Sixteen Tones

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漢詩とジェンダー

2024-06-11 09:50:53 | 読書
「男もすなる日記といふものを、女もしてみむとてするなり。」

紀貫之 土佐日記 935? の出だしである.当時の価値観では,男性・漢字・漢詩・
漢文 が,女性・仮名・和歌・仮名文 の優位にある.だから「男性が漢文で記す日記を,(男性である紀貫之が) 女性が仮名で書いてみる」試みが当時セールスポイントになったのだろう.
昨日のプログに「かっては漢詩を作ることが,和歌俳句をひねることと ある意味で同列だったようだ」と書いたけれど,漢詩は男性のものとされた時期が長かった.

沓掛良彦「壺中天酔歩  - 中国の飲酒詩を読む」大修館書店 (2002/4)
によれば,そもそも中国では詩作する女性が少ない.
それでも「女流詩人」という章が設けられている.そのひとり 魚玄機 844-871 を森鴎外が小説化している.恋人の浮気を知ると,その相手を笞殺してしまい,玄機も斬罪となるというストーリーだそうだ.
沓掛本には男に捨てられた魚玄機が悲しみを忘れようと浴びるほど酒を飲み虎になったときの詩が引用されている.

トップ画像は「酒とパラの日々」.ヘンリー・マンシーニの音楽とは裏腹の,アル中カップルの悲劇を描いたシリアスドラマであった.ジャック・レモン演ずる男性は立ち直るが,女性には悲劇を暗示する結末だった,と記憶している.

あちこち話題が跳ぶのは「いつかたこぶねになる日」に影響されてのこと.

漢詩に戻っての締めくくりは,李清照 1084-1155 酔花陰よりの引用.沓掛氏はこの詩からボードレールを想起するそうだ.

 東籬把酒黄昏後,
 有暗香盈袖
  たそがれののち東の籬 (まがき) に酒をくめば
  よるの香はそでにたまりぬ

訳詩は中田勇次郎.

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