よみびとしらず。

あいどんのう。

裏切り者の物語

2018-12-06 15:57:23 | 散文
夜の王様に仕えることはできないと太陽の民族は夜の王様を海底へと追いやった。太陽の民族の一部は海へ出てこれを見守ることとなったが、長い長い年月を経て彼らはただの漁師となった。

ある日、ひとりの漁師が海で行方不明となった。
彼は沈みゆく海のなかで、その奥底に住まう夜の王様の声をきいた。彼は夜の王様を憐れに思い、もし可能であるならば自分は夜の王様の友だちになれないものかと提案した。夜の王様はなにを愚かなことを言うかと鼻でわらい、彼の精神と身体を乗っ取った。彼の意識や一切の記憶はこの時夜の暗闇と同化して、彼は彼自身を失った。夜の王様の手に堕ちた彼は、太陽の民族と異なる民族を次々と仲間にひきいれて、世界を夜の王様の国にしようとした。世界は一転、深い暗闇におおわれることとなった。

行方不明となった漁師には一人の息子がいた。
この人一倍正義感の強い一人息子は自分が太陽の民族の末裔であることも敵対勢力の親玉の正体も知らぬまま、この世界を夜の王様から救う旅にでた。長旅のすえ彼は夜の王様に乗っ取られた自分の父親を討ち、夜の王様も闇の彼方へと葬った。

息子の名前をアイヤという。
父親の名前をユヤという。

アイヤとユヤ。
二人の名前はこの国で永久に語り継がれることとなり、いつしかアイヤは英雄、ユヤは裏切り者を示す言葉となった。

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