よみびとしらず。

あいどんのう。

色眼鏡

2021-03-18 10:31:42 | 散文
色眼鏡に惑わされ
現実の色味も忘れた彼女は
色眼鏡を外して世界を見つめた
美しいだけではないこの世の中の
泥濘は彼女を飲み込み満ち足りた

救いたかったはずの亡骸は
まだその内側に炎を宿す
あなたの涙に触れた思いの
世界は歪んで色は滲(にじ)んだ
本当の色味の如何(いか)なるものかを
色眼鏡は色を偽り姿をとらえる
本来の姿に似つかぬ色を
重ね合わせて心を守った

何から何まで敵ばかりだと
あなたは笑って色眼鏡を空へと放つ
色眼鏡は割れて世界は崩れた
ガラガラと
砕けた色眼鏡はガラクタ混じりに時を待つ
いつかまた必ず誰かが手に取るであろうと
薄ら笑いをひとりうかべるひび割れた色眼鏡

彼女の炎はやがて太陽へとたどり着く
色眼鏡が必要となった理(ことわり)に
触れて熱を持ち少しだけ憤(いきどお)った青の炎は 
全てを忘れて再び太陽は離れていった
この手は何度でもあなたに手を伸ばす

わたしは何よりもただ太陽を見つめていたくて
そのまやかしの奥に潜むのが本来の姿だと
色眼鏡はひび割れてなお景色を欺(あざむ)く
新しい色眼鏡を手に入れて
わたしの世界に色と光は満ち足りた

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