アガサ・クリスティ,中村能三訳,早川書房 (ハヤカワ クリスティー文庫 2003/12).
クリスティ (1890-1976) 1972 の作で最後のポアロもの.その後 1975 に「カーテン」が発表されたが,こちらは 1943 に執筆された.この頃は同じ職場にミステリ通がいて,クリスティの新作が出るたびに話題にした.
Elephant can remember は翻訳が出る前に原著で読んだような気がする.痩せ我慢して辞書なしで読み進み,wig という単語が分からなくて往生した.
Wiki 曰く「象は忘れない」という題名は,英語の諺「An elephant never forgets.:象は(恨みを)忘れない(そして必ず報復する)」に由来する.この作品では () 内の恨みと報復は象たちの関心外である.
今となっては,カーテンも象...も,その内容を全然覚えていない.図書館で懐かしくなって借用.今世紀に入ってからか,文庫本の字が大きくなったようで,読みやすかった.
- 女流推理作家アリアドニ・オリヴァが,過去の事件を知っていそうな人たちの記憶,象たちの記憶を聞いてまわる.群盲象を撫でるとは逆で,象たちの記憶は断片的.そこから過去を構築するのがポワロ,というわけ.
双子とか,犬とか,精神障害とかが見え透いていて,ミステリとしては B クラス.でも一気読みしたし読後感も良い.結末を急がずゆっくりと雰囲気を楽しませるのがこの作品の目指すところなんだろう.