赤い月のぼる だれも見ていない空に
黄色い星はわたしをすり抜けて遠ざかった
泣いてはならぬとわたしは泣かぬひととなり
わたしの涙は海にしずんだ
それを人魚が自らの口にふくんで
人魚の歌声は波間にひびく
人魚の口元はわたしの涙のかたちにゆれて
わたしは人魚を憎いと思った
恋い焦がれたひとの悲しみに触れた人魚は
抱えきれない苦しみに
うたう以外にすべはなく
憎まれようとも歌声はやまず
海は人魚の涙にそまる
海は荒れて大地をおそう
わたしは人魚に手にかけて
最期のせつなに人魚はわらった
「苦しみから解き放ってくれてありがとう」と
人魚が本当に流したかった涙の行方は知れずに
海はおだやかさをとりもどす
わたしの涙の歌声は
もうどこからも奏でられずに
わたしの涙は海にしずんだ
だれも知らない海のそこ
ひろいあげる者のすがたなし
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