あ、という言葉から全ては産まれた
あっという間になにもかも
あいしていると呟いたのは
そこに居たのがあなただったから
あなた自身はかそけく震えて
ようやくこみ上げてきた衝動に
あやうく世界は構築された
(危うい毎日は性懲りも無く怪しげな魅力にとり憑かれている)
綾を織り成して幾重にも
かかる雲の如くに言葉は揺蕩(たゆた)う
なんの確証もないあやふやに
心を託してあなたは「あ」と囁(ささや)いた
それがなにもかもだと誤解したのは
わたしにはあなたしか見えなくなっていたから
あやういあなたの眼差しに
吾(あ)の姿かたちはその瞳に囚われた
わたしはあなたとなったいま
月は太陽を擬(なぞら)えて
終いの文字と共に感情を編む
安(あ)む心からの和らぎを
あなたに贈ったある時のゆうべ
とある事情から生じた情事に
わたしの全ては全てに取り残されている
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