目を閉じた先で片目は開くどうかこの入口につながる道をください痛みは切り離されることもなくがたがたと揺れる電車の運びこむ景色にあなたはいないわたしを据えてパチパチと片目は合図するそれはかしわ手に似た音だった苦しいくらいの光のなかで日常の普通を再生産して懸命に息を吐く眩(まばゆ)いあなたはなにも光らないまま夜を携えた静けさと姦(かしま)しい音楽は同居して互いに時を待つごたごたとご法度な御託(ごたく)は . . . 本文を読む
花と罠とは紙一重同じ出処(でどころ)の入口何処やと鼻を布で覆われたわたしに花の香も無し月は安堵の溜め息を吐き黒髪は風に運ばれて舟を漕ぐゆらりゆらりと夜や昼やとかたちを変えて別々の名前であなたを追いかけたわたしのゆうべに鳥は鳴きその鳥を捕らえんがために編む黒髪の縄の罠にいばらの冠を目を閉じた先で待つあなたから差し伸べられた手には大きな穴があいていた穴に髪を垂らしてわたしは歌うどうか届けや白い花の嗅ぐ . . . 本文を読む
月を忘れた月は満ちその思い出のなかに日は眠るどこかで忘れたなにもかもたちのカケラに欠けていく三日月を経由して次の光まで自信のないまま歩みは止まずわたしの姿にあなたは染まる新月の夜に思い出しわたしは今日という日に言葉を贈るありがとうとさようならの錯綜した道の交点に日は昇りお天道様の影はいつまで経っても見る影も無し わたしはわたしを忘れてわたしと成りて夜に噛みついたその痕(あと)も無し誰も知らない宵の . . . 本文を読む