風に吹かれて行こう

お米の便りを、写真でもっとわかりやすく!

16年前の8月 その2

2024-08-10 | お米の便り

 6月号に書いた「バカ苗」は、一部枯死したものの結構しなり強くて、田んぼの中でどうにか生きています。罹病していない稲とは明らかに違う外観。周りに比べて葉の色が薄く、丈が頭ひとつ分くらい抜け出ています。だから目立つんです。

 和賀屋の田んぼは、よりによって、全部が一般道路沿い。田んぼのあちこちにそんな稲がびょんびょん出ているんですから、「ひとめわりぃ」くてしょうがありません。ただでさえヒョロ長いのに、穂も早く出ました。「あやー、まんずひとめわりぃ」。でも、すべて自分が招いたこと。アハハ、ただただ、事実をありのまま受け入れるしかありません。

 

 この病気は、種子消毒さえちゃんとしていれば出るはずの無いもの。いまでは目にする機会もほとんどないため、通りすがりの人は必ず聞きたがるんです。 「なして、こんなに病気出だべ?」 当人を目の前に、聞くかどうかはわかりませんが、私だってどこかで目にしたら きっとそう思うに違いありません。確かに興味深い出来事なのです。 「わさら(イタズラ)したら、こうなった」と笑って答えています。ホントのことを話しても、うまく伝わるとは思えないので(笑)。子ども時代のイタズラは笑えるものが多いですが、大人になってからのイタズラは、そうではないですね。失うものも少なくありません。あっ、いや、凡婦はまだちゃんと和賀屋にいてくれてますが。

 ひとめわりぃので、度々抜き取りをしました。作業にそれなりの日数を費やした凡夫です。この作業をしなくても良かったら、いま何をしてたんだろう。そんなことを思ったりもしました。もう十数年も前のことですが、除草剤の効きが悪い年があって、手取り除草にかなりの日数を費やしたことがありました。この時もそんなふうに思ったことでした。他の販売目的の作物を栽培していたら、大変なことになっていたことでしょう。

「あんまりひとめわりぃことするなよ」。こんな言葉が、大人の常識はずれの行動を規制する基準のひとつでありました。そのことの是非についてはいろいろあるでしょうが、まぁ、こころに留めておきたいものだと思っています。8月9日、稲の穂はほとんど出揃い、バカ苗もようやく目立たなくなりました。ホッ。バカ苗の穂にできた米は、すべてと言っていいくらい未熟な籾となり、刈取りの際にワラと一緒に落ちてしまいますので、どうぞご安心ください。

 

 お正月とお盆は、多くの人にとって、一年の節目と 思える時ではないでしょうか? その節目もすぐそこ。どうぞ、良き思いの去来する8月となりますように。

 霊長類?が向き合っていると見えなくもない。気温34度台が作り出す作品。


16年前の8月 その1

2024-08-10 | お米の便り

  今年もいつの間にかお盆を迎える頃となりました。梅雨明けと言われた割には、雨が近かったように思えた7月後半でしたが、今月は夏本番ですね。それでもこれまでのところ、(記憶違いでなければ)まだ猛暑日が無いはずの当地。あいかわらずエアコン無しで、日中はともかく夜になっても30度くらいの室温の時も多い和賀屋です。暑いことにはかわりありませんが、いつもに比べて少し過ごしやすいのかもしれません。お住まいの地ではどんな夏になっているでしょうか?おかわりございませんか?  

 

 夏は食中毒の時期でもありますね。聞き馴染んだ、そして言い馴染んだ言葉に「あめる」というのがあります。秋田弁と限定できるかどうかわかりませんが、標準語ではないことだけは確かなようです。どう訳したらしっくりくるのだろうと思っていたら、保健所関係の人が「傷む、傷んでいる」と話しているのを耳にしました。なるほどと思った次第です。  いまのように大きな冷蔵庫が普及していなかった頃には、この時期のご飯や漬物、 その他の食材などは、ある意味危険がいっぱいでした。気温が高いので、どうしても早く傷んでしまう。いわゆる「あめる」という状態です。

「うわぁ、このまんま、少しあめできたんでね(少し傷み始めてるんじゃない)?」

「んだってがぁ、したら水でさして食べねねな。きゅうりッコも入れでな(えっ、そう?じゃあ、水で少しザーッとすすいで食べなきゃね。きゅうりも入れてね)」

 暑い日中は食欲も落ちるもの。水を入れてパラパラにしたご飯に、実はこれもあめつつあるちょっと酸っぱいきゅうりの漬物、あるいは梅干。私と同年代かそれ以上の方なら、きっと食べたことがあると思います。「なってもね、なってもね(大丈夫、大丈夫)」の暗示とともに(苦笑)。

 いまでは、あめたものを口にする機会もほとんどなくなりました。冷蔵庫のおかげでしょうか。それとも添加物のおかげでしょうか。いや、無理して食べなくとも捨てた方が良いよという考えに変わって久しいからかもしれません。でも、時にはちょっとあめ出したものにも手を出してみた方が良いかも。腸内環境が豊かになるんじゃないでしょうかねぇ。  いまオリコメを書いている瞬間に、数羽のカラスが前の畑のトウモロコシを食べ始めました。急いで網を張ったところです。食べごろのものにしか手を出さないカラスは、同時に、あめたものでも平気で食べているようです。お腹をこわしているかどうかまではわかりませんが。たくましさに感心するとともに、ほんとに憎たらしい(笑)鳥!です。


お米のたより 後半

2024-07-08 | お米の便り

 ところで、夏は菜津なんだそうです。もちろん、これはものの見方のひとつ。絶対的な説ではないと思いますが、何となくしっくりきます。ちなみに、春は張る。秋は空き。冬は火湯とのこと。自然やいのちのリズムに呼応しているような言葉の流れのように思えます。

 それで菜津なんですが、津々浦々という表現がある通り、津からはたくさんという意味が感じられます。菜がたくさん、だけなら、これほど喜ばしいことはないのですが、当園の田んぼは今年も草が多いです。「草津農園」とでも言った方がよっぽど似合っているし、耳ざわりも心地良い気がします。まぁ、名前のことはどうでも良いとして、先月下旬から草取りの日々です。

 実は今はちょうど、田んぼの水を落として、田んぼを干す時期。そして、土が締まって硬くならないうちに、自転車のような形の機械に乗って、田んぼの中にたくさんの溝を作る時期です。周囲の田んぼは、その作業が終わったところが多いです。自分でも適期に遅れることなくやりたい気持ちは山々なのですが、何せ雑草への対処に時間を取られ、次の段階に進むことができずにいます。というのは、水が無いと抜いた草の根に土がいっぱいついてきますし、何よりも抜けづらくなります。能率が何倍も落ちるんです。それがイヤで、落水や溝切り作業を先延ばししているというわけです。周囲でもそれなりに出ている農家もあるようで、「多い箇所に二度目の除草剤撒いたどー」という声をすでに聞きました。

 除草剤は何としても一回で済ませたい。それが、無農薬はできない、凡夫の切なる思いです。一回目の除草剤使用は、雑草との格闘という過酷な労働から解放されるため、農家自身の健康のために必要な、ある意味どうしようもないことだと思っています。ですが、二回目の使用を避けるのは、自身も含めてお米を食べてくださる方の身体に余計な無理がかからぬようにという思いからです。表現が、恩着せがましく聞こえていましたらすみません。だからせめて、という気持ちです。

 

 さてネット上で、来年7月のあることが話題になっているのをご存じでしょうか。話題になってると言っても、どの程度なのかはわかりません。でも、これから多くの人が出会う情報かと思います。それは、ノストラダムスの大予言に匹敵するかのような予言です。その信憑性についてはともかく、考えなければならないことは、あの予言が騒ぎになった時と比べて、現在ははるかに情報化社会だということ。良きにつけ悪しきにつけ、そして内容がどうであれ、情報の拡散の度合いは当時の何百倍にもなっているのではないでしょうか? 当たる当たらない以前に、自分では事前の混乱は必至だと予想しています。この世の中には、危機を作り出したい人達や、それを待望する人達が大勢。食糧だって実際に不足が起こる前に混乱は始まります。アンタがそれを言うかー。現在、そして今年秋からの各種も、どうかどうかよくよく調べてくださいよー。


お米のたより 前半

2024-07-08 | お米の便り

 7月2日、14時を過ぎて雨が降り出しました。雨は数日前から予想されていたもの。そして昨夜の予報では、「警報級の大雨となるおそれ」と報じられました。

 暖冬による極端な雪不足。雪国の多くの人にとっては、除雪や雪下ろしといった、身体的金銭的負担がずいぶんと軽減された冬でした。それは同時に、雪がそれなりに降ることで成り立っている、もしくはそのことに依拠している人たちにとっては、許されるなら天を恨む他ない何とも厳しい冬でありました。その雪不足は、春の水不足へとつながり、雨不足がそれに拍車をかけています。普段少ない分、「警報級の」等と言われると、やはり心配になります。そうならないことを願うのみです。

 

 さて2024年も後半に入り、このたよりを7月中に読まれる方は、ごくごくわずかとなってしまいました。多くのみなさまに順次、注文をいただいた際、「突然ですが今回が最後になります」と、お伝えしてきました。あまりに唐突なことで、せめて「次回のお届けが最後になります」くらいのことができなかったのかと、自分でツッコミを入れているような有様ですが、考えた末のことでした。

 一般的なことですが、どんなものであれ、無くなりそう、無くなるかもとなれば、誰だって買い急ぎますよね。ちまたで「米高騰」、「米不足」が急にささやかれだしたのは5月。それとも6月 に入ってからでしょうか。両隣の市にはホームセンターが数店ありますが、30キロ入りの 玄米を目にできなくなったのは6月になってからでした。

 自分もうかつだったんです。不特定のお客様向けの取り置き分が、速いペースで無くなっていることを、あまり深く考えずに、春を迎えてしまったのでした。例年春になる頃、売れ行きの見込みを再予測していたので、少しのんきに構えてしまっていました。秋までもう幾度かご購入の心づもりをしてくださっていたみなさまには大変に申し訳ないことでした。何よりそれがよりによって店頭での不足や値上がりが予想されるこのタイミングで、なのですから、自身の見通しの甘さに腹立つ思いです。好意的に対応してくださり、新米の秋を楽しみに待ちますと言ってくださったみなさまには、感謝の思いでいっぱいです。何事も無く、無事収穫にこぎつけられれば、お届けが可能となるのは約3ヶ月後。昨年のような暑さにだけはなってほしくない。そんなことを思いながら過ごしています。


今日は大安 浸種です

2024-04-06 | お米の便り

 4月はお米作りの実質的な開始月。毎年同じような話なので、聞き飽きたという方もたくさんかと思いますが、よろしければお付き合いを願います。いろんな準備は3月から少しずつ始まっているのですが、本格的には、やはり4月からです。冬の間に少し鈍ってしまった身体を慣らすのもそこそこに、苗を作る作業が始まります。機械植えとなってからは、均一な苗を育てることが何より重要。そのためには、まずは種の発芽を揃えることが必須となります。

 

 ところでみなさーん、稲の種ってご存じですよねー。はい、白米になってしまうと芽の出る部分が削り取られてしまうので発芽しませんが、玄米だとちゃんと芽が出て苗になるんですよ。実際に種として利用する際は、もみ殻にくるまれた状態で播きます。もみ殻という外皮が、無防備な玄米を保護してくれているわけです。でも、あれれ。芽が出る時にもみ殻がパカッと割れるんだろうか?それとも突き破って出てくるんだっけか? 誰かに急に聞かれたら答えに窮してしまいますねぇ。見ているようで見ていない。それを臆面もなく口にする…。二重に、お恥ずかしい限りです。

 

 良い具合いに芽が出そろったたくさんの種を、専用の機械を使って播く。10アールの田んぼに植える苗を作るのに、3キロ前後の種を播きます。その嵩は、お米5キロ分くらいでしょうか。それぐらいの量の種で、玄米550キロくらいの収穫が得られます。この数量は、気候や土質、もちろん栽培管理によって違ってくるので、全国一律というものではありません。この数字より多い地域もたくさんですが、どれだけ頑張ってもそんな収穫は無理、という地域も、とても多いのです。そうであっても、お米は主食。いのちをつなぐ食べ物です。まっとうな食べ物として、この先も変わることなく、自国で作り 続けられて行かなければならないと思います。

 

 種は以前は自家採種したものでした。今ではそうしたことをする農家は、ほとんどないと思います。というのも、種として利用できることに間違いはないのですが、実際に使うとなれば、それ相応の処理?が必要になるためです。例えるならば、焼き魚を二切れ食べようとした時、自家採種は一尾丸ごとを切りさばくようなもので、購入した種は最初から切り身でパック詰めされたもの、という感じでしょうか。値段は高くつきますが、余計な手間ひまと生ゴミがでません。丸ごと調理となったら、それ相応の道具も必要となりますし…。

 

 今月のお米の便りから、抜粋してみました。

 ここ何年か、4月5日にしていた浸種作業。今年は今日6日にしました。たまたま大安だったので。10日間くらい水に浸けます。