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●《この国の社会と人心は、主に小泉純一郎政権と安倍政権によって破滅…》(斎藤貴男さん)…イラク人質事件以降、何も変わっていない

2021年02月07日 00時00分45秒 | Weblog

(2020年12月31日[水])
西日本新聞のコラム【春秋/イラク人質事件の今井さんは今】(https://www.nishinippon.co.jp/item/n/675178/)。

 《2004年の「イラク日本人人質事件」で、帰国後にバッシングを浴びた3人のうちの1人、当時18歳の今井紀明さんの「その後」を伝える報道が近年増えた ▼12年にNPO法人「D×P(ディーピー)」を大阪でつくり、孤立しがちな10代の若者を支援してきた》。

   『●斎藤貴男さん《この国の社会と人心は、主に小泉純一郎政権と安倍政権
      によって破滅…。菅氏も安倍路線の継承を誇らしげにうたっている》
    「斎藤貴男さんは、このコラムの結びで、《この国の社会と人心は、
     主に小泉純一郎政権と安倍政権によって破滅させられた。菅氏も
     安倍路線の継承を誇らしげにうたっている。少しはまっとうな世の中を
     取り戻すのに、あと1世紀は必要だろう》と仰っています。ブログ主は
     どうしても、小泉純一郎氏を信じることができない。イラク人質事件での
     自己責任論や、国会でのふざけた答弁
     「自衛隊の活動しているところは非戦闘地域」、「自民党をぶっ壊す
     どころか「日本をぶっ壊した」「日本の社会や人心をぶっ壊した
     ことに何の責任も感じていないことから。《前川喜平氏…魯迅
     「阿Q正伝」を思い出したといい、〈愚かな国民は愚かな政府しか
     持てない〉とも述べた。同感だ。勝ち馬に乗りたがるのが庶民感情の
     常とはいえ、ここまでくると原始人にも劣る》…。自身を例外視する
     つもりはないが、ニッポン人の《民度》は情けないほどに低い。
     何時までこのような《社会》《人心》の崩壊は続くのか…。」

 6年ほど前の映画『ファルージャ イラク戦争日本人人質事件…そして』のWPによると、《一方、人質事件のもう一人、今井紀明さんは、5年の間、対人恐怖症に苦しんだ。現在は、大阪で不登校や、ひきこもり経験のある通信制高校に通う若者を支援するNPOの代表をしている。社会から拒否された存在に、昔の自分をみて何かできないかと思ったという》。
 伊藤めぐみ監督は《イラク戦争は、社会に関心を持つきっかけだったんですが、その後、人質事件ですごいバッシングが起こったのを見たことも大きかったですね。人質だった3人に自分を重ね合わせるところがありました。3人が批判されているのを見て、自分も批判されているように感じるというか……。国と違うことをするとあんなふうに冷たい目で見られるんだとか、世の中に対してもの申すことは、すごく怖いことなんだなって感じて、すごく萎縮する自分がいましたね》…と。
 あれから、16年ほどか。この国は少しは変わっただろうか? 7年8カ月に及ぶ「悪夢」からようやく覚めたと思えば、アベ様の政の全てを《継承》する「地獄」の中…。斎藤貴男さんのお言葉、《この国の社会と人心は、主に小泉純一郎政権と安倍政権によって破滅…。菅氏も安倍路線の継承を誇らしげにうたっている》。

   『●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(1/2)
   『●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(2/2)
     「しかし、彼女ら (郡山さんと今井さん) の予想は全く裏切られ、
      「自己責任」とばか騒ぎし、醜悪なバッシングの嵐。解放後、
      「生まれ故郷に帰るのに「覚悟」が必要」(p.141) な国って、
      いったい何?? 解放後の「新たな不安と恐怖」(p.147) は、
      拘束時以上だったのではないだろうか…。」

   『●『ご臨終メディア ~質問しないマスコミと一人で考えない日本人~』読了
   『●『ルポ 改憲潮流』読了(2/3)
   『●『だまされることの責任』読了(2/3)
   『●『靖国/上映中止をめぐる大議論』読了(3/3)
   『●『安心のファシズム ―支配されたがる人びと―』読了
   『●『それでもドキュメンタリーは嘘をつく』読了(2/2)
   『●見損ねた
   『●『筑紫哲也』読了
   『●『ルポ戦場出稼ぎ労働者』読了
   『●「自己責任」を叫ばれた人の立場
   『●「自己責任」バッシングの嵐:「話す」ことも許さず、「話しても」伝わらず
   『●「自己責任」バッシングと
      映画『ファルージャ イラク戦争日本人人質事件…そして』
    「当時の「自己責任」バッシングに関連して、映画『ファルージャ 
     イラク戦争日本人人質事件…そして』という映画が出来ています。結局、
     アメリカによるイラク侵略の理由であった「大量破壊兵器」などどこにも
     見つからず、サダム・フセイン大統領は無残に死刑・私刑にされ、そして、
     ブッシュ氏は靴を投げつけられ、「犬」と蔑まれています。それ以上に
     問題なのは、未だにイラク国内は混乱の最中である点……。「……悲劇が
     続くイラク。「「犬」に靴を投げつける」くらいでは、
     とても気がおさまらないでしょう」。高遠菜穂子さんは、今も、
     イラク支援を続けておられます。」

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https://www.nishinippon.co.jp/item/n/675178/

春秋
イラク人質事件の今井さんは今
2020/12/20 10:40

 2004年の「イラク日本人人質事件」で、帰国後にバッシングを浴びた3人のうちの1人、当時18歳の今井紀明さんの「その後」を伝える報道が近年増えた

▼12年にNPO法人「D×P(ディーピー)」を大阪でつくり、孤立しがちな10代の若者を支援してきた。いじめや虐待で孤立させられた人、大人に否定され自信を失った人が少なくない

▼生きづらさを抱えた姿が自分の過去と重なる。今井さんは高卒後イラクに行った。米軍の劣化ウラン弾による子どもたちの被害を知りたかった。武装勢力に拘束され、聖職者協会の仲介で解放・帰国後に「自己責任だ」などと批判された

街中で突然殴られたことがある。どこに行っても冷たい視線に追い掛けられた。自分を否定される日が続き、もうどうでもいいや、と死を思ったこともあった

日本の社会は他者に不寛容な人を増やしてきたイラク人質事件被害者へのバッシングは初期の一例だろう。浴びせる言葉はバカヤロー」「死ね」「非国民」…。今井さんに山ほど届いた手紙類の9割強は匿名だ。不寛容さを増す社会ではネット上でターゲットが日々物色され、匿名の攻撃にさらされる

▼連絡先、名前が分かる人に今井さんは手紙を書いた。やりとりを何度かするうちに気持ちを変えた人がいた。自分の障害を告白して最後は「がんばって」と書いた人も。そうした言葉の先に現在の今井さんはいる。
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●「自己責任」バッシングと映画『ファルージャ イラク戦争日本人人質事件・・・そして』

2014年09月05日 00時00分33秒 | Weblog


映画『ファルージャ イラク戦争日本人人質事件・・・そして』のWP(http://fallujah-movie.com/)より。
The Huffingtn Postの古い記事【映画「ファルージャ イラク戦争 日本人人質事件...そして」 自己責任批判から10年、28歳の伊藤めぐみ監督の視点】(http://www.huffingtonpost.jp/2014/02/12/fallujah-movie_n_4741992.html)。

 「「自己責任」ってなんですか? プロデューサー 広瀬凉二/・・・・・・激戦地ファルージャで人質となった、三人の日本人を苦しめてきたのが「自己責任」という言葉・・・・・・自己責任とは誰かに問われるものではなく、「私は自分らしく生きているか?」と自らに問うことだと思うのです」・・・・・・。
 当時の「自己責任」バッシングに関連して、映画『ファルージャ イラク戦争日本人人質事件・・・そして』という映画が出来ています。結局、アメリカによるイラク侵略の理由であった「大量破壊兵器」などどこにも見つからず、サダム・フセイン大統領は無残に死刑・私刑にされ、そして、ブッシュ氏は靴を投げつけられ、「犬」と蔑まれています。それ以上に問題なのは、未だにイラク国内は混乱の最中である点・・・・・・。「・・・・・・悲劇が続くイラク。「「犬」に靴を投げつける」くらいでは、とても気がおさまらないでしょう」。高遠菜穂子さんは、今も、イラク支援を続けておられます。

   『●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(1/2)
   『●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(2/2)
     「しかし、彼女ら (郡山さんと今井さん) の予想は全く裏切られ、
      「自己責任」とばか騒ぎし、醜悪なバッシングの嵐。解放後、
      「生まれ故郷に帰るのに「覚悟」が必要」(p.141) な国って、
      いったい何?? 解放後の「新たな不安と恐怖」(p.147) は、
      拘束時以上だったのではないだろうか・・・。」

   『●『ご臨終メディア ~質問しないマスコミと一人で考えない日本人~』読了
   『●『ルポ 改憲潮流』読了(2/3)
   『●『だまされることの責任』読了(2/3)
   『●『靖国/上映中止をめぐる大議論』読了(3/3)
   『●『安心のファシズム ―支配されたがる人びと―』読了
   『●『それでもドキュメンタリーは嘘をつく』読了(2/2)
   『●見損ねた
   『●『筑紫哲也』読了
   『●『ルポ戦場出稼ぎ労働者』読了
   『●「自己責任」を叫ばれた人の立場
   『●「自己責任」バッシングの嵐: 「話す」ことも許さず、「話しても」伝わらず


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http://fallujah-movie.com/production_note.html

プロダクションノート

「自己責任」ってなんですか?
プロデューサー 広瀬凉二

この映画を観てくださる方に私が問いかけたいのは、その一言です。2004年4月、開戦から1年が過ぎたイラク戦争の激戦地ファルージャで人質となった、三人の日本人を苦しめてきたのが「自己責任」という言葉でした。イラク戦争は2001年に起きたいわゆる9・11事件に逆上したブッシュの米国が反米イスラム勢力への報復として一方的に仕掛けたものでした。それは「大義なき戦争」といわれ国際的に反対と非難を浴び、日本の世論も反対が多数を占めていました。しかし当時の小泉政権は開戦を支持し、米軍と同盟軍(英国など)の後方支援と現地の人道支援をするため自衛隊を派遣したのです。

ファルージャのイラク武装勢力が人質解放の条件としたのが、「自衛隊の撤退」でした。日本政府は即座にその要求を拒否しました。三人の釈放か処刑か、期限が迫る中で、政府関係者から発せられたのが激戦地へ出かけていった三人の自己責任だ。」という声でした。それがメディアに採り上げられ、ネットを通じてヘイトスピーチのような悪意に満ちたバッシングとなっていったのです。

三人は彼らを支援するNGOやイラクの宗教指導者の尽力で釈放され帰国しました。しかし日本で彼らを待ち受けていたのは「国益を損ない世間を騒がせた自己責任をとれ」という非難の嵐した。

そして9年後私は「映画ファルージャ」をつくりました。それはテレビドキュメンタリーの現場で40年間仕事をしてきた私自身への「自己責任」と思ったからです。自己責任とは誰かに問われるものではなく、「私は自分らしく生きているか?」と自らに問うことだと思うのです。



http://fallujah-movie.com/intro.html

イントロダクション

イラク戦争から10年  

当時、日本国内でバッシングが吹き荒れた「日本人人質事件」のことを覚えているだろうか?

イラク支援のために行った日本人3人。しかし、ファルージャの街で地元の武装グループによって日本政府へ自衛隊撤退を要求するための人質として拘束された。

当時、日本政府はアメリカが始めたイラク戦争を支持。「人道復興支援」のためとして、イラクに自衛隊を派遣していた。日本では3人の行為が国に迷惑をかけたとして「自己責任」を問う声が広がった。

この映画は、はからずも人質となった、高遠菜穂子さん、今井紀明さんの現在の姿を追い、そして未だ戦火の止むことのないイラク、ファルージャの生々しい現実を捉える。


先天性異常児、国内紛争――まだ戦争が終わっていない国イラク  

高遠菜穂子さんは、事件後のPTSDを乗り越え再びイラク支援を続けていた。NGOなどの団体に加わるのではなく、一人でイラクに通い支援と調査を行っている。イラクでの先天異常児は戦争以後、今も増え続けているのが実態だ。またファルージャで撮影中にも現政府と、対立する宗派の抗争も発生していた。

一方、人質事件のもう一人、今井紀明さんは、5年の間、対人恐怖症に苦しんだ。現在は、大阪で不登校や、ひきこもり経験のある通信制高校に通う若者を支援するNPOの代表をしている。社会から拒否された存在に、昔の自分をみて何かできないかと思ったという。


それぞれにとってあの戦争、あの事件が引き起こした問題はまだ終わっていない  

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http://www.huffingtonpost.jp/2014/02/12/fallujah-movie_n_4741992.html

映画「ファルージャ イラク戦争 日本人人質事件...そして」 自己責任批判から10年、28歳の伊藤めぐみ監督の視点

The Huffington Post                   | 執筆者: 阿部結衣子

投稿日: 2014年02月13日 10時15分 JST 更新: 2014年02月14日 20時11分 JST


2004年4月にイラクで起きた、「日本人人質事件」のことを覚えているだろうか。

イラク支援のため現地に入った日本人3人が、ファルージャの街で地元の武装グループにより人質として拘束された。彼らの要求は「自衛隊の撤退」だった。アメリカが主導し2003年に開戦したイラク戦争。当時、日本政府はこの戦争を支持し「人道復興支援」のためとして、イラクに自衛隊を派遣していた。3人は数日後、無事解放されるが、帰ってきた日本では、3人の行為が国に迷惑をかけたとして「自己責任」を問う批判の声が高まっていた。

あれから、10年。その時、人質となった、高遠菜穂子さん、今井紀明さんのその後を追ったドキュメンタリー映画「ファルージャ イラク戦争 日本人人質事件…そして」が公開されている。監督の伊藤めぐみさんは、テレビ番組の制作会社でADとして働く28歳。イラク戦争開戦当時、高校3年生だった伊藤さんが、なぜ人質事件の映画を撮ったのか。高遠さんと今井さんの今を紹介すると共に、この映画の制作するに至った背景を伊藤さんに聞いた。


■高校生でデモに参加「イラク戦争は自分にとって出発点」

イラク戦争開戦直前、高校3年生だった伊藤さんはイラク戦争に反対するデモに参加していた。それまで、伊藤さんにとって「戦争」はどこか遠くの出来事だったが、日本政府がイラク戦争を支持したことで、初めて「自分の戦争」という意識を持つようになったのだという。

「イラク戦争は、社会に関心を持つきっかけだったんですが、その後、人質事件ですごいバッシングが起こったのを見たことも大きかったですね。人質だった3人に自分を重ね合わせるところがありました。3人が批判されているのを見て、自分も批判されているように感じるというか……。国と違うことをするとあんなふうに冷たい目で見られるんだとか、世の中に対してもの申すことは、すごく怖いことなんだなって感じて、すごく萎縮する自分がいましたね」

大学卒業後、伊藤さんはテレビの番組制作会社に就職する。取材を通じていろんな人と向き合うなかで「自分自身を隠している」という思いを抱くことがあったという。

「人にさらけ出してもらって、話を聞かないといけないのに、自分自身がうまくさらけ出せない。そういう感覚を持つようになって、なんだろうこれ、と思っていろいろたぐり寄せていくと、イラク戦争の時の自分が原点だったんですね」


■「伝えたいことはイラクにある」高遠さんはイラク取材を提案

2012年、伊藤さんは人質事件の被害者たちのその後を追うため、映画「ファルージャ」の企画書を本格的に書き始める。そんな伊藤さんに、高遠さんは「伝えたいことはイラクにある」とイラクでの取材を提案した。上映された「新宿バルト9」で行われたトークイベントで、高遠さんは当時をこう振り返る。


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テレビの企画書は今までに、何度か送ってもらったことはあるんですけれど、『伝えたいことは、イラクにあるので、(私が短期滞在している)イラクに来てください』という話をすると、だいたい企画は立ち消えになっていました。彼女もそうだろうな思ったんですけれども、最初から『行きます』と言ったんですよね。

そういうことがあって、若いけど、若いから逆に真剣に、事件だけじゃなくてこの10年間を全部見てきているのかな、イラク戦争からはじまり、社会のこととか全部それを継続して、自分のこととして見てきているのかなって思ったんです。自分と同じような時間の過ごし方をしていたのかなって。

(2013/12/07 映画『ファルージャ』トークイベントにて)
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伊藤さんはイラクへ取材に行くことを決めたが、高遠さんは伊藤さんをイラクに連れて行くことを「怖い」と感じていたという。

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「来ないと始まらない」とは言ったものの、お嫁入り前の娘さんですから、なんかあっちゃいけないし、すごい緊張はしたし、それは怖かったです。今井くんがイラクに行きたいと言った時も「親御さんに合わせてくれ」って、2回ご家族に会いに行って、「何があるかわからないから、それでもいいんですか」ということを今井くんのお母さんたちにも、何度も念押しをした。

伊藤さんのご両親の承諾をとにかく得てきてほしいと、それから会社の社長さんにもよくよく話し合ってきてほしいし、もし何かあれば、あの時のバッシングじゃすまない、へたをすれば会社もダメになってしまうかもしれない、くらいの話はしましたよね。それでも、「許可をとってきました」と言ってきて、それにはびっくりしました。

(2013/12/07 映画『ファルージャ』トークイベントにて)
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■高遠さんの今——再びイラクへ

高遠さんは現在、人質事件後のPTSD(心的外傷後ストレス障害)を乗り越え、短期でイラクに滞在しながら、個人で医療支援を行っている。戦争後から先天異常児が増え続けているイラクの実態調査も行っているという。イラクでは今も、人々の日常を切り裂くような銃撃や爆撃が起こるという。


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一番直近では3週間、イラクに行ってきました。その間に、ファルージャの市長が狙撃暗殺されて、滞在先のすぐ近くで銃撃もありました。5~8発くらいの爆弾事件もありましたし。それから、知り合いの家の窓ガラスが割れたとか、子供達を遊んでいるとダダダーッと銃撃があって、おばあちゃんに『中入れ!』っていわれて、子供達と一緒に家に駆け込んだりとか、いろいろあります。

私はビビリなので、かなり緊張はしてますよ。なので、イラクに1回行って帰ってくるとドっと疲れます。ただイラクの中でも、病院は安全な感じというか、安心はしていられるというか、セキュリティはしっかりしています。

映画には、シビアな現実ばかりが映っていますけど、普通の生活もあるわけですよ。寮にいる先生達にも、生活があり休みもあり、休日を楽しむといったこともあるわけです。子供達も普通に学校に行っている、学校で何かをやってるってときに、瞬間、日常を切り裂くように(銃撃が)起きる。

(2013/12/08 映画『ファルージャ』トークイベントにて)
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■「イラク支援をやめるなんて許さない」家族の叱咤激励でヨルダンへ

高遠さんが2004年の事件後、再びイラクに行ったのは、家族からの叱咤激励があったからだという。


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映画でも言ってますけど、(事件後、高遠さんが)寝たきりだった状況から、きっかけをくれたのはうちの母親ですね。『そこでイラク支援をやめるなんて許さない』と言われて、ヘロヘロだったんですけどヨルダンに行きました。

その時に、一緒に人道支援活動していたイラク人がイラクから、7~8人来たんですよ。爆撃で亡くなった人の映像を(彼らが)持ってきたんですけども、私は『そんなことでウジウジしてる場合じゃないんだ』っていう風に、そこで本当に思った。

日本では味わえないおだやかなイラクの家族たち、イラクの人々、イラクの友達と過ごしたということが、彼らの弱っている時、私の弱っている時をうまく支え合ってきたのかなというのはありますね。

(2013/12/08 映画『ファルージャ』トークイベントにて)
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■今井さんの今——若者を支援するNPOの代表 

高遠さんと同じく事件で人質になった、今井紀明さんは、現在、高校中退や不登校経験のある通信制高校に通う若者を支援するNPO法人D×P(ディーピー)の代表をしている。事件後、激しいバッシングに晒された今井さんは、5年間、対人恐怖症に苦しんだという。その経験が今の仕事に結びついていると、上映された「梅田ブルク7」で行われたトークイベントで語っている。


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ドキュメンタリーとして撮っていただいて思ったのは、自分はなぜ今、教育関係の仕事をしているかを改めて考えさせられました。 今はドロップアウトをした子供たちや、学校をやめた子供たちとか、不登校になった子供たちが通う通信制高校で仕事してるんですけども、その子たちって自己責任である意味で切られてしまって、そのまま進んでしまい、ニートになってしまったりする。

自己責任って区切られてしまう子供たちなんですね。自分としてはすごくそこに思い入れがあって、若者達の為に何かしたいという思いでやってるんだなという事を撮られていて気がつきました。

(2013/12/23 映画『ファルージャ』トークイベントにて)
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■「自己責任」という言葉は、挑戦者と弱者を切り捨ててしまう言葉

2013年6月にニュースキャスター辛坊治郎さんが小型ヨットで太平洋を横断中に遭難した事故でも、「自己責任」が叫ばれるなど、現在も別の形で噴出している「自己責任論」。今井さんは「自己責任」という言葉自体が挑戦者と弱者を切り捨てる言葉だと語った。


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「自己責任」というのを当事者からいうと、かなり難しいので、あまり語りたくないんですけど、この言葉自体が挑戦者と弱者を切り捨てる言葉だと思います。どんな状況でも、海外でもどんなに気をつけたとしてもこういった現状が起こってしまうことは実際にある。

この事件でいろんな事が批判に結びついてしまったんですけど、そういうことがあったりすると、行動を起こそうという人間自体の意欲を削いでしまう。プラス、弱者の切り捨ての言葉になってしまう。だから(その言葉は)気をつけながら使った方がいいんじゃないかと思います。

僕自身は辛坊さんの(事故の)時も、国民だったら誰だって助けられるべきであると思いますし、辛坊さんが昔、自己責任って批判したのも関係ない。誰だって助けられるべきだと、それはすごく思います

(2013/12/23 映画『ファルージャ』トークイベントにて)
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■映画をきっかけに「私はどうしたいのか」を考えてもらいたい

伊藤さんに、この映画で伝えたかったことを聞いた。

「こういう生き方をしなきゃいけないんです。ということを映画で言うつもりもなかったし、高遠さんたちが自己責任を果たしているかどうかを検証する映画でもないと思っています。『高遠さんはこう生きています』『今井さんはこういうことをするようになりました』『じゃ、私はどうしましょう』というのを見る人に考えてもらいたいんです」


映画「ファルージャイラクク戦争 日本人人質事件…そして」
 渋谷 アップリンク:公開中
 名古屋 シネマスコーレ:公開中~2月28日(金)
 札幌・シアターキノ:4月5日(土)~11日(金)
 大阪・第七藝術劇場:4月公開
 神戸・元町映画館:4月公開
 全国順次公開予定

公式サイト:http://fallujah-movie.com/
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●「自己責任」バッシングの嵐: 「話す」ことも許さず、「話しても」伝わらず

2014年04月26日 00時00分02秒 | Weblog


(ずいぶん前に書いていて、出すのが遅くなりました。)

asahi.comの記事【バッシングの嵐 話せば伝わる(考 民主主義はいま)】(http://www.asahi.com/articles/ASG24417CG24PTIL00T.html?iref=comtop_6_06)。
東京新聞の記事【週のはじめに考える 積極的平和主義を疑う】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014021702000118.html)と、
コラム【筆洗】(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2014021702000096.html)。
孫引きで大変に恐縮ですが、CMLに出ていたBARAさんの投稿【[CML 029674] この浅はかな日本 二分法の世界観 映画監督・是枝裕和】(http://list.jca.apc.org/public/cml/2014-February/029674.html)。

 「10年前、イラクで武装勢力の人質となり、激しい批判にさらされた今井紀明さん(28)。社会からわき起こる憎悪が一個人へ向けられる恐ろしさを、身をもって経験」・・・・・・当時のあの異様な雰囲気が本当に怖い。現状、それが悪くなっていはいまいか? 猛毒法・(非)特定秘密「隠蔽」法で「話す」ことも許さず、「騙されることの責任」というよりも「話しても」伝わらないという「無関心の責任」。

   『●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(1/2)
   『●『戦争と平和 ~それでもイラク人を嫌いになれない~』読了(2/2)
   
     「しかし、彼女ら (郡山さんと今井さん) の予想は全く裏切られ、
      「自己責任」とばか騒ぎし、醜悪なバッシングの嵐。解放後、
      「生まれ故郷に帰るのに「覚悟」が必要」(p.141) な国って、
      いったい何?? 解放後の「新たな不安と恐怖」(p.147) は、
      拘束時以上だったのではないだろうか・・・。」
   
   『●『ご臨終メディア ~質問しないマスコミと一人で考えない日本人~』読了 (2/3)
   『●『ルポ 改憲潮流』読了(2/3)
   『●『だまされることの責任』読了(2/3)
   『●『靖国/上映中止をめぐる大議論』読了(3/3)
   『●『安心のファシズム ―支配されたがる人びと―』読了
   『●『それでもドキュメンタリーは嘘をつく』読了(2/2)
   『●見損ねた
   『●『筑紫哲也』読了
   『●『ルポ戦場出稼ぎ労働者』読了
   『●「自己責任」を叫ばれた人の立場

 すいません、孫引きです。でも、「考える」ために読んだ方が良いCMLの記事『[CML 029674] この浅はかな日本 二分法の世界観 映画監督・是枝裕和』(http://list.jca.apc.org/public/cml/2014-February/029674.html)。「そんな変な価値観がまかり通っているのは日本だけです・・・・・・多様な価値観を持った人たちが互いを尊重し合いながら共生していける、豊かで成熟した社会をつくりたいからです」。

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http://www.asahi.com/articles/ASG24417CG24PTIL00T.html?iref=comtop_6_06

バッシングの嵐 話せば伝わる(考 民主主義はいま)
2014年2月7日07時09分

■イラク人質、今井さんのいま

 10年前、イラクで武装勢力の人質となり、激しい批判にさらされた今井紀明さん(28)。社会からわき起こる憎悪が一個人へ向けられる恐ろしさを、身をもって経験した。いま、大阪で通信制高校の生徒を支援する活動に取り組んでいる今井さんに、社会はどう映っているのだろうか

     ◇

 高校卒業直後の18歳だった。劣化ウラン弾による子どもらの戦争被害を知り、「現地の人の力になりたい」と入国したイラク。バグダッドへ向かう車中で、覆面の武装勢力に襲われた。

 8日後に解放され、帰国。待っていたのは、すさまじいバッシングだった

 ・・・・・・・・・。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014021702000118.html

【社説】
週のはじめに考える 積極的平和主義疑う
2014年2月17日

 国際協調に基づく「積極的平和主義」は安倍晋三首相の外交・安全保障の看板政策。そこに軍事による平和の傲(おご)りが潜んでいないか、深く憂慮します。

 憲法九条を柱にした日本の安保・外交が「一国平和主義」の批判を浴びるようになったのは一九九一年の湾岸戦争からでした。

 イラクのサダム・フセインのクウェート侵攻に多国籍軍が編成されたこの戦いに日本は百三十億ドルの資金提供をしましたが、クウェートが戦後、米国の新聞に掲載した感謝広告に日本の名前がなく、「国際社会は日本の財政的貢献を評価していない」とのキャンペーンが展開されたのでした。


当事者の和平欲求こそ

 実際にはクウェートの戦争記念館には日本の貢献を説明する特設パネルが設けられ、資金提供とは別に、横須賀、佐世保、岩国、沖縄・嘉手納など日本の米軍基地の貢献度は絶大だったのですが、政府は湾岸戦争の反省として人的貢献へ踏み出します。湾岸での遺棄機雷掃海や九二年のカンボジア国連平和維持活動(PKO)の自衛隊の海外派遣でした。

 明石康国連事務次長が暫定統治機構代表に就任し、六百人の自衛隊員が参加したカンボジアPKOは、成功した国際貢献といえるでしょう。民間ボランティアと文民警察官の犠牲を出しましたが、民主選挙が実施され、曲がりなりにも和平が到来、二十年後の今日、アンコールワットには観光客があふれ、首都プノンペンにはイオンが出店予定、急速な発展途上にあるからです。

 成功の条件は何か。紛争当事者たちの厭戦(えんせん)と内からの和平欲求-です。当時のカンボジアを取材しての実感でした。自衛隊は世界各地のPKOに派遣されていきますが「停戦の合意」が派遣の条件になっている理由がわかります。


賢者の傲りが愚行生む

 日本の国際貢献は九〇年代になって「消極的平和主義」から「能動的平和主義」とも呼ばれるようになりましたが、そこには憲法九条の要請から、戦闘行動には参加しないとの原則が貫かれています。首相は能動的平和主義はなじみがなく、自らの政権では積極的平和主義と唱えるようにしたそうですが、集団的自衛権の行使容認の憲法解釈変更や憲法改正を目指していることで、「積極的」平和主義は「能動的」とは明らかに違います。非軍事から軍事的貢献への大転換が意図されているのだと受け取れます。

 首相は施政方針演説で「日本は米国と手を携え世界の平和と安定のために、より一層積極的な役割を果たす」と表明しましたが、九条の歯止めがなくなれば、かつて米国の同盟国の韓国、タイ、フィリピンがベトナム戦争に派兵したように、日本の派兵拒否は難しくなります。それでいいのか。

 米国大使キャロライン・ケネディさんの父親が大統領だった六〇年代は米国の黄金時代でした。デービッド・ハルバースタムの「ベスト&ブライテスト」は、若き輝ける大統領の下に参集した「最良にして最も聡明(そうめい)」な米国の英知たちが、なぜ残忍で愚劣極まりないベトナム戦争の泥沼に国を引きずり込んでいったかをめぐるニュージャーナリズムの傑作でした。

 ハルバースタムの指摘は「賢者の傲り」でした。能力や軍事力、経済力への過信がベトナムについて学ばない傲慢(ごうまん)を生み、判断を誤らないための確固たる道徳的信念も欠いていた、と仮借ない筆致。文官が将軍を統制する道は戦争を起こさないことだと手厳しいものです。

 国防長官だったロバート・マクナマラは九五年の回顧録で十一項目の失敗を列挙しました。ナショナリズムの過小評価、歴史・文化・政治への無知、近代のハイテク軍備の限界を認識せず、国民に十分説明しなかった。軍事行動は国際社会が支持する多国籍軍と合同で、との原則を守らなかった。ベトナムの愚行は、誤れるイラク戦争でもそのまま、歴史に学ぶことはありませんでした。

 正しいと信じたベトナムの八年間の戦いで、マクナマラが認めなければならなかったのは、誰もが人間。そして人間は過ちを免れないという事実でした。二十世紀には一億六千万人が戦争で死んだそうです。二十一世紀をそんな世紀にしてはならない、とマクナマラは言うのでした。


専守防衛こそが「本道」

 軍事力や経済力への過信はないのか、積極的平和主義に暴走の恐れはないのか。昨年暮れに閣議決定された国家安全保障戦略や新防衛大綱には、わが国の防衛の基本方針として「日本国憲法の下、専守防衛に徹し、軍事大国にならないとの基本方針に従い」と書かれています。それこそが国際協調主義に基づく日本の平和主義の本道と考えます。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2014021702000096.html

【コラム】
筆洗
2014年2月17日

 喜劇を書くとする。人はなぜ笑うのか。諸説ある。プラトンさんは「他人への優越感」、カントさんは常識からの予期せぬズレと考えたそうである▼予期せぬズレ。分かりやすい例は立派な紳士がバナナの皮で、すってんと滑って転ぶ伝統的なギャグだろう。すまし顔の紳士。ヘマをしないような人物が転ぶから笑いが起きる▼黒木夏美さんが書いた『バナナの皮はなぜすべるのか?』によるとバナナの皮で滑るギャグは誰かが突然、思いついたものではないという。十九世紀後半、米国ではバナナの皮を平気で路上に捨てていた。滑って転び、場合によっては死亡する事故が続出していた▼冗談ではなく、一八七〇年にはニューヨークで「反オレンジの皮・反バナナの皮協会」なる団体が結成されている。バナナの皮で滑って転ぶという現実。その中でバナナのギャグがいつしか生まれ、やがて定着していった▼「バナナの皮」は英語では政治用語でもある。政権を悩ませることになる災いや落とし穴などを意味する。安倍首相。立憲主義を軽視した発言は言うに及ばず、意見を異にする者への憎悪むき出しの国会答弁を見るとバナナの皮が敷き詰められた道を目隠しで歩いているようである▼滑っても笑えない。こんな調子の政治ならいずれ転んでも当たり前。笑いを生む予期せぬズレではない。どう転んでも喜劇にはならぬ
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http://list.jca.apc.org/public/cml/2014-February/029674.html

[CML 029674] この浅はかな日本 二分法の世界観 映画監督・是枝裕和
BARA ・・・・・・
2014年 2月 16日 (日) 11:26:00 JST

今こそ政治を話そう 二分法の世界観 映画監督・是枝裕和
2014.2.15

朝日新聞・朝刊
http://digital.asahi.com/articles/DA3S10979945.html

世界はね、目に見えるものだけでできているんじゃないんだよ――。
「そして父になる」でカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞するなど
世界的評価の高い映画監督・是枝裕和さんが脚本を手がけた
テレビドラマのセリフだ。
敵か味方か。勝ちか負けか。
二分法的世界観が幅を利かせるこの日本社会を是枝さんはどう
見ているのか、聞いた。

 ――昨年12月に発足した「特定秘密保護法案に反対する
映画人の会に賛同されていましたね。

 「ひとりの社会人として、責任がありますから


 ――政治的な「色」がつくという懸念はなかったですか。

 「そんな変な価値観がまかり通っているのは日本だけです。
僕が映画を撮ったりテレビに関わったりしているのは、多様な
価値観を持った人たちが互いを尊重し合いながら共生していける、
豊かで成熟した社会をつくりたいからです。
だから国家や国家主義者たちが私たちの多様性を抑圧しようと
せり出してきた時には反対の声をあげる。当然です。
これはイデオロギーではありません」


 ――ならば、日本政治や社会を告発するようなドキュメンタリーを
撮ろうとは考えませんか。
世界的に名高い是枝さんの手になれば、社会の空気を変えられる
かもしれません。

 「たとえば『華氏911』でマイケル・ムーアが表明したブッシュ
政権への怒りの切実さが、多くの人の心を揺さぶったのは
間違いない。
だけど豊かなドキュメンタリーというのは本来、見た人間の思考を
成熟させていくものです。
告発型のドキュメンタリーを見ると確かに留飲が下がるし、怒りを
喚起できるし、それによって社会の風向きを変えることもあるかも
しれない。
でもそのこと自体を目的にしたら、本質からずれていく気がします」

 「あるイベントで詩人の谷川俊太郎さんとご一緒したのですが、
『詩は自己表現ではない』と明確におっしゃっていました。
詩とは、自分の内側にあるものを表現するのではなく、世界の側に
ある、世界の豊かさや人間の複雑さに出会った驚きを詩として
記述するのだと。
ああ、映像も一緒だなと。撮ること自体が発見であり、出会いです。
詩やメッセージというものがもしあるのだとしたら、それは作り手の
内部にではなく世界の側にある
それと出会う手段がドキュメンタリーです。
ドキュメンタリーは、社会変革の前に自己変革があるべきで、
どんなに崇高な志に支えられていたとしても、撮る前から結論が
存在するものはドキュメンタリーではありません


 ――じゃあ何ですか。

 「プロパガンダです。
水俣病を撮り続け、海外でも高く評価された土本典昭さんは
『不知火海』という作品で、補償金をもらって陸に上がった漁師が、
品のない家を建てて金ぴかの調度品で部屋を飾っている様子も撮って
います。
そのような、水俣病を告発するというプロパガンダからはみ出した部分
こそがドキュメンタリーの神髄です。
間の豊かさや複雑さに届いている表現だからこそ、人の思考を深め、
結果的に社会を変えられるのだと思います」

 「安倍政権を直接的に批判するドキュメンタリーもあっていい。
だけどもっと根本的に、安倍政権を支持している私たちの根っこにある、
この浅はかさとはいったい何なのか、長い目で見て、この日本社会や
日本人を成熟させていくには何が必要なのかを考えなくてはいけません


 ――この浅はかさ。何でしょう。

 「昔、貴乃花が右ひざをけがして、ボロボロになりながらも武蔵丸との
優勝決定戦に勝ち、当時の小泉純一郎首相が『痛みに耐えてよく
頑張った。感動した!』と叫んで日本中が盛り上がったことがありましたよね。
僕はあの時、この政治家嫌いだな、と思ったんです。
なぜ武蔵丸に触れないのか、『2人とも頑張った』くらい言ってもいいん
じゃないかと
外国出身力士の武蔵丸にとって、けがを押して土俵に上がった国民的
ヒーローの貴乃花と戦うのは大変だったはずです。
武蔵丸や彼を応援している人はどんな気持ちだったのか。
そこに目を配れるか否かは、政治家として非常に大事なところです。
しかし現在の日本政治はそういう度量を完全に失っています

 「例えば得票率6割で当選した政治家は本来、自分に投票しなかった
4割の人に思いをはせ、彼らも納得する形で政治を動かしていかなければ
ならないはずです
そういう非常に難しいことにあたるからこそ権力が与えられ、高い歳費が
払われているわけでしょ? 
それがいつからか選挙に勝った人間がやりたいようにやるのが政治だ、
となっている。政治の捉え方自体が間違っています。民主主義は多数決
とは違います

 「政治家の『本音』がもてはやされ、たとえそれを不快に思う人がいても
ひるまず、妥協せずに言い続ける政治家が人気を得る。
いつから政治家はこんな楽な商売になってしまったのでしょう
表現の自由』はあなたがたが享受するものではなくて、あなたが私たちに
保障するものです
そのためにはあなたの自己表出には節度が求められるはずです」

 ――しかし政治に限らず、「勝たなきゃ終わり」という価値観が世間では
幅を利かせています

 「世の中には意味のない勝ちもあれば価値のある負けもある。
もちろん価値のある勝ちが誰だっていい。
でもこの二つしかないのなら、僕は価値のある負けを選びます
そういう人間もいることを示すのが僕の役割です。
武蔵丸を応援している人間も、祭りを楽しめない人間もいる。
『4割』に対する想像力を涵養するのが、映画や小説じゃないかな。
僕はそう思って仕事しています」

 「ただ、同調圧力の強い日本では、自分の頭でものを考えるという
訓練が積まれていないような気がするんですよね。
自分なりの解釈を加えることに対する不安がとても強いので、批評の
機能が弱ってしまっている。
その結果が映画だと『泣けた!』『星四つ』。こんなに楽なリアクションは
ありません。
何かと向き合い、それについて言葉をつむぐ訓練が欠けています。
これは映画に限った話ではなく、政治などあらゆる分野でそうなっていると
思います」

 「昨年公開した『そして父になる』の上映会では、観客から『ラストで
彼らはどういう選択をしたのですか?』という質問が多く出ます。
はっきりと言葉では説明せずにラストシーンを描いているから、みんな
もやもやしているんですね。
表では描かれていない部分を自分で想像し、あの家族たちのこれからを
考えるよりも、監督と『答え合わせ』してすっきりしたいんでしょう
よしあしは別にして、海外ではない反応です。
同じく日本の記者や批評家はよく『この映画に込めたメッセージは
なんですか』と聞きますが、これも海外ではほとんどありません


 ――そうなんですか。

 「聞かれないどころか、ロシア人の記者に『君は気づいてないかも
しれないが、君は遺された人々、棄てられた人々を描いている。
それが君の本質だ』って言われたことがあります。
で、確かにそうだった。
ずっと『棄民』の話を撮りたいと思っていたから。
すばらしいでしょ。
翻って日本では多数派の意見がなんとなく正解とみなされるし、星の数が
多い方が見る価値の高い映画だということになってしまう
『浅はかさ』の原因はひとつではありません。
それぞれの立場の人が自分の頭で考え、行動していくことで、少しずつ
『深く』していくしかありません」


 ――「棄民」を撮るんですか。

 「ブラジルの日系移民の話をいつか劇映画でやりたいと思っています。
彼らは国に棄てられた『棄民』ですが、第2次世界大戦が始まるとむしろ
日本人として純化していく。
情報遮断状態におかれた移民たちは日本の敗戦を知らず、うわさを聞いても
信じない。
そして負けたと主張する仲間を『非国民だ』と殺してしまう。似ていませんか?
 いまの日本に。国に棄てられた被害者が加害の側に回る、そこに何が
あったのかを描いてみたいんです」

 「精神科医の野田正彰さんは、加害の歴史も含めて文化だから、
次世代にちゃんと受け渡していかなければならないと指摘しています。
その通りです。
どんな国の歴史にも暗部はある
いま生きている人間は、それを引き受けないといけません
だけど多くの人は引き受けずに、忘れる。東京電力福島第一原発事故も
そうでしょう。
アンダーコントロール』だ、東京五輪だって浮かれ始めている。
どうかしていますよ

 「いまの日本の問題は、みんなが被害者意識から出発しているということ
じゃないですか。
映画監督の大島渚はかつて、木下恵介監督の『二十四の瞳』を徹底的に
批判しました。
木下を尊敬するがゆえに、被害者意識を核にして作られた映画と、それに
涙する『善良』な日本人を嫌悪したのです。
戦争は島の外からやってくるのか? 違うだろうと。
戦争は自分たちの内側から起こるという自覚を喚起するためにも、被害者
感情に寄りかからない、日本の歴史の中にある加害性を撮りたい
みんな忘れていくから。誰かがやらなくてはいけないと思っています」

 (聞き手 論説委員・高橋純子

    *

これえだひろかず 
映画監督・テレビディレクター 62年生まれ。ドキュメンタリー番組の演出を
手がけ、95年に映画監督デビュー。作品に「誰も知らない」「奇跡」「そして父になる」など。
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