NOTEBOOK

なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

プライド

2010-01-17 | 休み
『愛のむきだし』の満島ひかりさんがとんでも無かったので、もう一本の出世作である『プライド』を借りてくる。面白かったのは先週ゲオに行った際は在庫は1本だけでそれも貸出中であったのに、今回見てみると在庫が2本に増えていた。ゲオって柔軟なんだなぁ、よっぽど回転が良かったのか。



『プライド』(DVD公式)
プライド



泣く子も黙る一条ゆかり先生原作。でも原作未読。これも結構評判が良くて2009年の映画の中で高く評価している人も多かったけれど…満島さんとかうまい人は確かに上手いけれども、微妙な人はことごとく微妙な演技。”演技が初めて”という形容で紹介される主演のステファニーさんは「何不自由無く育ったお嬢様」という役に救われているだけかなぁとも思える。

静と動だから、お嬢様と貧乏人だから、これはこれで演出意図通りといえば、そうなのかぁと納得できなくは無いけれど、あまりにもステファニーさんの動じない演技というかポーカーフェースというか、変わらなさ過ぎる表情については監督も言い逃れできなかったよう。特典のオーディオコメンタリーでの金子監督の「すぐぼけっとする」発言に笑う。

原作未読なので、原作自体の問題なのか映画独自の問題なのかの判断は付かないのだけれど、前半がかなり急な展開。急というか唐突。二人が知り合うきっかけやステファニーこと史緒が無一文になってしまう展開はご都合主義といえばかなりのご都合主義であり唐突。ただそういうのを割り切ればエンターテイメントとして面白い。突っ込み所は多いけど。

そしてまたオペラを舞台とした音楽が題材のストーリーだと思っていると、途中から何だかお水の花道になって行く。オペラ歌手で海外留学云々を言っていたのにいつの間にかクラブ歌手になっていたり、ポップスのような何か(R&B?)を歌うことになるとか良く分からないといえば良く分からない。でも展開としては筋はちゃんと通ってる。そして面白い。


何だろうかお芝居だったり、演出だったり、或いはプロットだったりに不満やら穴やらが沢山あって突っ込み所は満載なのだけれど、根本的な部分はしっかりと作られていたり、満島さんが良い役と良いシーンを演じているので、しまるというか、ちゃんと面白くなってる。というか面白い。前半はちょっとアレだけど後半は歌も含めてグッと面白くなる。

本編も面白かったけれどそれを上回る面白さが金子監督と助監督の方々のオーディオコメンタリー。そのシーンにまつわるエピソードなどを語っているのだけれど、不満に思ったところ、おかしいと思ったところの大半をちゃんと監督自信が奥歯にモノが挟まっている感じで語っているのが面白い。ステファニーさん:ぼおっとしてる、満島さん:悔しがってたとかも。


結局本編とオーディオコメンタリーで2回観てしまう。映画を作るって大変なんだなぁ、ということがオーディオコメンタリーを通して感じられるのが良かった。ご都合主義的に唐突だったりするのに、エンターテイメントとして面白い。ビックバジェットでは決して無いけれど。何で満島さんがこれで注目されたのかは良く分かる映画。

グラントリノ

2010-01-16 | 休み
よくよく考えたら年末年始など関係なく時間があるのだからと、ゲオ様で5本ほど借りてくる。一気に4本まで観たので凄い疲れた。ようやく『プライド』も観れたけれど、やっぱり『グラントリノ』が面白かったというか、凄かった。



『グラントリノ』(映画公式)
グラントリノ



あんまりにも評判だったので準新作だったけど『グラントリノ』を借りる。『ミリオンダラーベイビー』を観た時も思ったけど、これが映画なんだと思わせる映画だった。それがもっと重い感じ。「感動の映画!」、「泣ける映画!」とかそういう文句なんてどうでも良いなぁと思わせるほどに、泣けるとか感動できるという動詞では片付けられないモノが有る。映画ってこういうものなんだなぁと。ラストは身震いとか動悸がした。




コワルスキーがしばしば朝鮮戦争の従軍体験を話し、そこでの自分の行為を恐れ後悔を表明している。それはラストまで変わらず人殺しについて最悪な後味だと言う。それは復讐を決意するタオを止めるための科白だとその時点では感じるが、結末においてそれはタオを止めるための言葉ではなく二度と人を殺したくないと言う心からの吐露であったことが解かる。

朝鮮戦争での体験以来、戦場で自ら人殺しをしてしまったことへの後悔と苦い後味を忘れられなかったというコワルスキーの人物像だからこそのラスト、彼の選択だったのだと思う。人殺しをしたくない、けれどもチンピラを放っておけばタオやスーの将来が無い。ではどうしたら良いのかと言う考えが、ラストの行動だったと言うこと。

ラストの行動に関してはトッド・フィールド監督の『イン・ザ・ベッドルーム』のラストで感じた不可避な暴力にどう対峙するのかと言う部分に違和感でないにしろ拭いがたいもやもやとした後味を抱いていたけれど、今作のラストでコワルスキーが取った行動の後味は『イン・ザ・ベッドルーム』の父親のそれとは異なった後味だった。

それにしても人物描写が丁寧だな。コワルスキーがどういう人物なのか。彼を取り巻く人々はどういった人々なのか。彼の住む街はどういう状況なのか。何故彼が毛嫌いする異人種、移民、モン族に心を開いたのか。ちょっとモン族の習慣で片付けてしまっている感がしないでもないけれど、それでも十分に伏線も丁寧で、彼の動機が説明的ではないけれど明確に解かる。

またタオがラストでコワルスキーのグラントリノに乗っているのは、タオの故郷では「女のする仕事」である庭掃除をさせたり、(アメリカ的な)タフな男の立ち居振る舞いを教え込んだり、仕事を世話してあげたりしていることから分かるように、それは異人種であるタオがアメリカ人として生きていくということを示している。アメリカの魂であるフォードの車を譲ることで。

ことあるごとに、というよりもむしろ口うるさいほどに、細かな人種的な分類を示したり、異人種のアメリカ社会への浸透をこれでもかと描いているところにもその意思を感じさせる。アメ車だ日本車だ、イタリア系だ、ポーランド系だ、モン族だと何かあるたびに個々の民族性を喚起させる科白や演出が目白押しなので、そういうことなのだと理解出来る。うるさいけど、そういう人物像として提示されているので、説明的ではない。



前情報を大して聞いていなかったけれど、観てると結末は大抵予想できる。予想できるんだけれど、そんなことは関係が無いんだなぁ。でもwikiとかは結構核心以外はほぼ記述されてるので、なるべくなら前情報を仕入れないほうが楽しめるかなぁ。まぁ楽しむというのとはちょっと違うか。『ダーティーハリー』な路線も好きだけれど、後年の路線も凄いや。でもぼくのイーストウッド監督の一番は傑作じゃないけど『真夜中のサバナ』。

愛のむきだし

2010-01-08 | 休み
ゲオ様のおかげで年末年始は一杯映画DVDが観れたぜ!6作ほど観たけれど、何と言っても園子温監督の『愛のむきだし』(2009年)が一番面白く、久しぶりに映画を観てガツンとやられちゃった。


『愛のむきだし』(映画公式)
愛のむきだし
※ポスターはどっちもどっちだったのでこっち。でもあのメインポスターはとてももったいないと思う。


母親が死んでから疎遠だった父親に突然呼びつけられていきなり巨大ロボットに乗って巨大な謎の生物と戦えと命じられた主人公が、謎のクローンらしき美少女やドイツ系アメリカ人の天才美少女に出会いつつ、人類を脅かす謎の巨大生物や謎の秘密組織と戦って行く、みたいな映画。

もう何だろう…他の人はどうか分からないけど、ぼくにとって『愛のむきだし』の視聴感や視聴後の感覚は『新世紀エヴァンゲリオン』テレビ版・旧劇場版のそれであって、特に映画を観た後の感覚は『エヴァンゲリヲン:破』のそれに限りなく近い。もう双生児にしか見えない。

主要キャラクター3人とも父親に関するトラウマ(父親の欠如。『エヴァ』は母親の欠如。父親も居ないけど)、仕組まれたボーイミーツガール、主人公が女性に求めるもの、主人公とヒロインの関係性、物語展開とラスト。そしてテーマである「愛」も存在承認と言う意味では共通。

同じものを別の切り口で切り取ったら、かたっぽは『エヴァ』でもうかたっぽは『愛のむきだし』だった、と言われたら10人に一人くらいは信じるんじゃないか。気のせいか。俳優さんたちの演技は皆凄かったけれど、やっぱり満島ひかりさんの熱演と安藤サクラさんの怪演が焼き付く。そしてエロ。


ただ総上映時間が237分。4時間。退屈なシーンはあまり無いけれど4時間。映画館で観なかったことを後悔。去年の年末に再上映していたみたいなので逃したなぁ、もったいなかったなぁ、とは思いつつも、この4時間ある映画を映画館で観る勇気は無いなとも思う。

人をかなり選ぶ映画で4時間。劇場では特別料金になり、レンタルでも上・下巻。もちろん別扱いなので料金も別。とてもおいそれと観られるような映画でもないし、レンタルDVDでもない。映画で237分の長尺だからこその鑑賞後、視聴後の満足感だけど、もったいないなぁ。

観たい人しか観ないし、観られる人しか観ない。それは4時間の長尺映画だから。映画じゃなかったらなぁ、深夜ドラマとして30分×10回でやったほうが観やすいし、敷居も低くなるんじゃないかとか妄想しちゃいますが、内容的に少しハードな部分があるので無理だなぁ、と。



三木聡監督やケラリーノ・サンドロビッチ監督、岩松了さんなんかのロフトワンプラス系のサブカル演劇映画が好きで、若しくは抵抗が無く、あまり野暮なことを考えないなら観て損は無いと思う。そして4時間時間が取れるなら。ゆらゆら帝国の主題歌も良かったし。3月末までゲオなら上・下巻でも200円でレンタルできるし。『エヴァ』を全部観るより遥かに短いし。というか、股間とハートが鷲掴みです。働いたら真っ先にDVD買います。というかBDでも出してください。両方買います。