よみびとしらず。

あいどんのう。

2021-03-31 14:57:44 | 散文
あ、という言葉から全ては産まれた

あっという間になにもかも

あいしていると呟いたのは
そこに居たのがあなただったから
あなた自身はかそけく震えて
ようやくこみ上げてきた衝動に
あやうく世界は構築された

(危うい毎日は性懲りも無く怪しげな魅力にとり憑かれている)

綾を織り成して幾重にも
かかる雲の如くに言葉は揺蕩(たゆた)う
なんの確証もないあやふやに
心を託してあなたは「あ」と囁(ささや)いた

それがなにもかもだと誤解したのは
わたしにはあなたしか見えなくなっていたから

あやういあなたの眼差しに
吾(あ)の姿かたちはその瞳に囚われた
わたしはあなたとなったいま
月は太陽を擬(なぞら)えて
終いの文字と共に感情を編む

安(あ)む心からの和らぎを
あなたに贈ったある時のゆうべ
とある事情から生じた情事に
わたしの全ては全てに取り残されている

最新の画像もっと見る

コメントを投稿