NOTEBOOK

なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

カーネーション 「あなたの愛は生きていますか」

2012-03-29 | 授業

90歳を過ぎても昔の恋人の死に、女として泣くことが出来る。業の深さは生きる力なんだと思ったり。木曜日のこの回はすごいなと思ったり。



木曜日放送の149話では危篤に陥った糸子の元に三姉妹が終結するが、最後に駆けつけた聡子が病室の前にたどり着くと。中から笑い声が。病室の戸を開けると、先に到着していた直子と優子が、意識不明の糸子の傍らでパジャマ姿で互いのすっぴんの酷さを大きな声で笑いあっているという描写。唖然とする聡子。でも結局は姉妹三人で朗らかに談笑。が、聡子の一言で皆が糸子を思って、堰を切ったように泣き始める。

昨年、祖母が糸子と同じくらいの年齢で亡くなったのですが、まさにこのような状況でした。死の淵にあったとしても、必ずしもすべての時間が悲しみに包まれているわけではないのだと実感しました。久しぶりに集まったもの同士が近況を話し合ったり、心配する相手の昔話や失敗話いろいろな話をするのです。その空間には悲しいことばかりではない朗らかな時間もあったりする。それが老人ならなおのこと。

おそらく渡辺あやさん自身に近親者を亡くされた経験が、それも年配の方を亡くされた経験が反映されているのだろうかと、想像を豊かにしてしまいます。ドラマでは糸子が意識を回復した後のモノローグで家族や仕事仲間たちに礼を言うというシーンがありました。祖母の場合は、意識が回復した後にしきりにみんなに感謝の言葉を尽くして、数時間後に亡くなりました。

どうして渡辺あやさんの脚本はこうもリアルなんでしょうか。普通だったら、危篤のシーンなら皆が急いで駆けつけて泣き合戦になりそうなところなのに一見不釣合いなユーモアを入れる。でも現実はステレオタイプな悲しみばかりじゃないことをちゃんと知ってる。眉をひそめる様な人も居そうなシーンですが、個人的にはこれこそがリアルなんじゃないのかと思えてくるのです。


あと2日で「カーネーション」も終わりです。個人的には夏木マリさん演じる老年編は『ゴッドファーザー』における『ゴッドファーザー3』なのではないかと思っています。多くの人にとっての傑作である『ゴッドファーザー』に付け足された蛇足。監督のコッポラ自身も最近そういった意見に沿うような発言をしています。

でもぼくには『ゴッドファーザーⅢ』あってこそ、トリロジーとしてあってこそ、繁栄を極めたマイケルの惨めな晩年があってこそ、『ゴッドファーザー』は完結したと考える『ゴッドファーザーⅢ』肯定派なので、あまり評判の良くない『カーネーション』老年編にあっても体が弱り、昔ほどの活躍を得られない中でもそれでも生きてゆこうとする糸子像があって初めて『カーネーション』が完結するのだと思います。




残すところあと2回。おそらくラストシーンは3人の糸子による歌で締められるのでしょうが、晩年をどう締めくくるのか、土曜日まで目が話せません。



水曜プレミアシネマ

2012-03-25 | 授業

「水曜プレミアシネマ」(TBS)
リトルランボーズ


TBSの水曜日夜9時に復活する映画枠、「水曜プレミアシネマ」。何がラインナップされるのかと期待していたら、ケーブルテレビの月間番組表にラインナップが掲載されていました。


・4月4日『ライオンキング』
・4月11日『SPACE BATTLESHIP ヤマト』
・4月18日『Mr.&Mrs.スミス』
・4月25日『ハムナプトラ 失われた砂漠の都』
出典:「ケーブルテレビマガジン2012年4月号」



……TBSが何を思ってこの枠を作ったのか。上記サイトの「みどころ」なる文章を読んでみると、


目標は、映画枠を復活することでTBSの水曜よる9時を新たな視聴者の方にご覧いただき、水曜日の固定ファンを獲得していくこと。視聴者の皆様に「水曜よる9時はTBSにチャンネルを合わせる」という動機を持っていただきたいという想いで、魅力あるラインアップを揃える。
 週の真ん中という水曜日の特性を生かし、視聴者の方々の活力と癒しになるような厳選された名作映画を、洋画・邦画を問わずラインアップしてお届けしていく。

(上記リンク先より一部引用)

4月のラインナップを見た限りだと、日本テレビの「金曜ロードショー」の大作、新作路線でもなく、テレビ東京の「木曜洋画劇場」、「水曜シアター9」のB級アクション路線でもなく、どちらかといえばテレビ朝日の「日曜洋画劇場」にTBS製作映画を混ぜるような感じなのかな?とも思えます。ただ映画を垂れ流すだけで「水曜よる9時はTBSにチャンネルを合わせる」ようになるんでしょうか。

例えば、「金曜ロードショー」は『アバター』や『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』など話題の新作映画をCSよりもいち早く放送したり、俳優を使った新録吹替えや劇団四季の俳優を使った新録吹替えなど大資本であるテレビ局の強みを活かした意欲的な試みを続けています。また「日曜洋画劇場」も「金曜ロードショー」とは異なる路線で新作を放送したり、新録吹替え版を製作したりしています。また映画の途中からでも観やすいように途中で前半のストーリーのおさらいを放送やデータ放送で行っています。

今純粋にゴールデンタイムの映画枠として生き残っている「金曜ロードショー」と「日曜洋画劇場」は単純に同時間帯の他の番組との視聴率争い以上にCS放送やDVDレンタル、動画配信などに対抗しようと様々な努力を続けて生き残ってきているのだと、ぼくは思います。単純に金を積んで新作映画を引っ張ってきているだけでは決して無い努力の賜物なんだと思います。翻って、果たしてTBSの「水曜プレミアシネマ」はCSやDVD、動画配信に対抗するような付加価値を与えてくれるのでしょうか。今の段階だと、ちょっとそこは期待出来ないのかな…


でもこの「みどころ」の文章って企画書の文章をそのまま持ってきたような文章だなぁ。



<追記>
土曜日に上記のHPを見てみると、更新されており引用した文章は消えていて、その代わりにラインナップが並んでいました。また「コンシェルジュ」という名で映画コメンテーター(何なんだ映画コメンテーターって)のLilicoさんがキャスティングされており、土曜日の「オールスター感謝祭」においても、「水曜プレミアシネマ」の宣伝をしておられました。しかも第1回放送の『ライオンキング』にちなんで劇団四季の『ライオンキング』が上演されるほどの力の入れよう?

コンシェルジュって少し前の「金曜ロードショー」の坂上みき的なことなんでしょうか。そしてちなみに「金曜ロードショー」も4月から「金曜ロードSHOW!」と名前を変え、映画解説者とかではなく何故か子役の加藤清史郎を「シネマボーイ」なるナビゲーターにするのだそう。(関係ないですけどHP内の表記がおかしなことに。置換しただけだな。。)「水曜プレミアシネマ」のLilicoにしてもやはり一般層をどれだけ取り込めるのかというところが重要になりそうです。

それなら東大ブランドを活かして蓮實重彦とか使ったらどうなんだろうとか思ったり。

カーネーション 老年編に思う、渡辺あやの残酷

2012-03-10 | 授業
『カーネーション』(NHKオンライン)

今週より『カーネーション』の老年編というか、夏木マリ編が開始されました。小原糸子役は尾野真千子さんから夏木マリさんにバトンタッチされただけではなく、ほとんどの人たちがアチラ側へ逝ってしまい3姉妹が唯一残っているのみとなりもはや別作品と呼ぶべきものとなっています。



尾野さんが演じていた中年編までと比べると、もはやビルディングスロマンは達せられたこともあり前作の『おひさま』と同様にやはり物語の求心力は減じられている印象です。加えて、少々唐突な印象も感じるほどに次々と何かしらのエピソードが起こっていた、ジェットコースターのようなテンポが一転して、穏やかな、日常的なテンポの中で糸子の孫娘、里香が中心となってエピソードが語られてゆきます。

残念ながら夏木マリ版小原糸子は尾野版小原糸子と比べてしまうと、あのキラキラとした魅力は失われ、もはやぼくの知っている小原糸子ではありません。そして心なしか、あれほど輝いていた3姉妹の演技も脇に回ってしまったということもあってか何だかパワーダウンしてしまっている印象です。老年期のキャスト変更が発表されて、多くの人が思ったであろう懸念が現実になったような気がします。


しかし。しかしながら、『カーネーション』の劇中でも家族の老いや死。さらには主人公の糸子自身の老いや感性の鈍化などが残酷にも描いてきたことを思うと、このキャスト変更も、その魅力の落ち方も想定の内なのかなとも思えてくるのです。確かに夏木マリさんの演技は下手じゃないし、上手いです。でも尾野版糸子の持っていた輝きのようなものは夏木マリさんが演じる老年の糸子にはありません。

これは前作の『おひさま』と比べると、より顕著に見えてきます。『おひさま』ではさすがに陽子の父親たちの世代は存命ではなかったものの、夫の一成さんも白紙同盟の育子も真智子も、それどころかタケオ夫妻も老年期に至っても元気に余生を送っているという設定になっていました。対して『カーネーション』中年期のラストでは北村が糸子に対して、「これからお前は失うだけの人生だぞ」との言葉を残しています。

その北村の言葉にに対して糸子は「うちは、ここで宝物を抱えて生きていくんです。」と力強く言明し、北村からのプロポーズ?を袖に振りました。そして見事に、糸子の周りに居た人々は大抵が写真として、思い出としての存在となってしまいました。それでも夏木版糸子は悲しいそぶりもなく、毎日大切な人々の写真に話しかけ、笑顔を向けているのです。胸を締め付けられてしまいます。


こういう描写を見るたびに、主役のキャスト交代でパワーダウンすることは意図的だったのでは?と思うのです。これが若し尾野さんのままだったと思うと、こういった喪失感は無かったのかもしれません。老年に至っても小原洋装店に昌ちゃんが居て、恵さんが居て。それは前述の『おひさま』のようにある種のファンタジーとしてしかありえなかったのではないでしょうか。そしてそれを渡辺あやさんは許さなかった。



里香の描写に関しては、今まで通りとても分かりやすくも素直な演出がなされています。理香と地元の男子高校生との恋愛はとても間接的に描かれています。男子高校生に会ったあとや会う前には赤いスカジャンや赤いジャージに着替えています。『カーネーション』に通底する「赤」=女性という演出はこれまでの女性たちから里香へと受け継がれています。

ジェットコースターのようなテンポの速さだったこれまでと比べて、老年編はテンポが遅くなりましたが、テンポが遅いからこそ里香の心の機微、変化が丁寧に追いかけられていきます。単純に母親である優子のことが嫌いなのかといえば、そうではなく「嫌いじゃないけど、落ち込むのが分かっていてもどうしても優しく出来ない!」と涙する里香の台詞にはドキッとさせられました。


『メゾン・ド・ヒミコ』や『その街のこども』でもそうでしたが、渡辺あやさんは容赦が無い。しているのかもしれないけれど、それにしても他の作品と比べて残酷です。老いも死も避けがたい。だからこそ誰もが幸せで、何も失わないようなファンタジーを描きがちですが渡辺あやさんはそれを許さない。その上で、ある種の諦念の元でそれでも生きていけと言うのです。とても残酷ですが、とても誠実だと思います。

TBSの映画枠が復活!水曜プレミアシネマ

2012-03-04 | 授業


http://www.sankeibiz.jp/econome/news/120303/ece1203031610002-n1.htm(SankeiBiz)
29日の会見で「TBSは映画製作には非常に熱心に取り組んでいるので、選りすぐりのラインアップで良質なエンターテインメントとしてお届けしていく」と発表した。


 TBSの映画枠といえば名解説者として親しまれた荻昌弘さんが担当していた「月曜ロードショー」が有名。1969年から87年まで放送され、火曜→水曜と曜日を変え、荻さんが亡くなった後も93年まで続いた。

(上記記事リンクより一部引用)

TBSのプライムタイムの映画枠なんてまったく記憶に無い世代なので、復活というよりも新設に近い感じですが。どんな映画を放送してくれるのか。例えば、日本テレビの「金曜ロードショー」は最近は「おうちで観よう」と題した一連のキャンペーン(ちょっと前から同様のキャンペーンはやっていましたが)を行っています。タイアップというよりは『アバター』などの大作を初放送し、テレビで映画を放送することのメリットを活かそうという意図が感じられます。日曜洋画劇場は公開タイアップなどもありますが基本的にはハリウッドアクション映画中心(でもセガールはやるけれど、非映画秘法系というか非テレビ東京なメジャーアクション映画)のラインナップです。

同じTBS系の映画枠といえば、宮内鎮雄さんがナビゲーターを勤める深夜の「ゴールデンシアター」があります。ラインナップとしてはTBS製作や出資作を放送する枠というイメージですが、映画の前の新作紹介での宮内さんの感想・解説がこの枠の魅力だと思っています。今の時代、映画は最新作でも数ヶ月で3000~4000円程度のブルーレイやDVDで購入でき、レンタルは数百円です。下手をすればネットを介した動画配信サービスなどでも視聴することが可能です。じゃあ、この時代に映画をテレビで放送することの意味って何なのだろうと思うとやはりTBSの社長が会見でも述べているようにテレビというメディアのリーチの広さかもしれません。

確かにそれも一理あるような気がするんですが、TBSの「月曜ロードショー」の荻昌弘さんをはじめとして昔の映画枠にはその映画を解説してくれる人がいました。単純に映画を観ただけじゃ、やっぱり分からないことはたくさんある。そこをすぱっと解説してくれる解説者のいる映画枠。観てみたいな。テレビという無料メディアだからこその興味の無い映画の誤配可能性とその誤配された映画についての知識を与えてくれるような映画枠。BS放送でもCS放送でも基本的には日本には今現在はそういう放送はありません。



単純に映画を放送するだけだと、色が出ずに難しいのではないかなぁと一視聴者としては思うのです。その枠の何かの特色が必要なのではないかと思うのです。最近のプライムタイムの映画枠だと新作ばかりしか放送してくれないので思いっきり古い過去作を当時の吹き替えで放送してくれないだろうかと思うのです。そして解説付きで放送してくれたらと思うのです。TBSラジオのリスナーとすると妄想してしまうのです。


「水曜プレミアシネマ」、期待しております。