NOTEBOOK

なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

スコット・プルグリムVS邪悪な元カレ軍団

2011-09-19 | 授業
「映画秘宝」6月号で主演のマイケル・セラのインタビューと共に『スコット・プルグリムVS邪悪な元カレ軍団』の元ネタリストが掲載されていたけど、元ジャンクハンター吉田さんによると原題の『Scott Pilgrim vs. the World』は昔懐かしい『ザ・シンプソンズ』のビデオゲーム、『Bart VS The World』のオマージュなんだとか。あんな古くてマイナーで、おまけにつまらないゲームのタイトルを何故引用したのか。エドガー・ライトってやっぱりおかしい。


『スコット・プルグリムVS邪悪な元カレ軍団』(公式)
リトルランボーズ



ブライアン・リー・オマーリーの原作自体が海外版『熱血硬派くにおくん』にオマージュを施したコミック(アメコミでも、バンドデシネでもなく漫画!)なのに、撮った監督が『ショーン・オブ・ザデッド』で『ゾンビ』をメタ的な視点でコメディに仕上げたり、『ホットファズ』でこれまたアクション映画のオマージュをふんだんに盛り込んだメタ映画を作ったエドガー・ライトなのでとんでもないことになってる。

はじめ、普通の映画のように見てしまっていたので酷く混乱してしまったけど(そしてひどくつまらないものに思われた)、この映画が漫画原作、それも言葉通りに荒唐無稽な漫画原作と言うこと、エドガー・ライト監督と言うことを鑑みると、妄想と現実が行ったり来たりすることにも、非現実的な設定や表現も理解できる。混乱と言う意味では『ブラックスワン』よりも混乱させられてしまいます。

しかもそれだけではなく、映画やゲーム、音楽からの引用に溢れかえり、細かなネタがそこかしこに盛り込まれている。さらに言うと、会話量が尋常じゃなく、映画の中の情報量が半端ではないので、2時間近くの上映時間以上に観た後に疲労感を感じさせるほど。面白いことは認めるけど、この映画を”漫画”であると捉えられないと、非常に苦痛な2時間になってしまいそう…


主軸となるストーリーは一目ぼれした彼女と付き合い始めたけど、その彼女の元恋人たちが次々に主人公に襲いかかってくると言う話。でもその元恋人たちが普通の人たちではなく、踊るインド人やレズビアン、ヴィーガンを極めてスーパーパワーを身に付けたスーパーヴィーガンや日本人のテクノ双子(斉藤兄弟!)などがさまざまに命を賭けた戦いを挑んでくると言うまさに荒唐無稽な、そして単純すぎるシナリオ。

単純なシナリオだからこそ出来た濃密な横道なんだろうけど、それにしても粘度が濃い。監督がじきじきに任天堂に許諾を得た『ゼルダの伝説』のBGMとかゲーム的な表現などなど。倒した敵がコインになっちゃうとかを説明なしにやっちゃうというゲーム的世界観。実写の人物が倒されたらコインになるが、そこに”死”とかはない。1UPを生かした演出には驚かされた。これは漫画やゲームに忠実な映画なんだなぁ。



いろいろ割り切れないと楽しめない映画だと思うけど、ぼくは楽しめた。結局去年体験版をプレイして終わりだったPS3若しくはXbox360用ダウンロード専売ゲーム『Scott Pilgrim vs. the World』を購入しちゃった。まだレベル1しかプレイしてないけど、映画を見た後だと感情移入度が格段に変わる!そしてゲーム自体は『熱血硬派くにおくん』オマージュのベルトスクロールアクション。これほど幸せなシネマゲームも珍しい。しかも追加DLCではなんとドッジボールモードまであったから、かっちゃったよ!

冷たい熱帯魚

2011-09-11 | 授業
はじめはブルーレイを買おうと思っていたけど、これを持っているのってどうなの?と思って止めてレンタルにしました。結果的には正解だったのかと。


『冷たい熱帯魚』(映画公式)
リトルランボーズ


深夜と言うか、明け方に寝ぼけ眼で観ましたが、エログロの嵐。ぼくはやっぱり社本にしか感情移入できなかった。でもとりあえず、巨乳好きではなかったぼくが巨乳好きになった映画でした。とにかく、冒頭から過剰に性的なイメージ。中盤からセックスの嵐。胸をもんだり、股間をまさぐったり。そして村田や筒井たちといった映画の中の強者、野獣たちがセックスをするのは愛子や妙子。二人とも巨乳。

一方で主人公であろう社本は若い後妻の妙子とセックスもさせてもらえなくなっていた。見た目はさえなく、服装も髪型もまったくさえない。とあるきっかけから巨大な熱帯魚店を経営する村田と知り合って、村田のペースに巻き込まれ、村田の仲間にされてしまう。主体性があれば、拒否できたかもしれない展開も拒否出来ない。流されるままのぼくには非常に共感できる人物像だった。要は糞みたいな主人公。


ぶっちゃけよく分からんかったです。いや、ヴァイオレンス映画として面白いは、面白かったですが。いや、分からないこともないか。ラスト社本は村田に反旗を翻し、村田になる。そして娘を叱り飛ばし、娘の彼氏?をぼこぼこにし、妙子と無理やりセックスをし、すべてを清算する。いや、でもこういうやり方しか社本には残されてなかったのかなと悲しくなります。


興味深かったのは『愛のむきだし』との共通性。『愛のむきだし』の主人公たちに見られた家族関係と社本の家庭の関係性がまったく同じ。前妻が死んだ後、直ぐに若い巨乳の後妻を迎え入れたことで家庭関係は崩壊。娘への愛情は若い巨乳の奥さんへの欲情に摩り替わってしまったようで、娘は家庭内暴力を繰り返し、夜遊びをはじめ、万引きをし、村田との接点を作ってしまうことになる。親の愛の不在と言う点で類型だなと。

あと村田が「歩デイを透明にする」山小屋。山小屋の屋根には十字架が掲げられ、室内にはマリア像などキリスト教的モチーフがいたるところにちりばめられている。殺した人間を小さく、細かく解体し、透明にする場所にそういうものがある。死体を細切れにすることに悪びれるようでも、悪びれた様子も無く笑顔で解体していたのに、そういうものがあるところに”怪物”に最後の部分で成り切れない村田がいるような気がしました。



それにしても同じモチーフ。園子温監督にその辺で何かあるんでしょうか。にしても、『ヒミズ』。主演女優は二階堂ふみなんだ。二階堂ふみは映画でもっと観たいですよ。『恋の罪』も観たい!