Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

ぼくとネクタイさん

2018-10-22 08:35:35 | 読書
ミレーナ=美智子・フラッシャール,関口 裕昭 訳,郁文堂 (2018/4).

ドイツ語の原書はオーストリアの有望な新人に与えられるアルファ文学賞を受賞.現在は文庫本として版を重ねている一方,世界12か国語に翻訳もされているそうだ.
著者の父はオーストリア人,母は日本人で,著者自身は毎年来日し,簡単な日常会話は日本語で可能だそうだ.

Amazon の内容紹介によれば*****
ひきこもりの青年ヒロは、勇気をふるって公園まで外出してみる。ベンチに座っている彼の前に現れたのが中年のサラリーマン、テツだった。ふたりの間に生まれた奇妙な友情が、やがてお互いの人生を大きく変えていくことになる……。日本の架空の街を舞台に、いじめ、ひきこもり、リストラなどの現代が抱える問題を扱いながら、詩情豊かに綴られた本作は、その切なくも希望に満ちた、印象的な結末もあって、2012年の刊行以来、世界各国で静かな感動を広めている。*****

各 1-2 ページの,134 の散文詩の重なり.
舞台は日本と称してはいるが,現実の日本とも (オーストリアとも) ちがう,訳者あとがきにあるように,メルヘン的空間が舞台と言ったほうがよさそうだ.ひきこもり・いじめ・リストラ・障害児などは (戦闘地域を別にすれば) 全世界共通の問題ということか.
最初はとりとめのない話のように思えた.ひきこもりの「ぼく」は仮想空間,リストラされた「ネクタイさん」は実空間かなと思って読み進むと,そんなに簡単ではない,しっかりと小説らしい骨格が見えてくる.
登場人物の名前はカタカナで表記され,文章には引用符「」がない.
「原文をドイツ語で読んでいるときは内容がすっと頭に入って,明確なイメージが浮かんできた」のに,翻訳は予想以上に難航したそうだ.しかし訳者はそれを,多少日本語がわかる人が外国語で書いた文章を,他人が日本語に翻訳するがゆえの困難と思っているのではないらしい.

あとがきではカズオ・イシグロを引き合いに出しているが,どこかイシグロ文学のような読後感.

図書館で借用.☆ ☆ ☆ ☆.

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