よみびとしらず。

あいどんのう。

ブレス

2021-08-27 00:13:42 | 散文
いつもの笑顔の草葉の陰から破顔一笑 
その微笑みに夜は来たりて
あなたはようやく息を、吐く

涙のひとつも流せずにいたことすら説き伏せて
そのスマイルの届いた先にある光景に
それでもその場所に立っているあなたから
差し伸べられた手のぬくもりを
握りしめたわたしと同じ形の掌で顔を隠した
あなたもわたしも微笑んで
なにも残らないままお月様は昇る
あの日の涙も微笑みも
なにも意味を持たずに
わたしたちはただ生き抜いた
そのブレスひとつが糧だった 

涙の意味も知らずして
水の滴りは一つ二つ三つと音の鳴る 
かなぐり捨てたその音をたよりに
わたしたちはただ静かに祈りを待ちわびる

最新の画像もっと見る

コメントを投稿