NOTEBOOK

なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

ロード時間皆無のN64と同じレベルの快適さで楽しめるスペースオペラアクションゲーム、『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』

2022-01-30 | 備忘録
『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』


■プレイステーション5の超高速SSDのデモンストレーションとしての『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』
プレイステーション5ローンチ時から本作、『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』はアナウンスされており、ITジャーナリストの西田宗千佳氏は「どのPVを見るとPS5の価値がわかりやすいのか」を示すタイトルとして本作を挙げていた。

要は、超高速SSDによりデータ読み込みが高速化されたことでステージの最中でも別のステージのイメージを読み込むことができ、世界を瞬時に切り替えられるということだった。そしてそれをソニーも本作のステージを行き交うシーン(設定としては別次元を瞬時に移動している。)をPVやCMにも盛り込んでいた。

『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』アナウンストレーラー(英語版)


ローンチから1年近くたった2021年6月の発売ではあったが、過去作をプレイしていなかったことと、そういった露出を目の当たりにしていたことで、プレイステーション5の機能をデモンストレーションするようなタイトルなんだなぁと思い込んでしまい、プレイステーション5を購入していたものの買わずに2022年になってしまった。

ところが今年、信頼するゲームブロガーのラー油さんが「タイトルを『最高&最高』に変えるべき逸品!『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』レビュー!【PS5】」と言う記事名の本作のレビューを読んで、即座に購入して遊んでみた。

プレイステーション2時代の初代から『ラチェット&クランク』シリーズは認識していたものの、これまでプレイ経験はほぼなく、プレイステーションプラス特典でプレイできる初代のリメイク作品であるプレイステーション4用ソフト、『ラチェット&クランク THE GAME』は少し触ってみたもののグラフィックやシステムの古さ、「ひらがな」を多用している部分などがなじめず数分で投げ出してしまった。そのため、本作を購入してみたののプレイするまでは半信半疑だった。

■プレイステーション5専用の底力
まず驚いたのは『ラチェット&クランク THE GAME』とは比べ物にならないくらい進化したグラフィック。2010年くらいのピクサーのアニメレベルのグラフィックがリアルタイムで生成されて、プライヤーが動かせることに単純に嬉しくなった。

シリーズの主人公ラチェットと相棒のクランクはもちろん、それ以上に本作から登場の別次元の主人公であるリベットとその相棒になるキットが非常に魅力的。シナリオは勧善懲悪のストーリーだが、本作から加わったリベットとキットの関係性を掘り下げるシーンが多く、ドラマとして面白い。

そして皇帝ネファリウスとそれに抗うリベットたちレジスタンスの攻防という構図は『スターウォーズ』のそれであり、場面転換の演出や酒場の設定などなど『スターウォーズ』へのオマージュは枚挙に暇が無い。しかもそのオマージュ、世界観のクオリティが高くて、ちゃっとスペースオペラ!本当にわくわくしてしまった。

そのグラフィックや演出を盛り上げるのは、上質な日本語訳と吹き替えといったソニーインタラクティブエンタテイメントジャパンのローカライズクオリティ。ラチェット役の津村まことさんをはじめ、クランク役大川透さん、リベット役の本泉莉奈さんらの演技が本当に素晴らしい。

また、声優さんたちの演技を細かくローカライズに落とし込むのはさすがソニーインタラクティブエンタテイメントジャパン。
使った武器ごとに敵がセリフでリアクションを返すところまで吹き替えが充てられていて驚いた。字幕などもおかしな日本語やフォントも変な改行も全くない上質すぎるクオリティだった。



そして本作が何より素晴らしいのはインストール後、一切ロードが発生しないこと。ムービーシーン後、ボス撃破後、ステージ移動前、移動後など通常のAAAタイトルであれば、何らかのロードが発生しそうなタイミングでも本作では一切ロードが発生しない。インディーゲームならいざ知らず、ファーストパーティのAAAタイトルでロードが発生しないなんてことはスーパーファミコンやニンテンドウ64以来の経験だ。

※マップからマップへの移動シークエンス


今まであまりにロードに慣れすぎてしまっていたため、すっかり忘れていたけれどロードが無いことがこんなにも快適だとは思わなかった。ロードが発生しないからこそ、ラチェットやリベットの冒険にも没入し易いと感じることが多かった。

映画でいう"長回し"が没入感を高めるように、ロードが発生しないことは没入感を高め、ゲームの体験価値を上げてくれるのだと思う。ステージ間の瞬時の移動よりも何よりもこの「ロードが無い」と言う事こそが爆速SSDを積んだプレイステーション5の最も重要な機能であることを思い知らされた。

プレイステーション5の目玉の1つであるデュアルセンスもその機能を発揮している。アダプティブトリガーはラチェットたちが銃などの武器の引き金を引く感覚を疑似体験させてくれるし、武器によってはトリガーの全押し、半押しでの機能分けもされているので、使い分けがゲームのアクセントにもなっている。

ハプティックフィードバックでは、ゲーム内でラチェットたちが感じた感覚を再現して体験させてくれる。特に金属を持った感覚などは驚くほど金属を持った感覚を伝えてくれるので錯覚する。加えて、デュアルセンスのスピーカーから武器やアイテムの駆動音まで鳴ってくれる。「ロードが無い」ことに更にダメ押しで没入感を高め、ゲームの体験価値を上げてくれる。


※『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』ガラメカ使用時デュアルセンス音声



それでアクションゲームとして触っていて楽しい。ボス戦も通常戦闘の延長線上でデザインされているので違和感無く楽しめるし、大型ボスやステージ全体を使ったシチュエーションが多く迫力も満点。そんなゲームがつまらない訳がない。発売日に購入しなかったことを恥じ、僅かばかりではあるが「デジタルデラックスエディション」にアップグレードした。正直、プレイステーション5と4の違いは、グラフィック性能や静穏性などくらいしかにしか感じられていなかったが、こんなにも体験として優れているとは思わなかった。それを実感させてくれた『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』は大好きなゲームになった。グラフィック、ローカライズ、ゲーム体験、ゲーム内容がここまで高度に融合していて本当に素晴らしい。


※参考:
「PS5が目指すゲームの姿と可能性。PS5発表イベントで見えてきたもの」(https://www.watch.impress.co.jp/docs/series/nishida/1258889.html ※2022年1月30日閲覧)
「タイトルを『最高&最高』に変えるべき逸品!『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』レビュー!【PS5】」(https://www.simplelove.co/entry/20220110/1641780536 ※2022年1月30日閲覧)

オーソドックスな城定監督のエロVシネマ、扉を閉めた女教師

2022-01-11 | 備忘録
◆城定秀夫監督『欲しがり奈々ちゃん〜ひとくち、ちょうだい〜』、『扉を閉めた女教師』予告編


城定秀夫監督『欲しがり奈々ちゃん〜ひとくち、ちょうだい〜』『扉を閉めた女教師』予告編


同僚の男性教師と不倫をしている女性教師がその女性教師に憧れを抱くいじめられっ子の男子生徒と共に校内の倉庫に閉じ込められて始まる密室劇。

◆城定監督のエロVシネマはエロい
エロVシネマで女性教師と男子生徒が閉じ込められたら、起こる事は1つなのだが、そこからどう物語を転がすのかが城定監督の腕の見せ所。物語の語り方は勿論、城定監督なので濡れ場のエロさは凡百のAVでは太刀打ち出来ないエロさになっている。

◆エロいシーンはエロいだけでは無い
序盤の男性教師と女性教師との不倫シーンでは間接的な台詞、行動によってコンドームを付けないセックスをしている事、男性教師が女性教師を上から目線で扱っている事などが表現される。

夏場、校内の寂れた倉庫に閉じ込められた女性教師と男子生徒は騒いで助けを求めたり、水分が無いことで窮地に陥るなど、尿意を催す、食糧が無い問題などなどをエロVシネマの形に落とし込んで表現するがどれもシチュエーションあるあるだけでは無く、閉じ込められた2人の関係性を拡張していく描写にもなっている。

◆変化するパワーバランス
一方の男子生徒は校内でいじめられている事が直接的な暴力描写で表現される。そんな女性教師と男性教師が密室に閉じ込められると、いじめられっ子であるはずの男子生徒が女性教師に対して加虐的な態度、行動に出る。剰え加虐的な態度を取るが、更にエスカレートし、水を与える事と引き換えに女性教師の胸を見せる事を要求する。

その関係性が男子生徒が自作の器具を用いて、倉庫の窓近くのオレンジの木からオレンジの実を採り、女性教師に与えた事で一変する。男子生徒から与えられたオレンジを女性教師が頬張った刹那、女性教師は食べかけのオレンジを男子生徒の口に突っ込んでキスをしセックスに雪崩れ込む。

不倫相手の男性教師とのセックスでは、主導権は男性教師にあったが、男子生徒とのセックスでは閉じ込められてから終始主導権を持っていた男子生徒では無く、女性教師に主導権がある。オレンジはりんごの亜種の様なある種のメタファーと感じさせる。

男性教師に迫られる形で不倫関係に陥った女性教師はコンドームもしない男とセックスをし、生理も来ていない。その状況に対して「Somewhere not here(ここでは無いどこかへ)」と映画の授業で扱った一節を意味ありげに呟いていた。そんな女性教師もオレンジを頬張った事で女性教師は主体的な行動をしていく。

◆城定秀夫監督の入門作であり、教科書的な作品
『扉を閉めた女教師』は城定秀夫監督作品の入門作と評されるほどに、城定秀夫監督作品的である。抑圧された女性が何かをきっかけにして、自分を解放させていく。本作では閉鎖空間とオレンジによって、女性教師の主体性が解放される。エロVシネマなので、その主体性はセックスとして現される。

それが70分で展開される。過不足なく急いでいる様子もなく、70分で本作は終わる。後味はいつものように爽やかだ。ただ、今回はちょっと気になる所がいくつかあった。

◆整理され過ぎた脚本と高い記号性、少しのフラッシュバック
女性教師の現状への不満を表現する台詞、「Somewhere not here(ここでは無いどこか)」。冒頭の授業風景でも強調されるフレーズだがあまりにも象徴的な台詞であるため、かなり鼻に付く。

また、後半に女性教師をセックスに駆り立てるオレンジは作劇でよく観られるアダムとイブのりんごの亜種の様に見えてしまう。まさに町山智浩脚本による劇場版『進撃の巨人』のりんごの様に使い古された象徴性を帯びていると感じた。まぁ、教科書的であるから仕方ないのかもしれない。

それにしても本作の濡れ場の美しさよ。ほとんどのアダルトビデオは本作の濡れ場には敵わない。