NOTEBOOK

なにも ほしがならなぁい なにも きたいしなぁい

母なる証明

2010-05-01 | 休み
凄い、凄いと聞いていたので、批評や感想は一切見ざる聞かざるで通してきて、やっとこさDVDで観る。


『母なる証明』(映画公式)
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確かにネタばれはしない方が良いとは思うけど、プロットはそれほど珍しいものではないと思う。日本の2時間サスペンスにでもありそうなありふれたプロット。けれどありふれたプロットをポン・ジュノが脚本を書いて、監督するとこんなにも面白くなる。後半、鳥肌が立ち続けた。


ポン・ジュノの映画はユーモアがいつもあって些細で、下らないやり取りが”日常”的にある。あとセックス、バイオレンスも。ジンテとミナのセックスはエロ過ぎです。バイオレンスも血がドバドバの流血バイオレンスでちゃんと痛そう。別に血を流せば痛そうに感じるわけじゃなくて、腰が入っているというかしっかりしていて痛い。『殺人の追憶』同様警察は暴力的な取調べ。

笑いも暴力も性も愛情もある。だからドラマとしての映画足りえていて、加えてミステリーまである。逆か。娯楽であるだけではなくちゃんとドラマになりえている。しかも伏線を映像でも科白でもしっかりと違和感無く提示していて、それが終盤極めて綺麗な形で収斂していく。科白だけじゃなくて映像までもが物語っていて、もう憎らしいほどに綺麗な構成。

ありがちなプロットでもそこに母子の設定をつければどうなるのか。かたくなまでの母親の愛情をミステリーの中で描くけれど、同様にミステリーの中で母子の愛情を描いた『チェンジリング』とは描き方が全く異なる。しかもこの愛情の発露というのは単に息子が危機に瀕したときに発揮されるのではなく最初から最後まで一貫して発露され続ける。それは過去に至っても。


ハードルを上げすぎると、物語的なありきたりさにがっかりしてしまう人もいそうだけど、こんなありきたりな物語をこんなに豊かに膨らませることが出来るのがポン・ジュノなんだな。本当にこんな話、2時間サスペンスで何度も見たような気がする。それでもこの人が脚本を書いて、監督をすれば奥行きが一気に広がる。面白くなる。それも単に面白く、豊かになっただけではなく母子の愛情をきっちりとした仕掛けの中で描けていてそれ以上の映画になってる。普遍的なドラマになってる。