よみびとしらず。

あいどんのう。

2021-03-19 16:09:32 | 散文
飲み込み難き毎日の
唾を飲み込み溜飲は下がらず
下がるはずもない明日を見つめた
天に唾吐き鴉は濡れた
それを見て笑う人々に罰は当たらず
唾を吐いたわたしでさえも許される
そんな現実に嫌気がさして
拳は握られまるで開かずに
恨みつらみの澱(おど)みは重なり
みんな汚れて美しさなんか何処にもない世界を睨んだ
わたしは全てを嫌いになった

「何がそんなに苦しいの?」

あなたはまるで天使のような微笑みで
穢れを知らぬその瞳にも
鴉の濡れ羽根色は映される
羽根をむしれば楽になれるよと
あなたは優しくわたしを抱きしめた
そのぬくもりに癒やしを乞うて
手にかけたのは誰の首元であったのか
鴉はとんだ
翼を広げて青空の彼方まで
たったひとりきりの身体から
流れ落ちたものの正体を
海は知らずに漣(さざなみ)揺れる
大地もどうかご一緒に

あなたは相変わらずの微笑みで
何ひとつ憎まぬその心根が
いつまでもどうかかわかぬようにと
みんながみんな、唾を吐く

全てを受け入れて時は駆け巡る
昨日と明日は置き換えられて
何もなかった顔で笑うわたしは
何事もなく唾を飲み込む
その行き先に佇(たたず)む鴉はカアと鳴き
漆黒の瞳は今も確かに濡れていた

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