10.5兆円減少し、正社員の「限定正社員化」によって、賃金は1人当たり55万円、総額14兆円も減るという。

 安倍政権は、正社員を一握りの「エリート正社員」と、多数の「限定正社員」に二極化する方針でいる。規制改革会議雇用ワーキンググループの議論では、20代は「3割が無限定のエリート正社員」だが、少しずつ「限定正社員」の割合を増やし、50代は「1割だけが無限定のエリート正社員」という雇用社会がイメージされている。

 労働総研は「限定社員」の給与を「無限定社員」の給与の85%として試算している。エリート無限定社員も、残業代はゼロになる。

   「安倍首相は『日本を世界一企業が活動しやすい国にする』と訴えています。
    その目玉政策が、雇用改革なのでしょう。しかし、労働者の賃金を下げて
    企業を優遇しても、内部留保に回るだけです。結果的に個人消費を落ち込ませ、
    景気を冷やすことになりますよ」(藤田宏氏)

 口先では「賃金アップ」を叫んでいる安倍首相。この男は、自分がやっていることの矛盾に気づいていないのではないか。

  【1人当たりの賃金減少額】
    正社員の「限定正社員化」/年間55万円
    ホワイトカラーエグゼンプション/残業代平均166万円

  【賃金減少額】
    限定正社員化/14兆円
    ホワイトカラーエグゼンプション/10.5兆円
    無限定正社員のふるい落としによる限定正社員化/1.3兆円
    非正規労働者の賃金水準低下/2.9兆円
    名ばかり正社員の非正規化/0.9兆円
    限定正社員の派遣労働者化/12.3兆円
       総額/41.9兆円
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●消費税増税、やってはイケナイ: 斎藤貴男さん名著『消費税のカラクリ』から学ぶ

2013年07月26日 00時00分03秒 | Weblog


東京新聞の記事(http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013072002100003.html)。

 記事によると「百三十万円の消費税を支払う資金がなかった」方がいる一方で、「・・・自動車、電機、商社など少なくとも十八社に、各数百億円から一千億円超が還付されている」というこのあほらしい税制、不公平な税制。
 斎藤貴男さんの名著『消費税のカラクリ』から、そのカラクリに納得がいく。例えば、「輸出戻し税・・・輸出比率の高い大企業にとっては実に有利に働く。かれらは消費税という税制によって、莫大な不労所得さえ得ている」のである。それは「不労所得」なのである。市民は額に汗して消費税を納める努力をし、大企業は「不労所得」を得ているのである。馬鹿らしいにもほどがある。

   『●『消費税のカラクリ』読了
   
    「こう云った悲劇とは裏腹に、輸出戻し税という仕掛けも。
     「零細事業者が直面させられている悲惨とは裏腹に、消費税は大企業
     とりわけ輸出比率の高い大企業にとっては実に有利に働く。かれらは
     消費税という税制によって、莫大な不労所得さえ得ていると断定して
     差し支えない」(p.100)。かたや「貰っていない税金をお前が払え」
     といわれ、かたや大企業は「不労所得」を得ているわけ! 馬鹿らしい。
       「・・・消費税は国内での取引に課税されるものであり、輸出や国際輸送
     など輸出に類似する取引では免税される。・・・/・・・輸出取引については、
     国内で発生した消費税負担は完全に除去されることに」(pp.100-101)
     なる。消費税を納めないどころか、多額の還付金。「・・・最も多額の還付金を
     得たのはトヨタ自動車で、約三千二百十九億円」(p.103)!! 
     あーっ・・・、本田技研工業までが」

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http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013072002100003.html

<6年後の私たち>消費税  「大手ばかり優遇
2013年7月20日 紙面から

 愛知県刈谷市の住宅街にある倉庫で、次男(40)と会社を経営する黒岩行子さん(67)が数人の女性従業員とともに、車の内装に使われる布をミシンで縫っていた。一枚処理して三十五円。仕事量は少なく、七人の従業員に交代で出勤してもらっている。

 元請けの大手自動車メーカーから数えて何次下請けなのか分からない。今年の三月期決算では、百三十万円の消費税を支払う資金がなかった。「八年前に死んだ夫の生命保険金を貯金してあり、これを会社に貸して納税した」。同じころ、大手自動車メーカーの決算は過去最高益が相次いだ。「アベノミクス(安倍晋三首相の経済政策)ってどこに落ちてるんだろう

 一方、野党の党首はテレビの討論番組で「労働者の最低賃金を一時間千円に」と発言していた。縫製作業は慣れた従業員でも五十枚仕上げるのに一時間半かかる。「一時間で千百七十円の売り上げが限界。現実が分かっているのか」。売り上げから家賃や人件費を引くと何も残らない。

 赤字企業は、利益にかかる法人税を払わなくてもいい。しかし、消費税からは逃れられない。仕入れ時の消費税は仕入れ先が払うが、その分を除いて売り上げの消費税は納付する。

 元請けからの納入単価の引き下げ要求も、下請けには悩みの種だ。昨年二月、大手自動車の下請けが多い地域で、地元労働組合が中小企業にアンケートをした。「単価の切り下げは当たり前。断れば仕事がなくなる」「安くしなくては仕事はこない。50%くらい下げています」。労組の担当者は「費税が上がれば廃業が相次ぐのでは」と懸念する。

 その半面、消費税を払うのではなく、もらう企業がある。輸出品には消費税をかけられないため、輸出企業は仕入れにかかった費用の消費税分が税務署から還付される。二〇一一年度は消費税徴収予定額が十二兆円余なのに対し、還付額は約三兆円に及ぶ

 消費税制の矛盾を突く著作のある湖東(ことう)京至・元静岡大教授が、企業の有価証券報告書に記載された売上高、製造原価報告や、各社の公表する製品の輸出割合などに基づき試算したところ、自動車、電機、商社など少なくとも十八社に、各数百億円から一千億円超が還付されている。

 トヨタ本社や系列企業が集中する豊田税務署の場合、一〇年度は消費税徴収額が三百五十億円なのに対し、還付額は千六百六十億円。つまり、徴収額より還付額の方が千三百十億円も多い。日産本社のある神奈川税務署も、徴収額六百億円に対し、還付額は千百億円に上る。

 大手輸出企業は消費税率が上がっても、その分を国から還付され、仕入れ額の上昇は単価切り下げでしのぐことも可能だ。参院選の後には、成長戦略に沿った法人税減税の検討も本格化するとみられるが、国税庁のまとめでは国内法人の七割以上が赤字だ。赤字企業は法人税減税の恩恵を受けない。あるのは消費税の重圧だけだ。

 「国のやることは大手企業の優遇ばかり。消費税を上げるより先に、国会議員の給料と数を減らすべきじゃないか」と黒岩さん。零細企業の現実を見ぬ政治に腹が立つばかりだ。 (飯田孝幸)


公約見極めポイント 平等望むなら据え置き

 政府は景気状況をみた上で現在5%の消費税率を来年4月に8%、2015年10月に10%へ引き上げるかを判断する。日本商工会議所など4団体は11年夏、消費税の販売価格への転嫁状況を中小企業にアンケート。増税された場合に引き上げ分を価格に転嫁できないとする企業は売上高1500万円以下で68%、1500万~2000万円で67%、2000万~3000万円で64%に及んだ。経済アナリストの森永卓郎氏は「消費税は富の分配の問題と考えたほうがいい」と指摘。「消費増税は金持ちや大企業ほど負担が少なく弱肉強食の社会が進む。平等にするなら据え置きか引き下げるべきだろう」と話す。
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●『消費税のカラクリ』読了

2010年11月06日 01時00分56秒 | Weblog

『消費税のカラクリ』、10月に読了。斎藤貴男著、講談社現代新書。2010年7月第1刷。

 新書の質についての批判を見聞きするが、本書は是非多くの人に読んでもらいたい消費税の本質に迫る良書である。

 出だし「はじめに」(pp.3-6)から、著者の怒り爆発。
 「徴税当局とマスコミがタッグを組んだ、長年にわたるミスリードのせいばかりだとは言わない。そんなものに易々と騙されてきた、知っておかなければならない側、納税者国民自身の責任も重大だ。/・・・消費税増税のハードルは、大きく・・・。①逆進性、②益税、③消費ないし景気を冷え込ませてしまう可能性。・・・。/・・・本書が追求しようとしているのは、・・・これらとは異なる位相のカラクリだ。/・・・。/その代わり、この国の社会は大変な混乱に陥るはずである。中小・零細の事業者、とりわけ自営業者がことごとく倒れて行く。正規雇用から非正規雇用への切り替えがいっそう加速して、巷にはワーキング・プア失業者が群れを成す光景が見られることになるだろう。自殺に追い込まれる人々がこれまで以上に増加するのも必定だ」。多国籍企業や大企業だけが栄える仕組み。

  「第一章 消費税増税不可避論をめぐって」
  「第二章 消費税は中小・零細企業や独立自営業者を壊滅させる」
  「第三章 消費者が知らない消費税の仕組み」
  「第四章 消費税とワーキング・プア」
  「第五章 消費税の歴史」
  「第六章 消費税を上げるとどうなるのか」

 「政府税調答申と同発想」の劣化著しい朝日新聞社説、「・・・もはや消費税増税は既定路線、歯向かう者は非国民だとでも言わんばかりの筆致が強烈だ」(p.14)。
 麻生太郎政権の「定額給付金」や鳩山由紀夫政権の「子供手当」は、「バラマキの人気取りプラス「消費税率を引き上げて・・・、引き上げなければ危険度を高めた財政事情が後の世代にツケ回しされていくのだぞ」との脅しを兼ねた一石二鳥、予定調和、詰将棋」(p.16)。そして、「・・・北欧のような福祉国家に生まれ変わろうとしているわけではないのは明白である」(p.17)。
 「・・・日本経団連が幾度となく、消費税率の引き上げと法人税減税をセットで求める提言を繰り返してきた。・・・当時の奥田碩(ひろし)日本経団連会長(トヨタ自動車会長=・・・)の名を採って〝奥田ビジョン〟・・・」(p.18)。ふざけた大企業の論理と論法。「あらゆる存在は経済成長のために捧げられるのが当然で、その牽引車たる多国籍企業、巨大資本こそがこの世の主人公なのだという自意識に溢れた提言だった。税制にも成長を促すか補完する道具としての役割ばかりを求めている。公正さとか法の下の平等とか、憲法で定められた生存権や財産権に照らしてどうかといった理念への配慮は皆無に等しい。・・・それで割を食う連中を生かしておいてやる費用ぐらいは、食わせれもらっているお前たち下々が出してやりなさい、という論法であるようだ」(p.24)。
 「・・・所得税が基幹税としての機能を失ってしまった・・・。あからさまな金持ち優遇税制。/・・・この間には住民税の累進課税も大幅に緩和された。・・・完全フラット化」(p.25)。自民党の金持ち・大企業優遇の系譜。もちろん、トドメはこの二人。「財界の主導で進められた規制緩和、構造改革の、これも一環だった。彼らの基本的な発想を、当時も現在も構造改革の理論的支柱であり続けている竹中平蔵・慶応義塾大学教授(経済学)・・・。同教授が小泉純一郎政権の経済財政担当相に抜擢・・・」(p.27)。

 驚きなのは、国税滞納額が最悪であるという点。ただし、わざと滞納しているということではなく、払えない状況に追い込んでいる点を誤解してはいけない。「・・・消費税には、しかし、致命的な欠点がある。・・・。/消費税は、国税のあらゆる税目の中で、もっとも滞納額が多い税金なのである。/・・・滞納額全体のなんと45.8%を占めている。/・・・消費税込みで提示された金額を支払えなければ何も買えない。ということは、一円だって滞納されることなどありえないはずなのに」(p.29-30)。
 つまり、上位の会社に「・・・請求書の上では消費税を転嫁できたことになってはいても、その分も含めて単価を引き下げられているわけです」(p.42)、中小・零細の事業者、自営業者は。「価格に転嫁できない中小・零細業者」(p.44)。
 我々の大きな誤解。「そうなるように徴税当局は世論操作してきた」(p.66)。「そもそも消費税とは、消費者が負担する税制だと伝えられてきたのではなかったか。/問題は、その説明が意図的な嘘であったことなのである。消費者は自らが消費税を負担しているつもりでいる。ところが法律上、納税義務者は事業者すなわち個人事業者や法人であって、消費者ではない。それぞれの意識と立場とのギャップは、消費税という税制の実態をきわめて複雑にし、かつ、いわば観念の世界にさえ近づけてしまっている」(p.43)。「・・・何かを買うたびに消費税を支払っているつもりでいるのにすぎない」(p.66)。
 中吊り広告による世論操作。「自営業者のすべてが脱税の常習犯であるかのような印象を植え付け、とりわけ給与所得者の不信感を煽って敵視させる目的としか考えられない。満員電車に揺られて苛立っているサラリーマンには、実に効果的だったのではあるまいか。/・・・国税庁の悪質なプロパガンダ・・・」(p.67)。

 税務署員の〝消費税シフト〟(p.74)。「長年にわたって消費税を滞納している納税義務者を、税務署の最前線では〝優良事案〟と呼んでいます。取り立てれば上に褒めてもらえるからで、しかも手段を選ぶ必要はないとまで指示されている」。倒産しようが、廃業になろうが、さらには、自殺しようがお構いなしという税務署の発想に。消費税増税は、自殺大国ニッポン(p.79以降)を加速させることは必定。「・・・事情はどうあれ滞納イコール悪、罪、であり、それを減らす職務は絶対の正義という考え方」(p.75)。「・・・非道な差し押さえを戒めてもいるのだが、・・・ほとんど無視されているのが実情・・・」(p.77)で、それなりに存在していた取り立てのルールが形骸化し、「高利貸しの取り立て」と同化の方向へ。
 民営化の流れはこんなところにまで。「政府の構造改革の一環として地方税の徴収の民間委託を急がせて、既に大阪府など多くの自治体が実施に踏み切ってい」(p.76)て、国税もその流れにある模様。

 何もかもが馬鹿馬鹿しくなった者の叫び。「消費税なんかお客さんからもらえやしないよ。貰っていない税金をお前が払えって税務署が言ってくる。何だあ、そりゃあ!?」(p.86)。そして、自らの命を断つ。
 敗訴した者の記憶。「・・・税務署・・・「お金を借りるところがあるやないですか」/―――府や市の事業融資はもう受けていますので。/「他にあるですやん」/―――消費者ローンのことですか。/「そういうこともありますね。」/税務署員は、サラ金から借りて来いと言いたかったらしい」(p.99)。そして、帰らぬ人に。夫人は、「あの人は初めから消費税を怒っていました。いまは三%でごまかされとるけど、。じきに二〇%くらいに上げられるでと、・・・。/うちの商売は下請けのまた下請けでしたから、元請けさんに消費税分を請求し、払ってくれたとしても、必ずそれ以上の値引きを強いられる。いくら働いてももうからない・・・。/消費税に殺されたとですよ」。そういう仕掛け。

 こう云った悲劇とは裏腹に、輸出戻し税という仕掛けも。「零細事業者が直面させられている悲惨とは裏腹に、消費税は大企業、とりわけ輸出比率の高い大企業にとっては実に有利に働く。かれらは消費税という税制によって、莫大な不労所得さえ得ていると断定して差し支えない」(p.100)。かたや「貰っていない税金をお前が払え」といわれ、かたや大企業は「不労所得」を得ているわけ! 馬鹿らしい。
 「・・・消費税は国内での取引に課税されるものであり、輸出や国際輸送など輸出に類似する取引では免税される。・・・/・・・輸出取引については、国内で発生した消費税負担は完全に除去されることに」(pp.100-101)なる。消費税を納めないどころか、多額の還付金。「・・・最も多額の還付金を得たのはトヨタ自動車で、約三千二百十九億円」(p.103)!! あーっ・・・、本田技研工業までが。
 さらに、前述の下請けいじめで富を相乗的に集積。「・・・下請け単価が引き下げられて・・・。・・・税制を通じて公然と補助金を与えることに・・・。・・・いわば「かくれた補助金」であり、憲法の意図する財政議会主義(憲法八十三条、八十五条)に違反する」(p.104)。消費税増税で恰も企業にも痛みがあるような顔をし、それとセットで法人税率の引き下げまで要求する面の皮の厚さ。「じつは、彼らは消費税の税率をいくら引き上げても痛痒を感じないのである。彼ら巨大企業は経済取引上強者であり、常に価格支配力を有しており消費税を自在に転嫁できる」(p.105)。一体誰に? 自明である。「彼らは確実に顧客に前転するほか仕入先・下請け業者にも後転する」。さらに厚顔なことに、「しかも、輸出戻し税制度により消費税を全く納めないばかりか巨額の還付を受ける」。全く腹立たしいことに、「還付金額は税率が上がれば上がるほど大きくなる」。竹中平蔵子分や小泉純一郎親分が構造改革・自由主義化を進めるはずだ。「つまり、彼らは消費税の税率引き上げによりまったく被害を受けないばかりか、場合によると後転効果により利益を生むことさえ可能なのである」。

 大企業は肥え太り、失業者やワーキング・プアは巷に溢れる。「仕入れ税額控除」の悪用により脱税(p.114)。「正社員らに支払う「給与」」が仕入れ税額控除の対象(p.114)。「いわゆる格差社会、ワーキング・プア問題の重要なテーマである非正規雇用は、他ならぬ消費税が拡大させたという現実をご存じだろうか」(p.112)。マスコミはそんなことを報じることはありえないので、我々が知る由もない。簡単に言えば、「派遣に切り替えると合法的に節税できる消費税」(p.116)。竹中平蔵子分や小泉純一郎親分が褒めたたえる〝賢い経営者〟のやっていること。「不正など働かなくても、実際に正規の雇用を出来るだけ減らし、必要な労働力は派遣や請負、別の事業者に外注する形にすれば、それだけで大幅な節税ができてしまう。そのため派遣子会社を設立するやり方も、近年ではごく一般的になっている。/・・・たとえば派遣子会社の設立と閉鎖をめまぐるしく繰り返す手法が、ありがちなパターンだ。/・・・消費税とは、企業経営者をして、そのような行動に誘(いざな)う税制なのである」。「経済のグローバリゼーションは、それほどまでに人件費削減を求めてきた。」(p.117)。
 「・・・それが節税にも通じるとなれば一石二鳥。・・・消費税とはもともと、そうなるように制度設計されたシステムだったのではないかとさえ考えられる」。どこが広く公平に徴税できる税制なのか? 巨大資本は喜び勇み、一般市民というよりも、自営業者や非正規社員など弱者にさらなる痛みをもたらすという悪税である。
 正社員のリストラと派遣社員の増加を早くから指摘していた朝日新聞記者(2000年10月3日付朝刊「時時刻刻」欄、くらし編集部の西前輝夫記者)がいた(pp.121-123)。非正規雇用化の理由は「・・・納める消費税も少なくてすむからだ。/・・・。/ある税理士は、「消費税は結果的に、売上に対して正社員の給与比率が高い会社ほど、納付額が多くなる仕組み。利益を確保するために、派遣社員などを雇い納付額を減らそうとする力が働くことは避けられない」と分析している」。

 おまけに、世間や政治家の大合唱やマスメディアの誤誘導・・・、「社会保障の財源にはもっともふさわしくない消費税」(p.131、133)。
 最後は、消費税の歴史から見えてくるもの(p.139)。「・・・リクルート事件・・・竹下首相や中曾根元首相、宮沢喜一・・・、安倍晋太郎・・・、渡辺美智雄・・・らに関連会社の未公開株をばらまいていた事実が発覚・・・腐敗しきった政治のツケを増税で埋め合わせる構図がくっきりと浮き彫りにされていた」。
 新自由主義・構造改革路線。ガットGATT、ブレトン・ウッズ体制、IMF、IBRD(国際復興開発銀行=世界銀行)、WTO。前述の「還付金額の最大化」(p.158)。

  導入してしまえば、あとはどうとでも。「一連の特例措置は、単に甘いだけのアメではなかった。零細な事業者は舐めた瞬間に周囲から石つぶてを投げつけられ、糖衣が溶けてくれば爆発するように仕組まれた、いわば時限爆弾が練り込まれたアメだった」。そして「形骸化する特例措置に税率アップが追い討ち」(p.178)する仕掛け。
 安易に外国と比較し、増税を煽る愚。「税制の仕組みとしては似ていても、ヨーロッパの付加価値税と日本の消費税とを安易に比較すること自体がどうかしている」(p.159)。そのくせ、「イギリスにもあった中小・零細業者の不利益」(p.165)は無視し、いつもは〝同盟国〟アメリカばかりを持ち上げるくせに、「米国が付加価値税を導入しない理由」(p.169)にはけっして一言も触れない。

  もう充分だろう。公平どころか、「消費税の現実を見ると、実質的には中小企業負担税になっている。益税どころか価格格転嫁できずに『損税』・・・」(p.192)。
 「政治的立場を超えた本質議論を」との呼びかけ(p.196)。「もはや消費税の本質に目を向けようとする者は、それだけで思想的に偏向しているかのように受けとめられる時代が導かれてしまった。本書にもその種の安易なラベリング(レッテル貼り)の矛先が向けられる可能性が少なくない・・・」。
 段階的消費税増税の裏(p.199)。「・・・常に〝駆け込み需要〟を促すことができるはずとの算段らしい。・・・。/人々の生活の隅々に関わる税制が、これほど傲慢で、いいかげんな屁理屈に基づかれてよいものだろうか。・・・。/・・・何らの根拠も示されてはいなかった」。
 以前のブログにコピペしたように、少なく見積もった数字ではあるが、自殺者3万人時代。「交通事故死のざっと六倍だ。・・・。/・・・非正規雇用や〝名ばかり管理職〟、パワハラ、リストラの悲惨が広く知られた企業職場の実態ばかりに関心が偏りがちな傾向を否めない。/・・・ただ、統計を少し丹念に眺めていくと、自殺者に占める「自営業・家族従業者」の割合が、そもそもの分母に照らして異常に多いことに気づかされるのである」(pp.202-205)。「・・・消費税増税は無関係だなどとの言葉遊びをしている場合でもない。/・・・。/・・・九七年に三%から現行の五%へと税率が引き上げられた消費税増税が自殺禍と関係なかったなどとは到底言えない」(p.205)。「十二年連続で三万人を超えてきた年間自殺者数は、場合によっては五万人、十万人へとハネ上がっていくのではないか」(p.206)という恐ろしい予測。
 増税の前にやることがあるでしょ。思想無き「事業仕分け」などではなくて。「ジャーナリズムの最大の役割は権力のチェック機能だ。対案づくりは本義ではないが・・・。/・・・。/財政難には徹底した無駄の削減が第一だ。すると最近は、次のような指摘が現れる。・・・「事業仕分け」が、消費税増税の露払いの役割を果たすことになるという。・・・。/・・・だが事業仕分けを基準に消費税が語られるようなことがあってはならない。/なぜなら事業仕分けには思想がない。俎上に載せられた各事業の是非を判断することはなく、あくまでも現状を肯定しながら、費用対効果の成績を問うシステムでしかないからである」(p.206)。
 斎藤さんの提案はシンプル(p.209)。「不公平税制をただせば税収は増やせる」。「歳入面では不公平税制の是正である。・・・フラット化され、金持ち優遇・・・所得税の累進税率を二十年前のレベルに戻すだけで、所得税収はたちまち倍増する計算だ。・・・。/法人税が聖域のように扱われるのもおかしい。・・・日本の法人税率は高くないし、・・・外国の法人よりもずっと軽くなっている。中小零細事業者が自腹を切って支払うのを予測しながら見て見ぬふりを決め込み、赤字でも取り立てる消費税率を引き上がるよりは、利益にかかる法人税の増税の方が、はるかに公正である。/・・・法人税への依存を軽減しなければ、大企業の工場だけでなく本社機能や有能な人材まで海外に流出してしまうぞといった恫喝など受け流そう。彼らの身勝手は常軌を逸している。また企業の立地要因はその地域の市場規模や労働力の質・量とコスト、補助金をはじめとする優遇制度、インフラの程度、安全性や環境対策等々での各種規制など多様かつ複雑であり、税率だけで決定されることなどあり得ない。洋の東西を問わず、一般に多国籍企業と本国とは切っても切れない関係にあるのが常である。創業の理念もアイデンティティもかなぐり捨てて、デラシネの巨大資本としてのみ存続していく覚悟でもない限り、日本企業にとっては日本以上に有利な国はないはずだと私は考えているのだが、いかがだろうか。/不公平税制の是正とは、すなわち構造改革路線などを通して「応益負担」の発想に偏ってしまった税制を、「応能負担」の原則に立ち返らせることだ」。また、「本気で特別会計の見直しを」、本気でだ。「私見では、ここ二十年近く、毎年五兆円弱の予算が防衛関係費に注ぎ込まれ続けている状況は異様だ。日本全体をアメリカの世界戦略に捧げて行くかのような奔流は何としても改められなければならない・・・」(p.211)。大賛成。

 小泉純一郎政権以前の構造改革を牽引していた中谷巌教授の後悔、〝懺悔の書〟。「消費税増税には、彼らによって生産性が低いとみなされた事業者を掃討する目的も込められているようだ。・・・。/・・・構造改革路線の、そのまま延長線上にある発想」(p.214)。「国全体の生産性を向上させるためなのだから、それで職や生活を奪われる者が現れたとしても、そんなものは小さな〝部分利益〟が損なわれるだけのこと。さっさと諦めて、生き延びたければ自分の家族を追い詰めた大資本に尻尾を振り、彼らのために奉仕せよ、というのである」(p.216)。

 「全国どこの町も単色に染まった日本列島は美しいのだろうか。/・・・世の中の主人公は多国籍企業でも政府でも、それらと直結するエリート層だけでもないのだ。/一人ひとりの人間が、みんな、互いに迷惑をかけ合いながら、けれども共に、支え合って生きている。誰もが共感し合える税制を目指そうではないか」(p.217)。
 結論。「・・・本書では、対案にこれ以上こだわらない。消費税増税は日本社会から最低限の公正さまでを奪い、膨大な死人を出すに違いないことだけを理解してもらえればそれだけで出版の意義は果たせている」(pp.212-213)。

 どの章でもいい、是非手にとって読んでもらいたい。
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●『本田宗一郎との100時間 燃えるだけ燃えよ』読了

2009年10月01日 07時57分01秒 | Weblog

『本田宗一郎との100時間 燃えるだけ燃えよ』、9月に読了。城山三郎著。講談社文庫。1988年2月刊(1993年12月第12刷)。

 「それはまた、十年前、本田と副社長の藤沢の二人が、会長にも相談役にもならず、一気に最高顧問まで引き退った鮮やかな姿を思い出させる」(p.21)。「代々きれいな社長交代」(p.48)。

 ストップ・ウォッチ。「「・・・よく考えなくちゃ。ストップ・ウォッチで動けるほど、人間は働けませんよ。それでは、人間が参ってしまう」/人間本位という考えは、いまも生きている。/・・・フリー・フロー・システムといい、コンベア・ラインは一律のスピードでは流れない。/・・・人間がまいることはないし、おそいところへは助け合いに走ったりして、人間的なつながりも深まる。/それでいて、この人間的なラインのスピードは、これまでの一律のコンベア・ラインの流れに負けない、という」(p.79)。トヨタや、小泉改革なるものにおいてそれを郵便局などに持ち込んだことへの痛烈な批判になっていることが面白い。
 「本田は、投資のために土地を買ったことはない。・・・/その本田技研もまた本業一筋で、土地ブームなどですすめられても、ついぞ土地へ手を出さなかった」(p.108)。

 佐橋滋通産次官との対立(pp.114-115)。

 「社宅はできるだけ作るべきではないし、・・・/「社宅は城下町の遺物だ」/と本田はいう。/・・・むしろ、社員にとって有害である。・・・企業といっても、人間が主体です。・・・それには平等感というか、一人一人が大事にされているという認識がないと・・・。その点では、世界中でうちぐらい人間を考えている企業はない、と思います」(pp.123-124)。

 「「例えばトヨタ・日産クラスが七〇〇〇部買い上げてくれたとすると、本田さんを書いたとき、ホンダがどれだけ買い上げたと思う」/・・・「桁ちがいに少ないでしょうね」/三鬼は大きくうなずいた。/「桁ちがいどころか、三桁もちがう。つまり、たった七冊なんだよ」/本田とはそういう人ホンダとはそういう会社なのである」(pp.140-141)。

 本田宗一郎と藤沢武夫、トヨタとは明らかに違うその思想と文化。「・・・何よりもその私心私欲の無さである。・・・/二人は公私混同もきびしく戒め、ついぞ、その会社を私物化することなく、同族化することもなかった。/・・・二人とも金には潔癖だった・・・」(pp.236-237)。「金もうけとは別のものを―――。それを思想というのか、文化というのか。/・・・「トヨタが新しいものを生み出してるって、あんまり聞かねえな。お金持ってるとか、利益生みだしてるとか、たいへんなものらしいが、金融業ならいいけど、生産企業が・・・」」(pp.244-245)。

 「―――仮に息子さんがホンダに入りたいといったら。/「入れないね、わたしは。」・・・」(p.288)。

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