よみびとしらず。

あいどんのう。

A bird

2021-08-08 09:21:46 | 散文
わたしの願いをどうか受け止めてと
あなたの願いは叶わずに
わたしは立ち去り途方に暮れる
あなたもわたしも変わらずに
同じ立ち位置から朝(あした)を見つめた

ひとりでいることの苦しさを
早合点してわたしは向かう
あなたを迎え入れるとひな鳥は
十分な翼もないままに飛び立った
あとに残るのは空虚な青空に燦々(さんさん)と輝く
愛のかたまり
この翼のとけゆく様を
生生世世(しょうじょうせぜ)その瞳に焼きつけておけと
あなたは逡巡もなくダイブした

衝突を避けて瞳を閉じて
どうか穏やかなままでいさせてと
夜の毛布にくるまった
あなたの翼はその柔らかなままで傷を負う
飛ぶつもりがなくとも後生大事なこの羽根を
たくさんのひとたちに踏みつけられた
わたしの身体はからからと
涙すら忘れて明日を見つめる
全てを憎めば楽になれるよと笑う誰かの
その背後から朝日は昇る
とても分かりやすく悪魔のふりをした
あなたの泣き顔に目は醒めて
わたしはあなたの願いを汲みきれず
いつまで経っても
誰かの代わりにわたしは泣いて
羽根のない身体は始動する

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