風に吹かれて行こう

お米の便りを、写真でもっとわかりやすく!

表層剥離 立派な名前が付いています

2022-05-31 | 日記

 田植えが終わると、すぐ、田んぼに水を入れます。除草剤を撒くためで、割りと深めに水を溜めなくてはなりません。

 それから、数日後。溜まった水の表面に、薄い膜のようなものができることがあります。水の中にある不純物や田んぼの土の粒子等、さまざまなものが混じりあって、形成されて行くのです。

 風が吹くとダバダバと水が波立ち、どちらかの側に、その膜が集まり出します。そして、厚みも増します。膜の表面は、しいて言えば、汚れた緑色。部分的には赤くなる時もあります。何だか「赤潮」みたいです。その時の気温などによって、主に活発になる菌が違うからかもしれません。そうしてあぜ際や隅っこのイネたちを覆いつくしてしまいます。当地では、この膜のことを、「かな」と呼び、色によって「赤かな」、「青かな(緑色)」「ホントかな?」などと言います。

「かなかがって やぢまげだー(かなができて、イネにかぶさってしまい、何とも困ったもんだー)」

 田んぼに立っているおじいさんが、急にそんなことを口にしたのを耳にしたら、

「大変だんしナー。雨ッコ降って、かなどご ぼかしてければえんしナー(大変ですねー。雨が降って、かなを壊してくれれば良いですねー)」と、慰めてあげてください(笑)。

 

 「かな」と似たようなもので、「表層剥離」というのがあります。こちらもとても厄介なもので、かなよりずっと厚みがある分、イネにとっては本当に大きな影響を与えるのです。

 これは、田んぼの土の表面の、ちょうどかさぶたのようになったものが、やはり水がダバダバ揺らされているうちに、はがれて浮き上がってしまい、あぜの方に寄せられて、イネを覆いつくします。

 相当な厚みがあるので、イネがつぶされてしまい、隙間から葉っぱを出すことが不可能となります。加えて光がまったく当たらなくなるのですから、枯死という運命をたどることとなります。ほんの数株だったらまだしも、それなりの面積がそうなってしまう場合もあるのです。

 我が家でも、「表層剥離」が出ました。100坪まではいかないと思いましたが、お米2俵分以上の広さでした。

 きわめて見づらいですが、「表層剥離」です。青海苔の養殖かー(苦笑)。

 ちなみに、あぜを隔てた隣の田んぼ。部分的にはがれていますが、十分許容範囲です。

 バーベキュー用の網が安価で売っていたので、ほぼ掬い取りました。5時間近くかかりました。まったく、間尺に合わないような仕事です(笑)。でも、せっかく植えたのが死んでしまったら、何ともいたましいのです。オレもがんばったがら、おめだもがんばれよーと、声をかけたことでした。「まったく、誰のせいでこうなったんだよー」 ん? 空耳かぁ? 何とか追いついてもらいたいものです。

 

 ちなみに、除草剤を撒いた後、田んぼに入るのはタブーなんです。薬剤が溶けて土の表面に目に見えない膜を形成し、それが雑草の発生を抑えるという機序なのです。タブーに踏み込んだその先にあるものは…。あー、考えたくもありません(苦笑)。

 そうとは知りながら、深みにはまっていく…。ゆるされない男女関係みたいなものですかね? 何を言ってるんだか、このジイさん。

 

 どうでも良いのですけど、表層剥離のことも、当地では「かな」と言っています。