礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

再度、『裸の町』(1948)と『野良犬』(1949)について

2013-07-11 06:07:47 | 日記

◎再度、『裸の町』(1948)と『野良犬』(1949)について

 昨年一二月一三日のコラムでも、同じようなことを論じたが、その続編である。
 まず、アテネ文庫(弘文堂)の『映画作品辞典』の引用から。同辞典の「裸の町」の項(アメリカ映画)と「野良犬」の項を引用する。

裸の町“The Naked City”(米.ユニヴァーサル.1948) ニューヨークの深夜の殺人事件に対する警察の活動を通して,この世界一の大都会の生態を鋭く解剖したセミドキュメンタリイ映画の傑作.この映画を最後にこの世を去つた鬼才マーク・ヘリンジャーの頭のいい企画が燦然と光つている.ジュールス・ダッシン監督,バリイ・フィッツジェラルド,ハワード・ダフ,ドロシー・ハート,ドン・テイラー主演.

野良犬(日.新東宝=映芸協.1949) ピストルを盗まれた青年刑事(三船敏郎)が,責任感からピストルの行方を執拗に追及することによつて展開する新形式の犯罪捜査映画.演出に流麗の度を加えつつあつた黒沢明が驚くべき重量感を以てこの難作を押切り,いよいよ注目されるに至つた.志村喬が血気に走る青年刑事を導く老刑事を好演.

 昨年一二月一三日のコラムでも指摘したが、ダッシン監督の『裸の町』は、黒沢明監督の『野良犬』に影響を与えたというインターネット情報に接した(私が見たのは、ウィキペディア「ジュールズ・ダッシン」)。
 たしかに、このふたつの作品には、よく似たところがある。
・映画がナレーションから始まる。
・老練の刑事と若手の刑事が組んで、殺人事件に挑む。
・聞き込み捜査のシーンが、リアルであり、また印象的。
・大都会の暗い部分が、容赦なく描写される。
・若手の刑事が、ピストルを奪われる(『野良犬』の場合、映画の冒頭で。『裸の町』の場合は、終わりのほうで)。
・犯人を追いつめる場面が、ラストシーンとなる。
 これらのことも、すでに、同日のコラムで書いた。
 それからだいぶ経ったが、その後、『裸の町』が『野良犬』に影響を与えたという説が、正しいのか否か、検証していない。有力な情報にも、接していない。『裸の町』の日本公開が一九四九年で、『野良犬』の公開も同年であった。言うまでもなく映画は、立案・脚本・撮影・編集などで、完成までに相当の日数を要する。「影響があった」と、簡単には言えないような気もするが、かと言って「影響はなかった」とも言い切れない。諸賢のご意見を待つ。

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