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なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

ソーシャルネットワーク

2011-06-19 | 授業
「マーク・ザッカーバーグがとても嫌なやつに見える」とか「マーク・ザッカーバーグが公開前に多額の寄付をして、イメージダウンの阻止を図った」みたいな話があったけど、映画を観るとぜんぜんそんな風には感じなかったです。



『ソーシャルネットワーク』(公式)
リトルランボーズ



バーのトイレで童貞を喪失したあとの茫然自失の恍惚の表情とかを見てもザッカーバーグが”何を考えているか分からないモンスター”には決して見えない。最後まで元カノ、エリカに執着してしまうザッカーバーグはやっぱり普通の人間じゃん。



ザッカーバーグよりもむしろ彼を訴えたウィンクルボス兄弟や元親友のエドゥルアルドたちの方がイメージダウンしていそう。単純に校内の出会い系サイトを作りたかっただけのウィンクルボス兄弟も、共同設立者であるにもかかわらずフェイスブックのステータスの更新の仕方すら分からなかったエドゥルアルドもどちらもフェイスブックの誕生にクリエイティブにはまったく関わってない。それはナップ・スターの創業者でもあったショーン・パーカーもそう。フェイスブックに本気じゃなかった人は皆フェードアウトしちゃってる。

そして一方でザッカーバーグは旧体制の支配層を駆逐するある種のヒーローでもある。冒頭のエリカとの別れのシーン。確かにザッカーバーグは性格が最悪というか、合理的で率直過ぎるけれど、酷いことを言われたエリカは「家柄も悪い、田舎もの!」とザッカーバーグをなじる。ウィンクルボス兄弟は典型的なWASPのエスタブリッシュメントで、有力学生クラブ所属の金持ちの家系。イケメンでボートのオリンピック候補だけど、無知で自分たちでは何も出来ない能力の無いマヌケとして描かれている。親友のエドゥルアルドも金持ち。

それに対してザッカーバーグは格好の悪いナードでギーク。家柄も良くなければお金も無い。けれどプログラミングの能力や知識、合理的な思考というものは持っている。当初、成功者になるために必要と考え、入会を希望していた学生クラブ(エスタブリッシュメントの人脈作りの組織)にも入ることは適わなかった。そこでザッカーバーグはザ・フェイスブックづくりに没頭する。才能も情熱も持ち合わせていない、クリエイティブのかけらも持たない馬鹿エスタブリッシュメントの象徴のようなインナーサークルをあざ笑うように、ザ・フェイスブックは全米、全世界に拡大する。

そういったザッカーバーグの反撃にエスタブリッシュメント層のウィンクルボス兄弟(そしてインド人)やエドゥルアルドが出来たことは権力や法に泣きつくことだった。はじめにハーバードの学長に泣きついたウィンクルボス兄弟は学長に無碍無くあしらわれ、「別のプロジェクトを考えろ」と言われたにもかかわらず、結局は法に泣きつく。エドゥルアルドも自分の能力不足を棚に上げ、人脈を持つショーンに嫉妬し、子供っぽい嫌がらせをした挙句、結局新しいクリエイティブを成すことも無く、非建設的にも法にすがりつくこと以外に選択肢を持たない。





ザッカーバーグは決して裏切り者でも悪人でもない。冷徹な理想主義者というだけ。ウィンクルボスの提案は単純な出会い系作り(少なくともこの映画を見る限りは)でしかなく、CFOと称したエドゥルアルドは金を出しただけ(少なくともこの映画を見る限りは)。彼らはコードの1行すら書くことは出来なかったし、何らのアイデアも持ち合わせてはいなかったし。でもザッカーバーグは自分がクールだと思う目標に突き進む。またザッカーバーグはショーンによるフェイスブックからのエドゥルアルドの追放に「やりすぎだ」と抗議の意思も示す人間らしさも持ち合わせている。


成功を夢見て、プロジェクトに情熱をひたすら傾けてきたけれど、結局まわりは足を引っ張る無知者や嫉妬深い親友、ティーン好きのジャンキーしかいなかった。自分の理想を実現するために親友もいなくなっちゃった。これ、どっかで観たことある!そうだ、これはマイケル・コルレオーネであり、トニー・モンタナであり、本郷猛であり、ピーター・パーカーであり、ブルース・ウェインが感じたそれなんだ!つまりはザッカーバーグも彼らと同じヒーローなんだよ!規制の腐った慣習をぶっちぎる感じの。やっぱり『ソーシャルネットワーク』のザッカーバーグは共産主義革命を試みた『ファイトクラブ』のタイラーであり、ヒーローなんだよ。

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